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THE IMPRESSION|CAMPFIREが日本に灯したクラウドファンディングという名の炎

U-NOTE編集部

2017/03/22(最終更新日:2017/03/22)


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 ここ数年、「クラウドファンディング」という言葉をニュースで見聞きする機会が増えている。クラウドファンディングとは、アイデアやプロジェクトを持つ個人や団体が専用サイトを通じ、共感者から資金を集める方法のこと。数百円単位からの支援が可能で、起案者と支援者を手軽に結びつけてくれるのが特徴だ。

 日本におけるクラウドファンディング元年は2011年に遡る。その年に産声を上げたサービスのひとつが「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」だ。クラウドファンディングにおけるパイオニア的存在でもあるCAMPFIREの取り組みや課題、今後目指すものについて取締役の髙村純一さんにうかがった。

髙村純一|JUNICHI TAKAMURA
株式会社CAMPFIRE 取締役
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1977年生まれ、福岡県出身。2004年paperboy&co.(現GMOペパボ株式会社)に入社後、韓国出張所の設置を行い「ロリポップ!」の韓国での開発ディレクションなどを行う。その後、ムームードメイン事業本部長、国際化推進部部長を経てハンドメイドECプラットフォーム「minne」東京チームの立ち上げ、外部アライアンスや東京ビックサイトでの20万人規模のイベントの立ち上げなどを行い2016年7月に退職。株式会社CAMPFIREの取締役となる。

クラウドファンディングはアイドル文化における「自己投影」

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——クラウドファンディングはアメリカが発祥の動きですが、そもそも海外と日本で何か違いはあるのでしょうか?

髙村:CAMPFIREがスタートした2011年の段階では、クラウドファンディングの最大手「Kickstarter(キックスターター)」がすでに海外で人気を集めていました。もともと、海外には資産家が芸術を生み出すアーティストに投資する“パトロン文化”が根付いていたので、クラウドファンディングは定着しやすかったのでしょう。

しかし、日本にはその文化がありません。そのため、国内ではクラウドファンディングが流行らないのではないかという声が今もあります。

その反面、日本には“アイドル文化”という、アーティストとファンをつなぐ仕組みがあります。ファンがアイドルを支援する様子を見ていると、アイドル自身に自分が達成できなかったことを託して自己投影しているように感じます。

こういった文化面の違いからみて、「クラウドファンディング」というキーワードにおいて、支援する側もされる側も海外と日本では意識が異なるのかもしれません。

——意識が違うということは、クラウドファンディングで募集されるプロジェクトの内容においても海外と日本に違いはあるのですか?

髙村:海外でニュースになりやすいのは、新しい技術を取り入れてプロダクトを作るというプロジェクトです。それに対して、CAMPFIREがスタートした2011年は東日本大震災が起きた年でもあるので、社会貢献のプロジェクトが多かったように思います。

また、クラウドファンディングで集まる資金額も大きく異なります。海外で話題のプロジェクトには億単位の資金が集まり、支援者数も数千万人単位。CAMPFIREではキングコングの西野さんのプロジェクトがもっとも支援され、4,637万円の資金と6,257人の支援者を集めました。

——サービスを開始されて6年が経ちますが、この6年で変化はありましたか?

髙村:集まる資金や支援者数は着実に増えています。また、多種多様なプロジェクトが立ち上がっているのも事実。なかには「奥さんにお寿司を食べさせたい」というプロジェクトが出てくるほどです(笑)。

もちろん、これが“クラウドファンディングにとって”いいのか悪いのか賛否両論はあります。しかし、“CAMPFIREとして”はアリですし、支えたい。CAMPFIREは、著名人や個人、目標金額に関係なく挑戦していただける場ですので、多種多様なプロジェクトが立ち上がっています。

身近な人からファンを増やしていくのが達成のカギ

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出典:camp-fire.jp
——さまざまなプロジェクトが立ち上がるのに対し、CAMPFIREはどのように対応されているのですか?

髙村:2011年から2016年初頭までは、社内で審査をして資金を調達できそうなものだけを選んでいたので、月に数十件程度しか世に出していませんでした。しかし、2016年2月に手数料を下げ、審査基準を大幅に変えたことで、いまでは月に400~500件のプロジェクトが掲載されています。

基本的に、相談をもらったものはメールや電話、直接会って話すなどしています。どういったリターン設計にするのか、どれくらいの金額が集められるのかといったことを、過去の事例を参考にお伝えしています。掲載後は支援が増えるようなアドバイスなどはしているのですが、やはり掲載数が増えたぶん、失敗する件数が増えているのも事実です。

——CAMPFIREのトップページにはいくつかのプロジェクトが掲載されていますが、ここに出るかどうかが明暗を分けることになりそうですね。

髙村:いえいえ、そんなことはありません。発起人のみなさんが個々にSNSなどを使って拡散されるので、身近なファンからどんどん広げて達成しているケースが多いです。

データを見ていくと、約3分の1が発起人の身近な人達からの支援で、そこからさらに身近な人達の周りの人に広がり、最終的には発起人のまったく知らない層にまで広がっていくというのが多いですね。

プロジェクトを細分化することで見えた業界ごとの課題

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出典:camp-fire.jp
——CAMPFIREはさらにジャンルを細分化させた「GoodMorning」「CAMPFIRE×LOCAL」「CLOSS」といったサービスも提供されています。どうして細分化するに至ったのでしょうか?

