1. 「君の名は。」で2016年もアツかったアニメ業界! 世間に認知された「聖地巡礼」の変遷をたどる

「君の名は。」で2016年もアツかったアニメ業界! 世間に認知された「聖地巡礼」の変遷をたどる

  12月、中国で公開された新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」。公開から約2週間で興行収入が90億円を超え、中国で上映された邦画トップの記録となった。

 中国、日本でも大盛況の「君の名は。」だが、作品の舞台となった場所を巡る「聖地巡礼」も大変賑わっている。多くのメディアで「君の名は。」の聖地巡礼行為が取り上げられているが、聖地巡礼はいつから共通語になったのか? 本記事では、「聖地巡礼」の変遷を辿っていきたい。

流行語大賞トップ10入り:共通認識となった「聖地巡礼」

出典:singo.jiyu.co.jp
 2016年のユーキャン 流行語大賞でトップ10入りを果たした「聖地巡礼」。本来の意味である宗教上での「聖地」は、キリスト教にとってのバチカン市国、イスラム教にとってのメッカだが、流行語となった「聖地巡礼」の聖地とはどんな場所を指すのか。

 「アニメの聖地巡礼」の論文を書いている北海道大学の岡本健氏は、「聖地巡礼」を以下のように定義している。

アニメ聖地巡礼とは、「アニメ作品のロケ地、またはその作品・作者に関連する土地で、且つファンによってその価値が認められている場所を訪ねること」を指し、アニメ聖地巡礼者は、「アニメ聖地巡礼をおこなう者」である

出典:http://hdl.handle.net/2115/34672
 「アニメの聖地巡礼」では、アニメのロケ地だけでなく、作品や作者に関連する土地でファンに価値が認められている場所が「聖地」となる。

 筆者が受講していた大学の授業で、旅行行動とは「確認作業」と同じである、と教授が話していた。あらゆるメディアから創られた「イメージ」や、映像・写真というフィルターを通して見てきたものを、旅行者は無意識のうちに「リアルの観光地」と比較している。聖地巡礼も、ある意味ではアニメ舞台の「確認作業」なのだ。

「おねがい☆ティーチャー」と「らき☆すた」で確立された「聖地巡礼」

出典:sailormoon-official.com
  小説、ドラマ、アニメの舞台となった場所を巡る聖地巡礼は、いつから流行語になるほどの社会現象となったのだろうか?

 実は、特定された聖地巡礼の起源はなく、1990年代の漫画・アニメ「セーラームーン」、1992年にアニメ1期が始まった「天地無用!」では、既に「聖地巡礼」が行われていた。

 セーラームーンが大流行した1990年代、アニメに多く登場した麻布十番のエリアや、セーラーマーズ:火野レイの家のモデルとなった「赤坂 氷川神社」に多くのファンが押し寄せた。今年、4期が放映された「天地無用!」の聖地は岡山県。主人公:柾木天地の祖父が宮司を務める神社のモデルとなった「大老神社」も、聖地巡礼の先駆けとなった場所だ。

20年以上経っても愛されている漫画「めぞん一刻」

 セーラームーンや天地無用! が流行していた時代から更に遡ると、「めぞん一刻」に行き着く。

 めぞん一刻は、1980年から1987年までビッグコミックスピリッツで連載されていたラブコメディ漫画。1986年にアニメ化、映画化。2007年には伊東美咲さん主演で、テレビドラマ化もされていることから、かなり人気を博した漫画であることがわかる。

 めぞん一刻に登場する時計坂駅のモデルとされている「西武鉄道東久留米駅北口」は、2009年に閉鎖。閉鎖前の2008年に行われたスタンプラリーでは1,000人以上が参加しており、「聖地」として確立された場所であることがわかる。

日本漫画のメッカ? :手塚治虫などが住んでいた「トキワ壮」

 本当の「漫画の聖地」を語る上で外せないのが、「トキワ壮」だ。トキワ壮は、東京都豊島区に実在する木造アパート。手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫など、日本を代表する漫画家たちが暮らしていた、まさに「漫画界の聖地」なのだ。

 著名な漫画家を輩出したトキワ壮の名前を借り、2006年に若手漫画家を応援する「トキワ壮プロジェクト」が活動をスタート。同プロジェクトでは、低賃金でアトリエ兼住居を貸しているほかにも、「LIAR GAME」で有名な漫画家・甲斐谷忍氏が定期的にアドバイスをしてくれる住居なども提供している。

