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トヨタ「プリウスPHV」試乗レビュー:「プリウスの正常進化型はこちらかもしれない」と感じた理由

増谷茂樹

2017/03/10(最終更新日:2017/03/10)


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 「21世紀に間に合いました」という印象的なキャッチフレーズとともに1997年に世に出たトヨタの初代「プリウス」。

 ハイブリッドという新たな価値を携え、先進的なクルマの代名詞的な存在であったが、そのイメージを受け継いでいるのは、この「プリウスPHV」かもしれない。発表されたばかりの新型に試乗し、抱いたのはそんな印象だった。

先進的な機能を満載した新型

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 機能的には「プリウスPHV」の先進性は疑う余地がない。屋根には世界初のソーラー充電システムを搭載し、大容量のリチウムイオン電池によってモーターのみで68.2kmの走行が可能。

 駆動には通常発電機として用いるモーターも動員する「デュアルモータードライブシステム」で力強い加速を実現し、室内に目を向ければ11.6インチのナビゲーションシステムも装備する。

 エアコンは停車中にエンジンがかかるのを抑えるため、高効率なヒートポンプ式。スマートフォンのアプリから遠隔操作で起動し、あらかじめ車内を暖めておくこともできる。
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 もちろん、安全面でも抜かりはな。カメラとミリ波レーダーで前方を監視し、自動ブレーキを作動させるだけでなく車線からのはみ出しを警告してくれたり、ハイビームの切り替えを自動でしてくれる「Toyota Safety Sense P」を全車種標準装備している。

 そして、このクルマのすごいところは、それらの機構が単なる先進技術のお披露目的な位置付けではなく、実用性を備えた“使える技術”として搭載されているところだろう。
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 ソーラーパネルで供給できる電力は1日で最大6.1km走行分とそれほど多くはないが、そのほかにもCHAdeMO規格の急速充電口も備え、普通充電では家庭用の100V電源で充電することも可能。

 「バッテリーチャージモード」では走行中にエンジンの力で積極的にバッテリーを充電することもできる。多様な充電システムに対応することで、少しでも電気での走行距離を伸ばそうという意図で、ソーラーパネルはその1つという位置付けだ。

「できるだけエンジンをかけない」が合言葉

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 エクステリアは、主張の強い現行の標準「プリウス」に比べると、一見すると落ち着いた雰囲気。

 試乗の際には「プリウスPHV」の開発責任者を務めた金子將一主査にも話を聞くことができたが、金子主査も「『プリウス』のアバンギャルドなデザインに比べ、『プリウスPHV』はややコンサバ」と認める。
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 その理由については「3代目で爆発的に普及したため、4代目ではデザインでも新しくなったことをアピールしたい『プリウス』に対して、『プリウスPHV』はこのモデルでの普及を意識したため」と語った。

 新型の開発コンセプトは「できるだけエンジンをかけないこと」だったとのこと。発電用のモーターを駆動に用いるシステムも、そのために搭載されたもので「従来であればエンジンがかかっていたタイミングで、もう1つのモーターを動力として使えることでエンジンがかかるタイミングを遅らせられる」のだとか。
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 このシステムのキーとなったのはエンジンとの間に搭載されるワンウェイクラッチ。通常、発電機として動いているモーターを駆動に使うには逆回転させる必要があるが、そのままではエンジンも逆回転させてしまう。

 逆回転の動きはとめ、正転方向には引き摺りなく回転するワンウェイクラッチの開発により、簡易なシステムで動力を取り出せるようになったという。

ほとんど電気自動車のように走れる

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 実際にドライブしてみてもエンジンはほぼかからない。それも街中だけでなく、高速道路でもだ。EV走行時の最高速度は135km/hなので、高速道路で追い越しをかけるような場面でも、ほぼEVのみでこなせてしまうのだ。

 試乗中に2回だけエンジンがかかったことがあったが、それは意図的にエンジン音を聞こうとアクセルを急に踏み込んだ時と、「チャージモード」に入れてバッテリーを充電しようとした時だけだった。
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 乗っている感覚は完全に電気自動車。標準モデルの「プリウス」と比べると、音が静かになっているだけでなく、車体の挙動も穏やかになっているようで高級感がある。

 これは大容量のバッテリーなどを搭載したことで約150kgほど重量が増していることと、それに合わせて足回りを固めにセッティングしたことが理由のようだ。

 今回試乗したのは16インチタイヤのモデルだったが、17インチタイヤを履いたグレードでは足回りをさらにハード目に振っているという。ぜひ、そちらにも乗ってみたいと思わせる上質な足だった。
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 走りは電気自動車のようだと書いたが、このクルマの良いところはバッテリーが空になっても普通のハイブリッド車として走れること。その際の燃費も標準「プリウス」と同様の37.2km/Lだ。

 これなら、安心してバッテリーを使い切るまでEV走行を楽しむことができる。電気自動車の魅力は静かで強烈な加速だが、一方で充電に時間がかかるので、バッテリーを使い切ることへの不安感が、ユーザーを増やす上での障壁となっている。

 しかし、PHVであればその不安を解消してくれる。トヨタがPHVを「次世代環境車の柱」と位置付けているのも、それが理由だ。
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 まるでタブレットを装着したような11.6インチのタッチパネルが鎮座するコックピットで、静かで俊敏な走りを味わっていると、この「プリウスPHV」こそが、プリウスの正常進化型なのではないかと思えてくる。金子主査にその質問を投げかけてみたところ、こんな答えが返ってきた。

 「初代のプリウスは先進性のアイコンでしたが、3代目以降は”売れるクルマ”としての役割も担わなければならなくなった。そういう意味で現行『プリウス』は数も追う役割を、『プリウスPHV』は先進性を普及させる役割を担っていると言えるかもしれません」。

 初代プリウスの革新性に胸を熱くしていたクルマ好きこそ「プリウスPHV」を選ぶべきなのかもしれない。

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