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KDDI、ソフトバンク、NTT…日本のITを牽引する3社の入社式あいさつ

菊池喬之介

2017/04/10(最終更新日:2017/04/10)


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KDDI、ソフトバンク、NTT…日本のITを牽引する3社の入社式あいさつ 1番目の画像
 今年もまた、各地で新入社員入社式が行われた。ある企業は体育祭を行い、ある企業は英語のみで進行するなど個性的な入社式が注目を集めた。

 ただ、時代によって形式は変わろうと、その企業の経営者のスピーチは欠かせないもの。これから同志となる新入社員に経営者が送る熱いメッセージは、すでに社会で働いている人の心をも打つものがある。

 今回は急激に変化し続けるIT業界を引っ張る有名企業の入社式から、経営者のスピーチを抜粋してみた。

世界を変え続ける経営者たちの金言

KDDI、ソフトバンク、NTT…日本のITを牽引する3社の入社式あいさつ 2番目の画像
by nobihaya

ソフトバンク代表取締役会長:孫正義

 先日、フォーブス誌の長者番付で日本人1位に返り咲いたソフトバンクグループ代表取締役会長である孫正義氏から紹介。

 10兆円規模にもなる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立したことで注目を集めている孫氏は、新入社員390人に対して昨年に引き続き「桜」に比喩して自身の会社像を語った。

おはようございます。
入社式は新年度が始まるとてもうれしい日であります。ソフトバンクグループはいつの間にか大きな企業グループになりましたが、まだまだ私の思うところには到達していません。いたずらに時が過ぎた、もっと頑張らなくてはいけないと思います。エネルギーを持った皆さんが仲間に加わることで、私の情熱に新たなエネルギーが追加される気がします。私は桜の花が大好きですが、一輪だけではその素晴らしさを充分に味わうことはできません。たくさんの花が咲いて、さらにたくさんの桜の木が群れとなることでその美しさをダイナミックにしてくれます。一人の夢、一人の願望が一緒になれば大きく咲き乱れます。では、我々にとっての夢とは何か。情報革命を通じて人々を幸せに、これが唯一の共通した夢であります。

米国のシリコンバレーでは、新しいテクノロジー、ビジネスモデルが続々と生まれており、毎月行くたびに、彼らのエネルギーから刺激を受けます。これまでの我々には一歩一歩歩むしか成長の手立てがありませんでしたが、10兆円規模のファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立することを昨年発表しました。志を共有するのに、人種・年齢・性別は関係ありません。思いを共有すれば、すでに同志です。では彼らとどう結合するのか。社員と会社という関係で結合するのか、あるいは取引先という関係で結合するのか。我々は彼らの成果を分かち合い、一緒にリスクを取り、夢を追い、協力していきます。

出典:入社式あいさつ(骨子) | 孫 正義 グループ代表挨拶 | 企業情報 | 企業・IR ...
 孫氏の心情が凝縮された入社式あいさつ。「強い願望を持って努力し続ける」ことは、毎年のように入社式で話されるポイントだ。

 また、「人々を幸せにするため」というフレーズもよく孫氏の発言から伺うことができる。

 ソフトバンクが創業して間もない頃、慢性肝炎のため一時社長職から退いたときに感じた「人に喜んでもらえることに貢献する」ことは、孫氏が今でも大事にしていることなのだろう。

マイクロコンピューターの能力は人間の知能を超え、少なくともこの30年、40年の間に、つまり皆さんが現役の間にシンギュラリティーが訪れます。それにより、仕事の定義が変わります。人工知能がロボットに融合され、それがクラウドにつながっていく。24時間365日働けて、人間よりスピーディに、また正確に手足を動かすことができるスマートロボットが社会のあらゆるところに存在する時代がくるのではないか。そうなったとき、人間の仕事とは何か。単純作業はどんどんロボットに置き換えられます。逆に人と人とが心を触れ合わせることは今後もっと大切になり、常に自分たちの仕事を見直し、今後の社会の進展を先回りして考えることが大切になります。人間は概ね自分が意識した方向に育っていきます。強い願望を持って努力し続ける、そういう思いを持つことはとても大切なことだと思います。

我々が情報革命の推進役として、世界中に情報革命を起こすのは何のためか。人々を幸せにするためです。「何のために」を忘れ去ってしまったのでは意味がありません。いろいろな切り口から人々を幸せにするために努力をする、そういう思いを皆さんには強く持ってほしいと思います。今できること、今やらなければいけないこと、今のうちから志しておかなければならないことを強く意識してください。入社おめでとうございます。同志として一緒に頑張りましょう。

出典:入社式あいさつ(骨子) | 孫 正義 グループ代表挨拶 | 企業情報 | 企業・IR ...

KDDI代表取締役社長:田中孝司

 続いては、ソフトバンクと同じく大手キャリアとして知られるKDDIの代表取締役社長である田中孝司氏のスピーチを紹介する。

 IT企業ということもあり、ソフトバンクと同様に「IoT」や「AI」などによって起こるであろう情報革命について発言。情報革命の中で、どのような成長を遂げていくべきかということを中心に語った。

 KDDIは事業面ではもちろん、働き方でも改革を進めている。労働の終了から次の労働開始まで、一定の休息付与を義務付ける「勤務間インターバル制度」を早期に導入した企業だ。

