1. 西田宗千佳のトレンドノート:CCCが進める「テレビマーケティング分析」の今

西田宗千佳のトレンドノート:CCCが進める「テレビマーケティング分析」の今

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 TSUTAYAの運営などで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下で、データマーケティングを担当するCCCマーケティングという会社が、テレビを軸にした新しいマーケティングの仕組みを企業向けに提案している。

 個人が直接目にするものではないので、知らない方がほとんどだろう。そのCCCマーケティングが、企業向けにさらに新しいマーケティングツール「Market Watch」を開発した。このタイミングで、同社に詳細を伺い、実際に使ってみることもできた。そこで何が起きているのか、解説してみよう。

消費動向分析をより使いやすい「ツール」に

 CCCマーケティングは、CCCの運営するポイントカードである「Tポイント」(運営は株式会社Tポイントが担当)で収集されたデータを使い、企業にマーケティングデータの提供と助言を行うことで対価を得ている。

 例えば、「30代の男性はビールと一緒になにを買う可能性が高いか」といったデータを提供することで、企業側のビジネス効率を高めることが狙いである。ベースとなっているのは、Tポイントの利用者の購入履歴だ。ここから氏名や住所などの個人を特定しうる情報を外した上で、統計的に利用する。同社によれば、現在1年間に6,000万人以上がTポイントを利用しており、そこから大量のデータが日々蓄積されている。

 こうした情報をどこまで利用すべきか、という議論は厳然と存在する。Tポイントには拒否感を持つ人も、批判もあるのは事実である。一方で、ポイントサービスによる割引などの価値とバーターであり、あくまで「ある属性の人々がどう振る舞うか」を把握したい、とCCC側は考えているのも事実だ。本記事では、彼らがビジネスにどういうデータを活かそうとしているか、という事実のみを扱うこととする。

 こうした分析は、CCCマーケティング内に日々蓄積される巨大なデータを解析することから生まれる。一方で、そうした分析はこれまで、企業がCCCマーケティングと直接ミーティングをし、その都度CCCマーケティング側が分析する内容やデータをどう可視化するか、といったプロセスを経て出来上がっていた。

 一方で、企業側が知りたい情報は、意外と累計化しているものだ。「この年齢層の人々はなにを好むのか」「ある販売キャンペーンを行った後、どういう変化があったか」といったものだ。聞きたいことを「パッケージ化」し、CCCマーケティング側に作業してもらうのではなく、担当者が自社のPCから、ウェブを通して自分で判断できるようにする、というものである。

 開発コストはかかるものの人手はかからなくなるし、企業側はいつでも分析ができる。企業向けなので半年の利用で825万円(税別)と高価なサービスではあるのだが、毎回コンサルティングを受けるよりは便利だし安価、という設定になっている。分析には色々な手法や用途があり、それぞれにパッケージ化していくことを「Market Watch」と呼んでいる。

「テレビの視聴ログ」と消費動向をマッチング

 その第一弾がテレビをテーマにした「CM Pack」だ。

 彼らがTポイントのデータとテレビを掛け合わせようとしている理由はシンプルである。テレビは非常に大きな影響力を持っているのに、その影響力は非常に大まかな形でしか集計されていない。具体的に言えば「視聴率」だ。視聴率は基本的に6つの区分でしか集計されない。「M1・M2・M3、F1・F2・F3」というものだ。

 Mは男性、Fは女性を指し、20〜34歳・35歳〜49歳・50歳以上で分ける。実際には、低年齢層をC(4〜12歳)、T(13〜19歳)とも分類するのだが、まあ、中心は6区分だ。

 この区分は非常に荒い。集計が大変なのでこうせざるを得なかったのだが、「30代の独身男性で毎日ビールを飲む人」というレベルで分析が可能になった現在、視聴率での分析は満足しない企業が増えてきた。

 そこでCCCマーケティングは、テレビメーカーと組んで「テレビが実際にどれだけ動いたか」というログを取得するようになっている。もちろん、許諾した人のみだ。現在は、東芝とパナソニックが共同キャンペーンを行っており、テレビ内にTポイントのアカウントを登録し、連携に同意した人にポイントを提供した上で、視聴データを取得している。

 このキャンペーンに登録しているテレビは、日本全体で30万台あるという。こうしたテレビから、CCCマーケティングは、テレビの視聴状況を1秒単位で把握できる。そして、そのうち6万人程度が、Tポイントの購買履歴と視聴状況を紐付けて分析できる人々、ということになる。
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 Tポイントとの連携を許諾したテレビは全国に30万台あり、そのうち6万台が消費動向分析と連携する。

 そうした人々には、Tポイントで分かる様々な「属性」がある(下画像)。

 その属性に合わせてテレビの番組情報を分析することで、よりマーケティング精度を高める試みがCCCマーケティング内では行われてきた。それをシンプルにパッケージ化するのが今回の試みだ。
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 CCCマーケティングでは、視聴データと消費者のプロファイルを掛け合わせて分析する。

 今回は現実のものではない仮想のデータを挿入した環境で実際の動作を見る事ができた。例えば下の画像データでは、「関東に住む子供のいる既婚女性」に切り口を絞り、週毎に各チャンネルの「録画視聴量」を可視化したものだ。不振と伝えられるフジテレビの視聴量が意外と多かったり、週毎に視聴量に大きな増減があったりするのがわかる。しかも、これが「生視聴量」に変わると、先ほどのグラフでは下の方にあったEテレが上がってくる。子供と一緒に見ることが多いからだ。
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 仮想のデータでのデモ例。「関東に住む子供のいる既婚女性」の「録画視聴量」をテレビ局毎に分析。

 こうした集計が可能になると、「あるCMを打った時の消費動向の変化」「ライバルの新製品が紹介された時の消費動向の変化」が読めるのはもちろん、「視聴率は低いが、自社製品を買っている人の多い番組」も見えてくる。

 下記のデータは、特定の商品について、ブランド毎に購買金額を統計したものだ。ここから、「どういうテレビ番組によって消費が増えるか」「ライバルの新製品にどう影響を受けるか」が見えてくるわけだ。
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 視聴ログデータと消費動向から、「どのブランドの販売量がどう変わったか」もわかる。

カンでなく「分析」によるビジネス展開を拡大

 個人情報の活用というと、「自分の履歴でCMが追いかけてくる」ようなイメージを持ちそうだ。ダイレクトメールやターゲット広告はそうした側面がある。CCCマーケティングはそうしたビジネスも手がけているので、危惧されるのもわかる。

 一方で、いまビジネスとして広がりを見せているのは、「特定の個人を追いかけ続ける」ような広告手法ではない。それでは逆に、その個人から嫌悪感をもたれることも多く、ビジネスとしては得策ではない。CCCマーケティングも、そことは違う部分に、より大きなビジネスの可能性を感じている。

 マーケティングとは、人により商品を知ってもらう、買いたいと思ってもらうために行うものだ。製品をどう変えるべきか、広告をどう流すべきか、という判断基準を企業は求めている。

 いまだに「どれだけたくさんの人が見ているか」をざっくり計り、人にわかりやすく伝えるものとして、視聴率は有用だ。だが、確かに視聴率という指針「しかない」のが問題とされていた。CCCマーケティングはそこにビジネスチャンスを見たのである。企業側も、こうしたツールを使うことで、自らのビジネスプランを検証しながらビジネスを進められる。見落としている顧客を見つけることも可能だ。

 個人情報の活用は、プライバシーとのバランスが重要で、まだ議論が残る部分もある。だが一方で、企業側も「ざっくりカンで」ビジネスを進めるのは、もう通じない時代だとも思うのだ。

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