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成人年齢「20歳→18歳」に引き下げていいのか? 3つの観点から民法改正案の是非を問う

日置泰治

2017/02/28(最終更新日:2017/02/28)


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 政府は成人年齢引き下げの民法改正案を今年の通常国会において提出する方針だ。成人年齢の引き下げはかねてより議論の対象であったが、その必要性はますます大きなものとなっている。

 成人年齢の引き下げは若年者の年齢条項がある200本以上の法律に影響があり、包括的な議論が求められる。本記事では成人年齢引き下げの賛否について、「成熟度」「少年法」「消費者契約」の3つの観点からそれぞれの主張をみていきたい。

①成熟度:18歳は大人なのか?

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 「18歳は大人であると判断してよいかどうか」という問題は、抽象的ではあるが最も広く議論されてきた。以下に賛成反対それぞれの主張を示す。

賛成意見

  • 先進国の多くが18歳成人制を採用している
  • 成熟度は個人差があり、かつ定性的なもの。「未熟な若者が多いから成人年齢を引き下げるべきではない」という主張は不適当

反対意見

  • 現在の社会は以前に比べて複雑化しており、自分で責任をとるための知識、能力、経験を身につけるのに、より時間がかかる
  • より低い年齢層に対して成人としての権利を解放することに、社会的なメリットが無い
 責任感や能力の醸成を法律によって促すのは妥当なのか、ということが焦点となりそうだ。

 大人になりきれていない人間に権利を与えてしまうことにより生じるデメリットをどの程度受け入れるか、大人を増やすことによるメリットと天秤にかける必要がある。

②少年法:適用年齢も引き下げるべきか?

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 成人年齢の引き下げに伴い、少年法が適用される年齢を現在の20歳未満から18歳未満に引き下げるべきだという意見も出ている。

賛成意見

  • 成人年齢が18歳に引き下げられた場合、18・19歳は大人であるから、20歳以上と同様の刑事罰を受けるべきだ
  • 少年犯罪に関し、刑が軽すぎて納得できないという被害者・世論の声が根強くある

反対意見

  • 年齢による適用条件は、各法律の目的に沿って決めるべきで、むやみに統一すべきではない
  • 少年法の適用年齢が引き下げられると、専門的な調査や教育的働きかけを受けられなくなる人が多数出てくる
 刑罰の目的は懲罰、秩序維持、更生復帰の3つが主に挙げられるが、少年法適用年齢の引き下げは、「悪いことをしたら罰せられるべき」という懲罰の比重を上げるためのものと考えられる。

 少年法が適用されたほうが再犯防止につながる、というのが事実なら、現在の20歳以上に対する刑罰のあり方も考え直さなければならないだろう。

③消費者契約:引き下げ反対の意見が主流

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 成人になると親の同意なしに、自由にモノやサービスの契約ができるようになる。この消費者契約という観点においては、反対意見が多数を占めているのが現状だ。

賛成意見

  • 18歳にもなると、就職やアルバイトで金銭収入を得る人が多くなる。自らの金銭収入は自由に消費できるべきだ

反対意見

  • 成人した途端、高額商品を買わされるトラブルが増加中。成人すると被害額が急増する傾向があり、成人年齢を引き下げると被害が拡大する恐れがある
  • 高校卒業後、70%以上の人が大学、専門学校などに進学して、親の稼ぎの中で暮らしている。経済的にも社会的にも自立していない年齢層に対しては、特別な保護が必要
 ある程度金銭収入があることを差し引いても、契約年齢を引き下げるメリットはそのデメリットに及ばないという考えが多数を占めている。

 契約の取り消し権についても、成人年齢の枠に囚われない形での議論が望まれる。


 成人年齢の引き下げについて考察すると、自立した大人になるまでの教育がいかに不十分であるかが浮き彫りになってくるように思われる。

 特に契約に関することは、人生で最も大切なことの一つであるにも関わらず、(自発的に学ぼうとしなければ)教育の機会は極めて少ない。

 成人年齢に関する議論は、引き下げるべきか否かというだけの問題ではないのだ。

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