HOMEライフスタイル スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例

スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例

藤田裕太郎

2017/01/27(最終更新日:2017/01/27)


このエントリーをはてなブックマークに追加

スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例 1番目の画像
 いまや多くの国が手にし、毎日のように利用しているスマートフォン。我々とネット世界との窓口となってくれるこのデバイスが、犯罪捜査における重要な証拠になる時代が到来している。

瞳に映った容疑者

スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例 2番目の画像
 よくTVドラマや映画で目にするような高度な画像解析が、いよいよ現実味を帯びてきている、そう思わされるような一例があった。

 このニュースは徳島県警の鑑識課が現場捜査員から、スマートフォンに保存された被害者の姿を収めた写真の、瞳に映った人影らしきものの解析を依頼された、というもの。異例ともいえる依頼に驚きながらも解析を進めると、スマホを構えた容疑者の姿が瞳に映っているのが明らかになり、捜査の重要な証拠となったという。

 この一件は画像解析技術の水準とともに、スマートフォンに搭載されたのカメラの性能もまた飛躍的な進歩を遂げているということを我々に教えてくれた。今やスマホで撮影した写真は捜査において重要な証拠となりうるのだ。

 また、2016年8月に個人情報保護委員会が新たに公表した政令案では、「個人情報保護法」の中の「個人情報」の定義に、指紋やDNA、虹彩、声紋、歩き方や手指の静脈といった生体認証の根拠となるような身体的特徴が加えられた。

  カメラの性能の向上とともに、instagramなど写真や動画を発信して楽しむというSNSの在り方も寄与して、個人を特定し、犯罪の証拠ともなりうる情報は膨大な数になっていくと予想される。

データ、ライフスタイル、位置情報:捜査への様々な利用価値

スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例 3番目の画像
 これまでも犯罪捜査にスマートフォンは様々な形で証拠として貢献してきている。

 捜査関係者向けにはスマートフォンなど携帯電話端末からデータを抽出する装置が、データにかかわるサービスやソフトを扱う企業によって実際に提供されているという。このツールではデバイス内に保存されている情報はもちろん削除されたデータまで復元して抽出できるというから驚きだが、日本の警察でも都市圏のみならず地方の警察署にまで配備が進んでいるようだ。

 2016年11月、カリフォルニア大学研究チームの発表によれば、スマホについた手垢などの付着物から日常的に使用する嗜好品や化粧品や薬剤などを分析し、対象の特定はもちろん、ライフスタイルの推測にも役立てることが可能だという。この研究にはアメリカ司法省が資金援助しており、やはり犯罪捜査の観点からスマホに注目が集まっていることが伺える。

 スマホが送受信する位置情報も、有力な手掛かりとなるケースがある。2016年の沖縄県うるま市で女性が遺体で見つかった事件では、被害者のスマホが発信する位置情報が途絶えた地点周辺の通行車両を徹底して調べた。結果として米軍関係車両が浮かび上がり、米軍所属の男を死体遺棄の容疑で逮捕するに至った。

通知なしで位置情報利用が可能に

スマートフォンが事件を解決してくれる? 犯罪捜査におけるスマホ活用事例 4番目の画像
 こうしたスマホが発信する位置情報の捜査利用に関連して、2015年6月にある動きがあった。

 総務省が「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」を一部改正した。ある一文が削除されるという一見微細な改正のようだが、削除されたのは「当該位置情報が取得されていることを利用者が知ることができるときであって」という箇所であった。

 これ以前は犯罪捜査に位置情報が利用される場合、当該利用者の端末画面に通知を表示したりバイブレーションで知らせたりすることが義務付けられていた。しかしこの本人への通知が捜査にとって不利に働く場合があるということで、今回ガイドライン改定に至ったという。

 これを受け、NTTドコモは2016年夏発売の一部機種にガイドラインに沿った「本人通知なし」の改変を施した。ソフトバンクやといった大手通信キャリア各社はガイドライン改定への対応に関して明言を避けたが、今後全面的にガイドラインに沿った形へ向かうとなれば、プライバシーの問題が出てくるのは必至だ。

 Appleでは強い顧客プライバシー保護の立場をとっており、iPhoneはガイドライン改定の影響は受けないという。この態度は、2015年12月に起こった銃殺事件の捜査を巡って、FBIによるiPhoneのロック解除要請に対しAppleがNOを突き付けた一件にもよく表れている。

 日本のiPhoneユーザーの多さやプライバシーの問題、またガイドラインに対応するかどうかが各社に委ねられる形となっていることなども踏まえて、今後さらなる議論が必要となるだろう。
 

 目に見える形でも見えない形でも膨大な量の情報がやり取りされる情報化社会において、その中から捜査に有益な情報を抽出するためのデバイスとしてもスマートフォンは機能していくことになるだろう。

 どうしてもプライバシーの問題が取り上げられてしまうが、今後は制度に対しプライバシー軽視だと反発するだけでなく、自分のプライバシーの守り方も同時に考えていく必要があると感じる。

hatenaはてブ


この記事の関連キーワード