髙村:CAMPFIREには多彩なジャンルのプロジェクトが立ち上がっていますが、そのための弊害もありました。音楽やアニメといったエンタメ寄りのプロジェクトの隣に、子どもの支援など社会貢献のプロジェクトも並んでいたんです。これではあまりに感情の起伏がありすぎる。そう思って、まずは社会貢献型のプロジェクトだけを「GoodMorning」としてまとめました。

GoodMorningでは、個人だけでなくNPO団体からのプロジェクトも募り、毎月一定額を支援するマンスリーサポートを始めています。月に1万円や2万円といった少額でも集まれば、団体が活動するのに役立ちますからね。また、2017年の1月には寄付型にも一部対応しました。ジャンルを細分化したことで、そのジャンル特有のやり方を提案してもらって実現してます。

CAMPFIRE×LOCAL」では、各地域の人にパートナーになってもらっています。熊本大震災に関する復興支援のプロジェクトや、地場でプロダクトを作りたいというプロジェクトなど、ジャンルは多岐に渡ります。最初は熊本のパートナーからスタートし、いまでは全国で15エリア、16パートナーまで増えました。今後もさらに増えて、年内に50パートナーになる見通しです。

——通常のCAMPFIREでもこれに近いプロジェクトはあると思うのですが、どのように差別化を図られているのですか?

髙村:たしかにプロジェクトの発起人としては、LOCALとCAMPFIREどちらを使えばいいのか迷われるかもしれません。それは私達も課題だと考えていて、よりパートナーが動きやすくなるようこの春から仕組みを変え、少しでも挑戦しやすい環境を整備していきます。

あと、LOCALに関していえば、CAMPFIRE上で公開している別府市の「湯~園地」プロジェクトを知ったほかの自治体から、うちでも同じようなことができないかと相談を受けるようになりましたね。

——たしかにあれはインパクトがありましたね。あと、最近ではファッションにおけるクラウドファンディングに特化した「CLOSS」も面白い試みだと感じました。あちらはどういったサービスなのですか?

髙村:当初はファッションブランドがお金集めをしているのが格好悪いのではないかと言われていたのですが、よりブランドを広めるPR活動のため、さらに「ファン」にいろんなものを提供するためなど、クラウドファンディングは資金集め以外にも活用できます。現在では、この考えに賛同してくださった5つのブランドが参加してくださっています。

例えば、第一弾となったANREALAGE(アンリアレイジ)は今年のパリコレに行くための資金を「CLOSS」で募りました。資金の一部にクラウドファンディングを使うことで、ファッション業界全体の底上げになれればと私達は考えています。

ファッションというジャンルに絞り込んだことで見えてきたのは、次のクリエイターが育つ環境が整っていないということでした。そこで、2016年の暮れから「CLOSS Fashion Forward」という企画を立ち上げました。審査を通過した最大3ブランドには、2年間ビジネス面をサポートするチームの提供と、クラウドファンディングを活用した資金援助を行い、中長期に渡るサポートを行います。

日本初のクラウドファンディング保険の導入

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出典:mag.camp-fire.jp
——2017年3月には、「クラウドファンディング保険」を導入されましたね。これはどういったものなのですか?

髙村:海外にはクラウドファンディング保険のテストケースがあったので、保険会社の東京海上日動にお話させていただいたのがきっかけです。最初は、出来上がった製品が事故を起こしたり、権利関係で訴えられたりしたときのリスクを保険で賄えないかという「損害保険」を考えていました。

しかし、実際の課題として上がったのは、集まったお金を持ち逃げされるのではないか、リターンが来ないのではないかというクラウドファンディングに対する“不信感”なんです。過去の実例はほとんどないのですが、「ゼロ」ではない。本当に何か起きてしまったときに保険で賄えれば安心度が上がるはずだと思いました。どちらかというと、“保険でイメージを上げる”というよりは、“クラウドファンディングを実行する際の安心感”のために導入したんです。

——たしかにパトロンとしては一番不安になるところですね。実際にどのような保証をされるのですか?

髙村:この保険ではリターンが届かない場合、弊社が調査して、東京海上日動のご協力のもとで集まった金額の8割を上限として返金します。この仕組みがクラウドファンディング業界内に広まることで、業界全体が健全化していくと思っています。

「資金調達の民主化」を実現するのがミッション

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——着実にユーザー数を増やされているCAMPFIREですが、組織としてどのようなミッションを担っているとお考えですか?

髙村:もともとは石田光平と家入一真の2人が共同創業者として始め、現在は家入が代表取締役を務めています。そんな家入の方針は、「相談をすべて受けよう」というものでした。

プロジェクトオーナーとの打ち合わせにも同席したことがあるのですが、リターンを考えるときに一緒になってスタッフも考えていたんです。その様子を見て、「楽しみながらやっているな」というのを強く感じました。CAMPFIREは単純にシステムを提供しているのではなくて、プロジェクトオーナーと一緒に考えるスタンスがほかのクラウドファンディングよりも強いのかなと思います。

——「相談をすべて受ける」というのは、どういった考えのもとにあるのですか? そこに企業としてのとしての理念がありそうですね。

髙村:弊社は「資金調達の民主化」をミッションとして掲げています。インターネットやクラウドファンディングを通じて、個人やクリエイターの挑戦をお手伝いできるようにしたいんです。個人が集まってプロジェクトを達成することで、民主化が進みます。そのためにはCAMPFIREをより多くの人に使ってもらう必要があります。

また、そのためには、支援者をより柔軟に集められるプラットフォームであることも必要です。今後の課題は、プロジェクトオーナーにとって資金調達がより流動的になるような仕組みの整備だと考えています。

INTERVIEW/TEXT:今西絢美(ゴーズ)
PHOTO:海老澤芳辰

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