 社会の流れに敏感に、その中でどうあるべきかを示したKDDIらしいスピーチであった。

「皆さんが物心ついた頃には、当たり前のように携帯電話やインターネットが使える環境だったのではないでしょうか。1985年に通信自由化が実施されて約30年が経過し、この30年間、"今の時代の、この当たり前"を提供するために、通信業界では、日々、激しい競争と技術革新によって切磋琢磨し、今では、通信は日本国民の生活に欠かせない社会基盤へと発展してきました。本当に、この30年、隔世の感があります。

先ほど、説明しましたIoT、AI、ビッグデータ、加えて、次の通信技術である5Gが、我々が住む社会の産業構造を大きく変化させ、また、我々自身も、この変化を梃にして、真のライフデザイン企業に脱皮できるのではないかと確信しています。当然、この変化の波に乗れず、変化できず、脱落する企業も出てきますので、我々自身も、生き残りができるよう精いっぱい努力しないといけないのは当たり前のことです。

一方、国内においては、いいことばかりではありません。今も、日本の人口は減少していますが、2020年以降は、団塊の世代が市場から卒業し、更に人口減が進むといわれています。そう思うと、我々のビジネスは、日本国内にとどまることなく、グローバルでの事業展開をひとつの柱にしないといけないことがわかります。

私が、会社に入った36年前には、誰もがスマホをもって、簡単にコミュニケーションができる時代が来るなんて、想像がつきませんでした。きっと、本日入社された皆さんが会社の中核になって、事業をドライブされる頃は、今、想像できる世界とは完全に違ったものになっているのではないかと想像しています。とはいっても、その世界は通信ということが消滅するわけではなく、より本質的なものに変化しているのではないかと思います」(田中代表取締役社長)

出典:孫代表が入社式で新入社員に送ったメッセージとは? - 有名企業訓示 ...

NTTデータ代表取締役社長:岩本敏男氏

 最後に紹介するのは、情報サービス事業では日本最大手のNTTデータ。最近でいうと、キリンや三菱重工とIoTの共同事業を発表するなど、IoTに積極的な姿勢を見せている。

 岩本氏はイギリスのEU離脱、ブレグジットやトランプ大統領の当選など、大きな動きを見せている社会の中でどのように障害を乗り越えるかを語った。

 そこで、新入社員に送った言葉は「真実一路」。社会人として最初の一歩を踏み出した新入社員に必要な心持ちだという。

 与えられたものをこなすのではなく、自分で考え、自分で正しい道を切り開くというメッセージを込めた。

昨今、世界ではさまざまな出来事が起こっています。従来の価値観を大きく変化させるような動きが世界中のいたるところで起きており、政治・経済・社会において不確実性が増してきている時代です。そのような中、ITは人びとが生活を送る上で欠かせない存在となり、それを支える技術は一昔前では想像がつかないほどのスピードで指数関数的に進化を続けています。皆さんには、これからこの不確実で大きな変化が予測される世の中において、人々の生活を劇的に進化させる可能性を持ったITを扱う仕事をするということを強く認識して頂きたいのです。

私たちがお客さまに選ばれ、社会から必要とされる企業であり続けるためには、期待通りのニーズを満たすだけでなく、お客さまや社会の思いをかたちにする新たな価値を創造することが求められます。これまでもNTTデータグループは「Global IT Innovator」というグループビジョンを掲げ、世の中の新しい流れを洞察し、社会情勢や技術の変化を捉えることで、大きな変化をもたらすイノベーターとしての役割を担ってきましたが、その役割は今後ますます重要になってきます。皆さんも本日から、「Global IT Innovator」であるNTTデータグループの一員になります。時代の変化に臆することなく、今皆さんが抱いている志を胸に、情報技術を使ったビジネスの創造を通じて、日本そして世界のビジネスパートナーとして、社会の発展に貢献していってください。

本日、社会人としてのスタートを切った皆さんへ、私の信条である「真実一路」という言葉を贈りたいと思います。これは、自ら正しいと信じる道を貫き通す、という言葉です。書物や歴史、先輩や同僚から学び、自分は何をすべきかを必死になって考える。そうして自分のやるべきこと、正しいと信じられる道が見えれば、たとえ周りの人に反対されたとしても、それを信じて突き進んでいくことで、必ずや目標を達成することができる、私はそう信じています。社会人として成長を続けていくと、さまざまな壁に直面することがあります。そのようなとき、自分は何を正しいと考え、重きを置く価値はどんなものか、といった自分の「軸」をしっかりと把握していれば、どのような環境であってもそこに立ち戻って物事を考えて判断することができますし、時代の変化の波に流される心配もなくなります。一人の人間として何をすべきなのか、どのような人生を送って自己実現を果たしていきたいのか、ぜひ考え続けてください。

私たちのフィールドは全世界に広がっています。NTTデータグループは、10万人以上の仲間が50以上の国と地域で活躍しています。私たちは「NTTDATA:ASCEND」のキーワードのもと、Global 2nd Stageを目指して、グローバルにおけるさらなる進化を目標にしています。新入社員の皆さんも10万人以上の仲間とともに、「NTT DATA」という傘のもと、多様な個性や考え方を持った仲間とともに自己実現を果たすことで、イノベーションを起こし、社会の発展に大いに貢献していきましょう。

出典:2017年度 NTTデータ入社式 社長挨拶 | NTTデータ - NTT Data
 情報技術が急激に進歩し、世界が激変する時代。そんな時代に社会に飛び込んだ新入社員たちに、経営者たちは熱いメッセージを送った。

 これらの訓示は新入社員だけでなく、社会で働く者にとっても考えさせられるものばかり。新年度、大物経営者の金言を胸にまた新たな気持ちで仕事に望んでみることが、あなたの仕事にいい影響を与えるかもしれない。

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