1. 日本のトンネル掘り技術は世界一:身近なモノに隠れていた「生き物」たちとの対面

日本のトンネル掘り技術は世界一:身近なモノに隠れていた「生き物」たちとの対面

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 トンネルにくぐらずにはいられない! ——人気映画「千と千尋の物語」では重要なキーワードとなったトンネル。日本人なら誰もが見たことのあるものであり、身近ながらも冒険心をくすぐる建造物だろう。

 そんなトンネルを掘っているのが「シールドマシン」。日本の生活を支えるトンネルは、フナクイムシの動きを参考に開発された。シールドマシンの他にも、世界には生き物の動きを参考にしたモノが溢れているのだ。

 今回は、シールドマシンと生き物の動きを参考に開発されたモノを紹介しよう。「生き物×モノ」ワールドへ、いざ!

穴掘りの強い味方:シールドマシン、何者なんだ?

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 1818年、今から約200年前にフランスのマーク・イザムバード・ブンネル氏によって発明されたシールドマシン。

 殻のヤスリ状になった部分で海中の木材に穴をあける……二枚貝のフナクイムシは、漁師の大敵とされていた。長らく漁師の厄介者だったフナクイムシは、殻で自分の身体を守りつつ、木材をかためて退路を確保する。その動きに、ブンネルはヒントをゲット!

 トンネルの大きさや形にあわせオーダーメイド方式でつくられるシールドマシンは「削る→壁面を組み立てる→進む」の3工程を繰り返し、トンネルを掘っていく。

 これだけの動作をするのだから長い時間がかかるのでは?と思われるが、実はとても素早い動きをする。直径3~8メートルのシールドマシンで進む距離は、毎分3~5メートル! 厄介者の動きが、生活インフラに貢献していたなんて……驚きの事実。

 1時間で3メートルも正確にトンネルを掘る技術は、200年もの間に先人たちがたくさんの失敗・改良を重ねた努力の賜物だったのだ。

「“穴掘り”と言えば日本!」と言われるのはいつから?

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 国土が狭い日本を発展させるためには、上下水道や電話線・地下鉄・雨水貯蓄など、生活に必要な様々なものを掘らなければならない。

 おまけに都市部は柔らかく不安定な地層。高度な技術を求められた日本の穴掘りは、世界最先端のものとなったのだ!

 シールドマシンは現場で組み立てて使われるが、日本は1ミリのズレもない精密なつくりに定評がある。土を切っていく切羽の安全性はもちろん、複雑な地形に鍛えられているので世界中どんな場所にもぴったり合うマシンの用意が可能だ。騒音問題にも対処し、最低限の音で進んでいく。

 2013年には日本企業株式会社大林組がニュージーランド・オーストラリアの企業と協力し、世界最大級の大口経シールドマシンでのトンネル工事に取り組んだ。

 安全・速い・静か! 日本のシールドマシン技術は、ワールドワイドなものだったのだ。

こんなものに役に立っていた:生き物を3種

 生き物を参考にしたマシンは、シールドマシンだけじゃない! 今回は、筆者が面白いと思ったモノを3つピックアップ。

カタツムリは、綺麗好き?

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by coniferconifer
 「でんでん、むーしむし」。目玉がどこにあるのかわからない、カタツムリ。気味悪がられ塩をかけられてしまうことも多い彼ら。

 彼らが常にかぶっている殻が汚れないことを参考につくられたのが「汚れないタイル」! キッチンシンクやビルの外壁にも使われている。

 塩化カルシウムで出来たカタツムリの殻は、数十ナノメートルからミリメートルに至る小さな凹凸が無数に存在。表面の溝に水分を蓄えて油などの汚れを弾いているので、上から水をかぶると汚れが全て落ちるというワケだ。

猛毒ウミヘビのウネウネ……何に役立つの?

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by maijou2501
 アナゴやウナギと似たような形をしているウミヘビ。実は猛毒を持っており、その毒はマムシやハブをも超える。そんなウミヘビを食べている民族がいる……そう、日本人だ!

 発売したばかりの“Nintendo Switch”を我先にと舐める様子に「フグで何人死のうと食べる民族だと思った」という意見がTwitterをかけめぐったが——フグよりも猛毒のウミヘビも食べているのだ。沖縄では郷土料理「イラブ―汁」として親しまれている。

 そんなウミヘビの動きを参考に開発されたのが「水陸両用ロボットACM-R5」。動画を観ていただければ分かる通り、ウネウネとしいて気持ち悪い……背筋が凍ってしまうような動きをしている。

 人間の代わりに水中の偵察や探索を任せることを目的に造られたのだが、独特の動きの方に興味を持っていかれそうだ……!

新幹線の騒音問題を解決しちゃった鳥たち:フクロウ

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 新幹線の騒音問題を解決する手助けをしたのは、フクロウとカワセミ。

 フクロウが静かに飛ぶことに気づいた当時のJR西日本試験実施部長・仲津英治氏は、風切り羽にある無数のギザギザが風を拡散させ音を抑えていることを発見。なんと、騒音を「30%」削減することに成功した。

新幹線の騒音問題を解決しちゃった鳥たち:カワセミ

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 もうひとつの問題、新幹線がトンネルから出る時にドンッという大きな音が出る「トンネルドン現象」の対策に一役買ったのがカワセミ。

 餌をとるために高速で水中に飛び込むカワセミ。その音が静かなのは、唇が空気抵抗を最小限にしていることが関係していた。この関係に仲津氏は着想を得て、現在の新幹線の形が生まれた。

 「騒音問題」とは日本らしい問題。しかし、新幹線が「ゴォーッ!」と爆音で走っている……なんてことは、笑いごとではない。確かに鳥がうるさい音を出しているところを見たことはなく、そこから発想を得た開発者の皆さんに感謝の気持ちを伝えたい!

 他にも、ナイロンの新素材は蜘蛛の糸を参考にしていたり、オナモミという植物はマジックテープ開発のヒントを与えていたりする。生物を参考にすることはバイオミメティクスというらしいが、生物にはまだまだ沢山の魅力が詰まっていそうだ。


 最初に紹介をしたシールドマシンはトンネルを掘り終えたあと、トンネルの一部となり一緒に埋められる。少し切なさを覚えるが、開発者の努力がカタチとなり、長く親しまれると思うとどこかワクワクする気もする。

 生き物を参考にしたモノは私たちの生活に溢れている。貴方がいま使っているモノにも、開発者たちの努力と生き物の秘密が隠されているかもしれない……。

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