1. トヨタやLEGO、BMWも…世界的企業が力を入れる「オープンイノベーション」の功罪

トヨタやLEGO、BMWも…世界的企業が力を入れる「オープンイノベーション」の功罪

出典:toyotanext.jp
 12月7日、トヨタ自動車が国内向けのオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT(トヨタネクスト)」をスタートさせた。これまで、こだわってきた自社グループでの技術開発とは別に、外部の個人やベンチャーなど外部企業との共創によって新たなイノベーションを起こそうというのである。
 
 実は、この「オープンイノベーション」という言葉、あまり聞き慣れないが、新しい技術革新の形として近年高い注目を集めている。今回はそんなオープンイノベーションを開発に取り入れた企業の例を交えながら、オープンイノベーションとは何なのか迫っていきたい。

オープンイノベーションの定義

 オープンイノベーションとは、「企業内部と外部のアイデアを組みあわせることで、革新的で新しい価値を作り出す」ことを目的に、ヘンリー・チェスブロー博士が提唱した概念だ。外部の開発力やアイデアを持ち込むことで自社の課題を解決、新しいアイデアを生み出すことを指す。

 この発想の根底には、自社の資源・資産で達成できるイノベーションに限界が近づいてきているという予測がある。

 近年、競争の激化によって研究機関に許された開発期間は年々短くなっており、他社の研究成果を利用することの相乗効果によって、短期間に良い製品の開発につながることから、そのニーズが高まっている。

 長年クローズドイノベーションがビジネスモデルとされてきた日本企業の中にもトヨタ自動車のように、ビジネスモデルに取り入れる企業が増加している。 

オープンイノベーション成功例

 それでは、自社のビジネスモデルにオープンイノベーションを取り入れ、見事に成功している事例をいくつか紹介していく。

LEGO×LEGOユーザー

出典:ideas.lego.com
 デンマークの老舗メーカーのレゴ社はオープンイノベーションの最も成功した事例の一つである。同社は1990年代から業績悪化に苦しんでいたが、主力製品のレゴブロックではなくそれらを組み立てる「ストーリー」の提供に主眼を置くという発想の転換を行ったことで、劇的に業績を回復。2014年には世界一の玩具メーカーとなった。
 
 そして、この再建のカギとなったのが、オープンイノベーションの導入である。自社製品に対するクリエイティブなアイデアを持つファンが多くいることを突き止めた同社は、「LEGO Ideas」というサイトを作り、開発の場をオープンにすることでファンと共創するプロセスを作り上げたのだ。

BMW×クアルコム

出典:www.press.bmwgroup.com
 急速に進む「自動車×IoT」の流れの中で、大手自動車メーカーと他業種の連携は増える傾向にある。自動車にインターネットを取り入れることに対してのノウハウをいち早く取り入れたのがドイツの自動車メーカーBMWである。同社はインターネットに常時接続された自動車「コネクテッドカー」の分野でクルアコム社の力を取り入れたのだ。

 ウェアラブルデバイスやスマートフォンのチップなどを得意とするクルアコムと共同で、車両周辺の情報やカーナビ情報をモニタではなく、メガネを通じて表示するシステム“Augment Vision”を開発した。

ソニー×WiL

出典:qrio.me
 海外のグローバル企業の間では、多くの成功事例が語られるオープンイノベーション。日本国内にも数は少ないがその成功例は存在する。
 
 オープンイノベーションを成功させた日本の企業とはソニーである。同社は日本とシリコンバレーに拠点を置く投資育成会社WiLとの合弁会社Qrioを設立。

 WiLの資金調達力と事業立ち上げなどのノウハウを活かして、これまで行えなかった新製品の開発を行っている。Qrio製品第1号は家のカギをスマホで管理し、鍵の受け渡し、入退室管理などに使用するスマートロックデバイスである。

オープンイノベーションのメリット

既存ネットワーク外の企業の参加

 多くの企業(特に自動車企業)は自社のグループ企業との取引の割合が高い傾向にある。この構造の難点としては、全くの新技術や価値観が取り入れにくいことである。

 近年では、インターネットの発展により世界中の情報が手に入り、さらには消費者行動の変化も顕著であるため、企業にも柔軟な発想や対応が求められる。

 そこで、オープンイノベーションを通してベンチャーなど自社とは全く異なるノウハウや発想を持つ企業と連携をとることができれば、より多様な価値観を取り入れることができる。

新製品開発までのスピードアップ

 新製品開発のプロセスをすべて自社で担うのは非常に時間のかかることである。一つの新製品を開発するのに、数年、長い場合は数十年かかることもある。

 しかし、他社やたの研究機関の研究成果・開発成果を部分的に借用することができれば、新製品の開発にかかる時間をそれだけ、短縮することができるのである。

リスクの低下につながる

 新製品の開発には多大なリスクが伴う。

新サービス・製品に伴うリスク

  • 開発結果が製品化につながる保証がない
  • 製品化しても売れるとは限らない
  • 他社の類似製品に先を越されると、開発半ばで市場を奪われてしまう
 新製品の開発に伴うリスクは上に挙げたようなものである。競争の激化する現代において、これらのリスクをすべて背負うことは時に企業にとって致命傷となりかねない。
 
 しかし、オープンイノベーションを活用することで、新製品の開発期間短縮はもちろん、自社のみでは不可能だった驚くべき新製品を生み出すことも可能になり、研究結果が売上につながるという確証を得やすくなる。

オープンイノベーションのデメリット

技術流出の可能性

 モノや製品と違って技術やアイデアはいくらでもコピー可能だ。それ故、いくら契約を厳しくしたところで貴重な技術やアイデアを盗用されてしまう可能性もある。

 場合によっては訴訟問題などで自社の信用を大きく落とすことにもなる。こうなることを防ぐには、技術やアイデアのどの部分を公開し、どの部分を隠すのかブラックボックスを決めることが重要である。

競争力の低下と競争の激化を招く可能性

 オープンイノベーションの下では、技術がライセンス料の支払いのみで自由に行き来し、差別化要因が少なくなることにつながっている。

 オープンになる技術の割合が高くなっていけば、自社独自の技術は少なくなっていき、他社製品との差別化を図ることが困難になっていく。差別化ができなければ競争優位を気づくこともできなくなるため、各々の企業で競争力が低下し、業界内での競争は激化することに。

自社の長所を見失う可能性

 オープンイノベーションに頼りすぎて、重要な技術を他社から導入し続けると、自社内の研究開発が進まず、自社の長所や特徴が無くなっていく懸念がある。研究開発部門において、「無駄な研究は避ける」、「他社の技術を借用する方が効率的だ」という声が大きくなると、自社独自のイノベーションを興そうというモチベーションは低下してしまう。

 オープンイノベーションで活用できる技術は、基本的にどの企業でも利用は可能であり、差別化ができないことを考えれば、いかに自社の長所、核となる部分が必要かということを強く意識することが各々の企業に求められるのである。


 本来、日本企業は自前主義的な考え方の企業が多く、他社と技術やノウハウを共用することは慣れていない。

 しかし、グローバル化の進展と世界市場にの競争の激化から、日本企業にもオープンイノベーションを取り入れるという変革が求められ始めている。今後、トヨタ自動車を筆頭に日本企業がどのようにオープンイノベーションと向き合っていくのか注目したい。

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