1. 西田宗千佳のトレンドノート:潜入!世界最大のネット配信企業Netflixはこんな会社だった

西田宗千佳のトレンドノート:潜入!世界最大のネット配信企業Netflixはこんな会社だった

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 3月17日0時(現地時間。日本では18日16時)、NetflixはMarvelと共同で制作したオリジナルドラマシリーズ「Marvel アイアン・フィスト」の世界同時配信を開始した。

 これに合わせ同社は、世界中からプレスを集め、配信開始イベントと同社社内の様子を公開した。筆者もそれに参加することができたので、今回はそのレポートをお送りしたい。有料会員が9,400万人を超える、世界最大のネット配信事業者は、どんな会社だったのだろうか。

10年で世界最大の配信企業へ成長

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Netflix本社。サンフランシスコ近郊の、いわゆる「シリコンバレー」にある。
 Netflixの本社は、カリフォルニア州のロス・ガトスという場所にある(写真)。サンフランシスコ市内からは車で1時間程度。

 アップルやGoogleといった企業も、そう遠くない。この一帯がいわゆる「シリコンバレー」であり、Netflixもシリコンバレー企業のひとつである。
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Netflixリード・ヘイスティングスCEO
 同社は1997年創業で、意外と歴史がある。といっても、ネット配信をスタートしたのは2007年のことで、それまではDVDの宅配レンタルを行っていた。

 日本では2015年からサービスを開始したが、アメリカをベースにしたビジネスが長かった会社である。創業者は、現在もCEOを務めるリード・ヘイスティングス(写真)。戦略眼と、それ以上の大胆投資で会社をここまで大きくした。

 急成長したのはもちろん、ネット配信をするようになってから。2007年、まずはPCでの配信からだった。ヒットの理由は「月額固定で見放題」というビジネスモデル。

 現在は「サブスクリプション・ビデオオンデマンド(SVOD)」と呼ばれているが、この形態を産んだのはNetflixだった。国土の広いアメリカで、「レンタル店に行く必要がない」「安くいつでも映画が観られる」ことでヒットし、現在の基盤を作った。

 それがさらに大きくなるきっかけになったのが、2013年に作ったオリジナルドラマシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」だ。デヴィッド・フィンチャーが監督を務め、ケヴィン・スペイシーが主演したこのドラマはアメリカで大ヒット、ドラマのアカデミー賞と言われるエミー賞を、ネット配信作品としては初めて獲得した。
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Netflix社内に置かれたエミー賞のトロフィー。作品に対するものだけでなく、技術面でも受賞歴がある。
 ここから、Netflixの快進撃が始まる。オリジナルコンテンツに毎年巨額の資金を投入、2017年には60億ドル(!)もの費用を使う予定だ。いまやエミー賞の常連で、入り口には多数のトロフィーが並ぶ(写真)。

 今年はアカデミー賞・短編ドキュメンタリー部門を「ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊」が獲得。もちろん、これもネット配信としては初の快挙である。
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社内には自社が関わったオリジナルコンテンツのパネルが並べられている。
 「Marvel アイアン・フィスト」も、そんなオリジナル作品路線で生まれたもののひとつ。世界196ヶ国でサービスを展開しているNetflixなのだが、このすべての国に同時配信をスタートした。
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「Marvel アイアン・フィスト」ローンチイベント。世界中から記者が集まった。
 社内には特別なスペースが設けられ、配信に向けた作業とカウントダウンが行われた(写真)。

「パフォーマンス重視」で自由な社風

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新しくできた社内の壁には、Netflixが関わった作品の登場人物をモチーフにしたウォールアートが。
 Netflixの社内がどんな様子かというと、まあとにかく「きれい」だ。本社周辺には現在7つのビルがあるのだが、そのうちひとつは最近出来たばかり。

 筆者は昨年も来ているのだが、その時はまだなかった。
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社内にはオープンなミーティングスペースが。中央の大きなボックスは「無音ブース」で、中に入ると外に音が漏れず、外の音も聞こえない。
 会社といえば各部門に分かれていて、席について仕事をするのがあたりまえ。もちろんNetflixにも各人の席はあるのだが、別にそこにいなくてもいい。