 漫画家を志す人や、漫画をこよなく愛する人にとっての「聖地」は、トキワ壮なのだ。

「聖地巡礼」の言葉が浸透し始めた2000年代

出典:www.lucky-ch.com
 雑誌や新聞で「聖地巡礼」という言葉が使われ始めた2000年代。2002年に放映された「おねがい☆ティーチャー」では、アニメの舞台となった長野県大町市の「海ノ口駅」を聖地巡礼をする人が絶えない、という記事が2003年12月に信濃毎日新聞で公開。
 
 2007年には、埼玉県春日部市をモデルにした漫画「らき☆すた」がアニメ化。放映がスタートした同年、産経新聞では「聖地巡礼」が流行していることを報じている。

 登場キャラ:柊姉妹の父が宮司を務める神社のモデルになった「鷲宮神社」は、初詣に訪れた人が17万人増加。訪れた人が描いた高クオリティな絵馬が、ネットでも話題になった。鷲宮神社の最寄り駅、鷲宮駅から見える建物のシャッターには、らき☆すたのイラストが描かれているなど、埼玉県久喜市鷲宮は、アニメを活用した町おこしに精力的なのだ。

 「おねがい☆ティーチャー」や「らき☆すた」の聖地巡礼ついては、2008年に朝日新聞、Fuji Sankei Buisiness、読売新聞、産経新聞といったメディアが報じている。「聖地巡礼」という言葉を世に広めたキッカケを作ったのは、この2つのアニメに可能性が高いのだ。

「聖地巡礼」がアツかった2016年

 「聖地巡礼」が流行語大賞に選ばれた2016年。今まで「聖地巡礼」といえば、「アニメを見る人たちがする」というイメージだったが、そのイメージを覆したのが今年大流行した「君の名は。」や「逃げるは恥だが役に立つ」だ。2016年を代表する映画とドラマの「聖地巡礼」の様子を見ていこう。

「もののけ姫」を超えた「君の名は。」

 上映週が17週を超えた「君の名は。」は、以前として興行収入ランキングトップ10入りをしている。興行収入は200億円を突破。「君の名は。」ブームは、しばらく続きそうだ。

 「君の名は。」の聖地は、東京都、長野県、岐阜県、名古屋県、広島県などと、本州に散らばっている。映画のキービジュアルとなっている上記の写真は、東京都新宿区にある「須賀神社」前の階段が舞台となっている。

 岐阜県は、ヒロイン:宮水三葉が暮らしていた糸守町のモチーフになっているといわれている。「飛騨古川駅」や、登場人物が五平餅を食べていたお店のモデル「味処古川」、主人公:立花瀧が調べものをしていた「飛騨市図書館」。

 いずれの場所も、君の名は。のポスターを貼るなど、その場所が「聖地」であることをアピール。聖地巡礼者は、聖地の画像をSNSにアップをして「聖地巡礼」の拡散をしているのだ。

 その他にも、物語のクライマックスにも登場する糸守湖は、長野県にある「諏訪湖」に似ているとファンの間では話題になっている。また、立花瀧が通う東京の高校は、広島県にある「基町高等学校」といわれており、公立高校とは思えないほどオシャレなデザインになっている。

毎週火曜日は、ムズキュン。「逃げ恥」も聖地巡礼で湧いていた!

出典:www.tbs.co.jp
 ついに最終回を迎えた「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)だが、実は「逃げ恥」は聖地巡礼でも人気を博していたのだ。

 その証拠に、逃げ恥のロケ地であるマンションに、ファンが押し掛けるというマイナスなお知らせがアップされている。

 実は、聖地巡礼は地元住民から厳しい声をもらうことが多いのだ。聖地が住宅地の場合、深夜に聖地巡礼者が訪れて夜中に大声を出して迷惑している……ということは、先ほど紹介した「君の名は。」の聖地でも起きている。聖地巡礼者のマナーが問われ始めているのだ。
出典:www.jhpds.net
 逃げ恥のロケ地で話題となっている場所は、静岡県・伊豆修善寺の温泉旅館「宙 SORA 渡月荘金龍」。新垣結衣が演じる森山みくりと、星野源が演じる津崎平匡が社員旅行と称して2人で泊まった宿だ。

 伊豆市では、ロケ地を背景に“恋ダンス”を踊った動画をネットで公開。聖地巡礼者を歓迎しているようだ。


 以上、聖地巡礼の歴史の変遷を辿ってきた。時代と共に、インターネットが普及し、ますます聖地巡礼しやすくなった近年。筆者がアニメにハマったころ、聖地巡礼をしている人はアニメファンばかりだった。すっかり聖地巡礼が「市民権」を得た今、聖地でのマナーが注目されている

 「聖地巡礼」という言葉が世間的にも認知された今だからこそ、聖地での立ち居振る舞いやネットでの画像投稿の仕方などに気をつけていきたい。


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