HOMEビジネス 未だ冷めやらぬ監視社会への警鐘。アメリカ最大の機密を暴いた男・スノーデンの真実

未だ冷めやらぬ監視社会への警鐘。アメリカ最大の機密を暴いた男・スノーデンの真実

藤田裕太郎

2017/01/20(最終更新日:2017/01/20)


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by AK Rockefeller
 アメリカの重大な機密情報を暴いた男を描いた映画『スノーデン』が1月27日から全国で公開される。本作で彼をテーマにした作品としては二回目の映画化となり、いまだこの問題の衝撃がアメリカ、そして世界で尾を引いていることが伺える。

 これをきっかけに今回は、エドワード・スノーデンという男と彼が起こした騒動とはいったい何なのか、紹介していく。

オタク気質が情報技術の土台に


 エドワード・スノーデンは1983年、ノースカロライナ州はエリザベスシティに生まれた。父はアメリカ沿岸警備隊員、母は連邦裁判所職員という公務員の両親の間で育ったスノーデンはゲームやアニメ、漫画など、いわゆる「オタク文化」にのめり込んでいき、それらに関する同人サークルのウェブサイト管理も行った。

 高校を中退するものの、中等教育修了書を取得し、メリーランド州のアン・アランデルコミュニティ・カレッジに入学。プログラミングや計算機械学などのコンピューター学を学び、「ソリューション・エキスパート」(マイクロソフト社認定のIT技術資格)を取得した。これらの少年・青年期の経歴によってすでに、彼のネットやコンピューター技術の下地が着々と形成されつつあった。

 2004年には対テロ戦争に伴う人員募集を背景に、合衆国陸軍に志願入隊する。持ち前の情報工学の技術を買われ特技兵に配属されるも、訓練中の自己で両足に重傷を負い、わずか5か月間で除隊を余儀なくされてしまう。

 国のためにテロリストと戦うことに意欲を燃やしていたスノーデンは失意の底にあったが、2005年には国家安全保障局(NSA)の警備員、続いて2006年には米中央情報局(CIA)のコンピュータセキュリティ関連に職を得、2007年にはスイスのジュネーブでの情報収集に参加する。

 2009年にCIAを辞職した後は、NSAと契約する米DELLやブーズ・アレン・ハミルトン社に転職しながら、NSAなどの情報機関へも出向しており、依然として通信傍受活動との関わりがあったとみられる。

「世界は監視されている」、2013年の事件

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 テロと戦うために米軍入隊を志願するほどに、祖国への深い愛情を持っていたスノーデン。DELLやブーズ・アレン・ハミルトン社での待遇も厚く、年収約20万ドルの高給取りとなっていた。

 しかし、NSAやCIAでの経験は、アメリカ政府の情報収集活動が持つ負の側面を否応なく彼の眼前にたたきつける結果となった。スイスの銀行員を酒に酔わせ、飲酒運転で逮捕に持ち込んだところで取引を持ちかける、などといったグレーゾーン的なやり方は、次第に彼を失望させることになった。

 こうした国家の行為への反感情を背景に、香港で英『ガーディアン』紙の取材を受け、ハワイのNSAオフィスから複写し持ち出した文書を根拠にNSAの情報収集・盗聴の実態を告発。

 この告発で、NSAがPRISMと呼ばれる監視システムによって、合衆国内のみならず全世界的に通信情報・メタデータの網羅的な傍受を行っていること、またこれらの監視行為にMicrosoftやSkypeといった民間の大手企業が協力させられていることなどが明らかになり、当該記事の暴露と同時に全米だけではなく、全世界を震撼させることとなった。

 2008年には監視システムの恐怖を描いた映画『イーグル・アイ』もあったが、十分な確証のない噂レベルではこうした監視システムがあるのでは? という指摘がこれ以前にもなされてきた。

 しかし、今回の事件によって、まさに映画のような世界が一気に真実味を帯びることとに。国家機密の漏えいだけでなく、今や当たり前のように普及したスマートフォンや、情報をネット上で管理・保管できるクラウドサービスを媒介して、個人情報の流出への可能性があるという大きな不安となった。あなたのプライベートなメールや電話も誰かに見られている恐れがあるというのだ。

亡命生活:トランプ政権発足の影響は?

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by Gage Skidmore
 連邦捜査局により情報漏えい罪などの罪に問われたスノーデンは、ウィキリークスの支援を受けながらロシアの空港に滞在、アイスランドやエクアドル、中国など18の国に対し亡命申請をしていたが、2013年8月ロシアの一年間の滞在許可証を取得、2014年7月に3年間の滞在期限延長を受け、現在に至る。

 最近では次期CIA長官によるスノーデンへの依然として敵対的な言及もあり、現在も米政府としてはスノーデンを訴追する姿勢を崩していないことが伺える。

 だが、国務長官にプーチン大統領と親交のあるティラーソン氏を指名するなど親ロ的な立場をとるトランプ政権に移行すれば、スノーデンのアメリカへの送還なども可能性として浮上し、立場がやや悪くなることは考えられるだろう。

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