1. 2016年にシェアを伸ばした格安SIM「mineo」:戦略のカギは「信頼感」にあり

2016年にシェアを伸ばした格安SIM「mineo」:戦略のカギは「信頼感」にあり

 総務省が様々な議論を交わしていることが追い風になっている一方で、MVNOは「淘汰」の時代に入ってきている――格安SIMサービス「mineo(マイネオ)」を運営するケイ・オプティコムの橘俊郎氏(取締役 経営本部 副本部長)は、1月19日の事業戦略説明会でこう述べた。
 MVNOとは、仮想移動体通信事業者の略称。大手キャリアの通信網を有料で借りて、通信サービスを提供する事業者のことだ。MVNOが一般消費者向けに提供するモバイル通信サービスは「格安SIM」と称される。

 同社が「mineo」ブランドを開始したのは2014年6月のこと。NTTドコモの通信網を使用するMVNOが多いなか、同社はKDDI(au)の通信網を使用する希少な格安SIMとしてサービスインした。

翌2015年9月には、NTTドコモ系の通信サービス(Dプラン)の提供も開始。その後は2つの通信網を選択できる「マルチキャリア」として展開している。

マイネオのシェアは現在4位

 格安SIMサービスの栄枯盛衰は激しい。もちろん、NTTコミュニケーションズが展開する「OCN モバイル ONE」やIIJの提供する「IIJmio」など、一部サービスは上位シェアを維持し続けている。

 しかし、シェア3位以降の並びはシーズンごとに頻繁に変動している。もっと言えば、小規模な格安サービスのなかには、新プラン提供開始などのリリースがピタッとアップされなくなり、次第に見かけなくなるものも少なくない。

 そんな格安SIM市場において、2016年のmineoは存在感を放っていた。MM総研のデータを元にケイ・オプティコムが説明したところによれば、同年3月末におけるシェアは4.5%だったが、9月末にはこれが5.9%まで上昇。

 「ビッグローブ」「U-NEXT」の2社を追い抜き、同時点でシェア4位に踊り出た。また、2017年1月には契約回線が50万件を突破。来たる3月には55万件達成を見込んでいる。
 今回の事業戦略発表会では、「サービスイン当初からの目標である100万件を達成するために、どんな施策を展開していくのか」という点に焦点が当てられた。

事業戦略の柱は大きく3つに分けられる

 同社は2017年度末に契約回線100万件達成を目標に掲げている。そのために同社があげた施策は、下記の3つに要約できる。

mineoが100万件突破を目指すための施策

  • 「マイネ王」というプラットフォームを活かし、コミュニティを強化
  • 新端末を導入するほか、訪問サポートや通話定額の新サービス提供へ
  • 全国規模のテレビCMとキャンペーン、新設の直営店でアピールする

コミュニティ戦略

 「マイネ王」とは、mineoユーザーが利用できるコミュニティサイトのことだ。スタッフがブログで役立ち情報を配信するほか、ユーザー同士で交流できる掲示板や、Q&Aサイトとしての機能も備える。また、mineo最大の特徴である「フリータンク」機能(※)も、このマイネ王から利用できる。

※余ったデータ量をユーザー間で共有して使用できる機能のこと

 また、ユーザーからmineoに対して改善策を投稿できる体制も整っている。「かけ放題プランが欲しい」「mineoスイッチのオン・オフを自動にしてほしい」などといった27件の要望をすでに実現したそうだ。
 こうしたコミュニティサイトがある意義は大きい。公式サイトやウェブメディアのレビューなどからでは得られない「ユーザーならでは」「運営ならでは」の情報を公開・共有することで、サービスの実態が見えやすくなるからだ。

 コミュニティを強化していくことは既存のユーザー満足度を高め、新規契約を検討する層に対して信頼感を与えることにつながる。

 しかし、マイネ王のアクティブユーザーは約10%に限られるのが実状だという。そこで、同社は新しい企画を打ち出して利用率を上げようと試みている。

 例えば、昨年12月からは「HAPPY METER」としてユーザーの満足度を数値・グラフ化する試みを展開。また、本年1月中には「新春マイネおみくじ」として100MB~5GBの通信量が当たる企画を実施している。当面の目標はアクティブユーザーを4割まで上げることだという。

新端末・サービスの導入

 端末と通信プランのセット販売が主流となったいま、新機種の導入も重要だ。mineoでは、2月1日にスマホ2機種(「ZenFone 3」「ZenFone 3 Laser」)、そして同サービス初となるタブレット1機種(「MediaPad T2 8 Pro」)を導入する。なお、2017年春には、現在未発表の5型スマホが発売されることも予告された。

 また、SIMカードの初期設定やWi-Fi設定、Googleアカウントの取得などを手伝う「訪問サポート」(価格は出張費込み9,000円台)や、月額850円で5分までの通話が何度でも無料で行える「5分かけ放題サービス」なども導入する。

 ただし、この点については既に格安SIM業界全体で普及している機種・サービスである。同社が先駆的というわけではなく、「他社に先行された部分の穴を埋めた」という印象だ。

テレビCMを全国展開にするのは今回が初めて

 1月21日よりmineoはテレビCMを全国で放映する。従来は関東・関西・中部地方で放送されていたが、中部地方でCMを打った際に契約数の増加を確認したため、全国規模で試みることにしたという。ちなみに、同CMキャラクターには葵わかなさんが起用される。

 キーワードは「新しいフツー」。手持ちのスマホがそのまま使えることや、通信量がオーバーした際に1GBまで助けてもらえること、2年縛りがないことなど、格安SIMとしてのメリットを指して用いられる。

 1月20日~5月9日には、新規・既存ユーザーのそれぞれに対し、キャンペーンを実施する。期間中に音声通話対応の「デュアルタイプ」を新規契約した人には、800円×3カ月の割引が適用される。また、既存ユーザーは家族や友人にmineoを紹介するとAmazonギフト権が貰えるが、期間中は倍額の2,000円相当になる。
 また、2月1日には、渋谷に新しい直営店がオープンする。「mineo大阪」「mineoショップ名古屋」に続き、3店目。同店1Fにはカフェが出店する。これには、MVNOに関心がない客層にもアプローチを試みるという意図があるようだ。

格安SIM選びのポイントは「誠実さ/分かりやすさ」にあり

 筆者は職業柄、「どこの格安SIMが一番よいの?」と尋ねられることが多い。これは非常に難しい問いである。「価格の安さ」「契約のしやすさ」「サポートの充実度」など、選択には多くの要素が絡んでくるからだ。もちろん、選ぶ人の条件によって優先すべき項目は大きく変わってくる。

 しかし、どんな切り口で選んだとしても絶対に外せない条件が一つある。それは「わかりやすい」ということだ。初心者でも料金体系の全貌や契約条件の詳細がつかみやすければ、そこは信頼できると言ってよい。逆に言うと、複雑な料金体系や分かりづらい表現で混乱を誘うサービスは、おすすめできない。公式サイトを比較すれば、違いはすぐにわかる。

 mineoは情報の風通しが非常によいサービスだと感じる。今回の説明会でも、「音声通話対応SIMの割合が74.5%」「契約者の女性比率は32.1%」「3GBプランを選択する人が60%」など、“そんな数値まで公表できるのか”と驚かされた。

 格安SIM市場はパイが限られている。ゆえにmineoが2017年にシェアを大幅に伸ばし、目標値の100万件を達成できるかどうかは断言できない。しかし、運営とユーザーの近さや、情報をとことん公開する誠実な姿勢は、mineoというサービスを他の格安SIMと差別化できる強みである。今年も堅実に成長しそうな格安サービスの一つだと言えるだろう。

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