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VR元年と呼ばれて1年、今後VRはどこまで私達の生活に入り込んでくるのだろうか

藤田裕太郎

2017/02/08(最終更新日:2017/02/08)


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 VR元年と言われた昨年。SF世界の産物と思われた仮想現実の体験はもはや一般にも手の届く存在となりつつある。今後数年でVR技術によって我々の生活が変わるようなことがまだあるのだろうか?VR技術利用と可能性について幾つかの事例とともに考える。

あのひみつ道具が現実に?自宅でイギリス縦断の旅

 『ドラえもん』コミックス第18巻に「未来のルームランナー」というひみつ道具が登場する。板状のベルト式ルームランナーに乗って歩を進めると、身体はその場でベルトの上を足踏みしている状態のまま視界だけが前進するのだ。もちろん擬似的に移動しているに過ぎないので自動車など障害物との衝突の恐れはない。のび太は速度調整機能の助けを借りながらもついに東京―九州間の西日本縦断を達成するのだった。

  こののび太の体験は自宅に居ながら自分の足で小旅行をするというまさにVR体験であったが、これはいよいよ空想の話ではなくなってしまった。

  スコットランド男性のアーロン・プジー氏は自作アプリを作ってGear VRとGoogleストリート・ビュー、そしてエアロバイクをドッキングし自宅に居ながらイギリス縦断の旅を満喫したことで世界中から注目を浴びた。

  我々の夢を広げてくれるVRの可能性は、退屈な毎日の運動に楽しさをプラスしようというごくわずかな思い付きからも新たな様相をのぞかせてくれる。

次の体験領域は“五感”へ

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 VRが強い没入的な体験をもたらす理由の一つには、人間の知覚の90%を司る視覚と聴覚を支配していることが挙げられる。VR体験の現場ではあまりの臨場感に匂いまで感じたというような報告が少なくない。これはクロスモーダル現象と呼ばれ、知覚の大部分を疑似体験することで残りの嗅覚などの知覚を脳が補完しているそうだ。

  しかしより完全な仮想体験を生むため、そのほかの五感にも働きかけようという試みが続々と実を結びつつある。

 果物や人間の匂いなどの嗅覚情報を再現するデバイスは、ヘッドセットの下にカートリッジを取り付けるような形では一般ユーザー向けにも発表され始めている。小さな棒状のカートリッジをつけるものから巨大なガスマスクのような形状のものまで様々だ。

 触覚に関してはシートのようなものを貼り付け部分的に刺激を与えるようなものから、ボディスーツ型で全身の触覚に働きかけるものまで各社の開発研究戦争は激化している。

 視聴覚体験によるVRの一般市場への提供まで大きく踏み切られたのが昨年VR元年であった。2017年、次の段階は五感というわけだ。触覚や嗅覚などはアダルト産業との親和性が期待されていたりもする。

医療や建築:様々な利用法

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by www.mazintosh.es + 1.000.000 Views
 VRの持つ強い没入感、臨場感は一方で仮想体験なので絶対に安全という重要な性質を持つ。何をいまさらと思われるかも知れないが、実際VRは医療・建築の分野で大きな役割を期待されているのだ。

 CT解析や手術のシュミレーション・トレーニングなど、医療の現場ではこれまでも3D映像技術が導入されてきたが、VR技術の発展は高所恐怖症・閉所恐怖症・戦争体験からくるPTSD(心的外傷後ストレス障害)・薬物依存などの治療に貢献してくるかもしれない。中国浙江省(せっこうしょう)の更生施設管理局はVRと心電技術による薬物依存矯正治療システムを2017年に始動すると発表している。

 またさらなる制度での手術シュミレーションや、術野(手術中目で見える部分)の狭い内視鏡手術などでのVR技術運用が今後考えられる。

 また建築・不動産の分野でも、VR映像で作ったモデルに入り込むことで建築家のイメージの共有は数段容易になるし、部屋探しの内見もあちこち移動する手間を省いて一か所で行える時代が来ることは十分予想される。


 以上現在進行中のVRの試みの中からいくつかを紹介してきた。今後もほんのわずかな発想から拓かれうるVRの新たな可能性から目が離せない。

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