 会社中にネットワークが整備されているので、どこにいても自分の仕事ができる。集中するための「無音ブース」までおかれている。Netflix社員曰く、「外のベンチで仕事をしていたら、向こうのベンチではトップのリード(・ヘイスティングスCEO)が仕事していた」くらいの自由さである。
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会議室の名前はみな映画の名前。
 会議室やミーティングスペースはとにかくたくさんあるが、すべての部屋には「映画」の名前がついている。

 建物ごとにテーマがあって、そのテーマに沿った映画の名前になっているそうだ。中には「宮崎駿作品の集まった場所」もあるとか。
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ケーブルやバッテリー、USBメモリーなどの「消耗品」はここから勝手に持っていく。
 ケーブルや電源、USBメモリーなどが必要ならば、各所にある「自販機」から勝手に持っていけばいい。社員証をかざす必要も、書類を書く必要もない。

 すべて社員を信頼し、「自由にすることが仕事をスムーズに進めるために必要だ」という発想であるからだ。
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社内では食事も飲み物も自由。まず飢えることはない。
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 同様に、食べ物と飲み物も自由。社員食堂もあって、自分の机などに移動して食べることもできるが、軽食ならばそこら中においてあり、自由に食べていい。飲み物も同様だ。同様にNetflix社員曰く「Netflix社内で飢えることは絶対ない。一方で、悪いのは太りやすいこと(笑)」。

 休暇の申請も自由。どの場所で働くかも自由。日本の仕事環境とはずいぶん違う。
 一方で、強く求められるのが「パフォーマンス」だ。最大の結果を出すために、自分が責任を持つことが求められる。そこは当然厳しい。

 こうした「パフォーマンス重視」のワークスタイルは、シリコンバレー企業に多い。世界中から良い人材を集めるには、給与だけでなく労働環境、そしてやりがいが重要。そのために、「良い社屋で自由に働ける」ようにしつつ、管理コストを別のところに振り分けるスタイルが適している……ということなのだろう。

技術を磨いて快適さを担保

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Netflixが世界中に配布している専用サーバー。これを使い、ネットの混雑を防いでクオリティ担保をしている。
 Netflixはオリジナルコンテンツで成功した会社だが、同時に、テクノロジーで成功した「シリコンバレーカンパニー」でもある。

 例えば配信ネットワークでは、Netflixは他社にない大規模な施策を展開している。

 インターネットは混雑に弱い。だが、配信でコマ落ちは許されないし、画質も落としたくない。そのため多くの配信会社は、インターネット内でコンテンツ配信の効率化を行う「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)」を手がける企業と提携する。CDNの利用にはそれなりにコストがかかるがしょうがない。

 しかしNetflixは、CDNを自前で作ってしまった。コンテンツを大量に保存しておく専用サーバー(写真)を作り、世界中の通信事業者に配ったのだ。しかもタダで。それを各社のネットワークにつなぐと、自動的にCDNが出来上がるようにしたのだ。

 その中には、「統計的にその地域でたくさん見られることがわかっている映像」が蓄積されている。だから、利用者がNetflixにアクセスしようとすると、実際にはほとんどの映像が「自分が住んでいる場所に一番近い専用サーバー」から配信される。

 Netflixによれば、同社に対するアクセスのうち、95%が専用サーバーまでで終了し、アメリカまでアクセスされるのは5%しかない。だから混まない。ヘイスティングスCEOは「2年で、映像再生の前にある『バッファリング』を過去のものにしたい」と話す。
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 視聴に使うテレビにも積極的だ。といっても、自社でテレビを作るというわけではない。テレビでの視聴体験をよくするために、各社との協力関係を築いている。

 同社内には様々なメーカーのテレビが置かれ、常にチェックが行われている。結果的に、同社が推奨する「Netflix Recommended TV」(日本で入手できるものとしては、ソニー製とLGエレクトロニクス製が対象)では、視聴開始までの時間が、2年で30秒から2秒にまで短縮された。
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Netflix社内ではテレビも評価。各社のテレビで配信が快適に見られるように、積極的に開発に関わり、検証も続けている。
 コンテンツと技術の両方に積極投資を続けることが、Netflix成功の秘訣だ。日本では
まだトップシェアではなく、SVODの利用自体も広がってはいないが、すでに映像制作の現場では、Netflixをテレビ局やディスク販売と同様に「有望な市場」と捉え、コラボレーションの動きが進んでいる。

 世界で起きるSVODでの競争は、日本にもよい影響を与えているのは間違いない。少なくともドラマファン・アニメファンであれば、Netflixや同種のサービスの加入を検討すべきである。

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