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脱石油狙うサウジアラビア国王にソフトバンク孫正義が猛アタック:10兆円ファンドのその先にみる野望

菊池喬之介

2017/03/15(最終更新日:2017/03/15)


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by marumeganechan
 サウジアラビアのサルマン国王が来日した。サウジアラビア国王の来日は1971年以来、実に46年ぶりのこと。しかも今回は総勢1,500名の大所帯。大手百貨店では爆買いを期待する声も多く、まさに“サウジ御一行様”といった扱いだ。

 そんなサウジアラビアに急接近する人物がいる。ソフトバンクグループの孫正義社長だ。昨年から見せる動向にはどのような意図があるのか分析していこう。

石油依存体質のサウジアラビアが窮地に

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出典:www.meti.go.jp
 サルマン国王は日本だけでなく、中国やインドネシアなどアジア各国を訪問する予定だ。なぜ、このタイミングでこれほどの大所帯での訪問を行うのか。その理由はサウジアラビアの切羽詰まった状況がある。

歳入に約8割が石油:極端に依存した国家体制

 よく知られているようにサウジアラビアは世界有数の石油産出国である。日本の輸入原油の33.5%もサウジアラビア産であり、石油の話となると馴染み深い国だ。

 その豊富な資源から潤沢なオイルマネーを得ており、医療費や教育費が無償であり、社会福祉が充実していることでも知られている。

 だが、資源が豊富すぎていることで問題もある。歳入のおよそ8割を石油に頼っているのだ。

 今までは、石油に依存した体制でも問題はなかったが、シェールオイルの発掘などで原油価格が急落。財政に著しいダメージが直撃したのである。

 その影響から、今までサウジアラビアには税金が存在せず、国民は働かなくてもいい生活を送っていたが、急遽、付加価値税の導入を決定した。石油に代わる財源を血眼になって獲得しようと疾走しているのである。

依存体質を変える:「日・サウジ・ヴィジョン2030」に合意

 このような背景があり、サウジアラビアが打ち出したのが「サウジ・ヴィジョン2030」だ。この計画は2030年までに、石油に依存しない経済の多角化を進めるものだ。

 そのために、人材育成、技術提供などの分野での協力をアジア各国に求めているのである。日本は協力国の筆頭で、13日に「日・サウジ・ヴィジョン2030」をサルマン国王と安倍首相の会談での合意がなされた。

 ただ、サウジアラビアは中国も協力国の筆頭して捉えており、日本と中国でどちらが都合のいい条件で引き受けてくれるのか天秤にかけているのが現状だ。

10兆円ファンドの先に孫正義が見る「300年続く企業」

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by nobihaya
 脱石油を掲げるサウジアラビアに取り込もうとするのは国単位の話だけではない。多くの企業も外向的になろうとするサウジアラビアとの接触を試みている。

 中でもソフトバンクは大きな動きを見せている。昨年10月、社長である孫正義氏はサウジアラビアの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」と最大10兆円規模になる「ソフトバンク・ヴィジョン・ファンド」を発表した。

 そして、今回のサルマン国王来訪に際し会談を取り付け、「大きな投資」を行なっていくことに同意したと報道陣に発言。誰よりもサウジアラビアとの投資に積極的な姿勢を見せる孫氏とソフトバンクの思惑に注目したい。

サルマン国王との会見の成果は「大きな投資」の合意

 3月14日、孫氏は都内のホテルでサルマン国王との会談を行った。前述したソフトバンク・ヴィジョン・ファンドを通じてAIやIoTなどの分野に投資していくことを再確認した。

 孫氏は国王に「投資を通じてサウジアラビアを大いに繁栄させていく」とソフトバンクとの協力の有用性を強調。具体的な内容までは報道陣に語らなかったものの、「大きな投資を行なっていく」と発言した。

 一方の国王も「素晴らしい夜だった。大いに期待している」とのコメントを発表し、会談は成功に終わったように思われる。

巨額投資で孫氏がつくりたいもの

 10兆円という巨額のファンドで孫氏は何を成し遂げようとしているのか。その最終目標は「300年成長し続ける組織構造」だという。

 孫氏はこの巨額ファンドを駆使して、将来的には投資先を5,000社まで増やす構造を掲げる。そして、投資先は孫氏が見込んだ企業のみだ。

 その中で成功し、勝ち残る企業があることで、組織が成長していく。

 今の時点で、その分野はAIやIoTだ。孫氏は30年以内にAIのシンギュラリティ(技術特異点)が起こるという。それはAIが人類のあらゆる知を超える瞬間だ。

 そうなると、現在のあらゆる産業は再定義され、フィールドは無限に拡大していくこととなる。そうなったとしても、成功するピースを持ち続けられる組織が孫氏の目指すところである。

 あまりにスケールが大きい話にめまいがしそうだが、孫氏はこう語る。

「ソフトバンクってただの投資会社かという批判をよく受けますが、腹の中ではこう思っていますよ。いずれあなたがたも理解する時がくるでしょう。300年以内にはね」

出典:10兆円ファンド 孫氏が発明したいもの 知られざるソフトバンク(1) :日本 ...
 長年続いてきた国家体質を解体しようとするサウジアラビアと10兆円規模のファンドで前例がない組織を作ろうと試みるソフトバンク。どちらも世界を変えうる変革であることは間違いないだろう。

 もしかしたら、2030年には世界を率いる存在になっているのかもしれない大きな一手を打った両者の手腕に期待だ。

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