1. DeNAキュレーションメディア炎上:南場会長はじめ経営トップの謝罪会見で残った大きな疑問

DeNAキュレーションメディア炎上:南場会長はじめ経営トップの謝罪会見で残った大きな疑問

 DeNAは、「MERY(メリー)」「iemo(イエモ)」「WELQ(ウェルク)」など計10媒体のキュレーションプラットフォームに掲載される記事を、すべて非公開にした。理由は主に2つ。医療情報を扱うWELQでは、専門家の監修を経ず、「肩こりの原因は霊のせい」などとする誤った記事が掲載され、薬機法(旧・薬事法)に反するおそれがあったため。

 もう1つの問題は、著作権侵害のおそれがあることで、これはキュレーションプラットフォーム全体に渡る。「業務マニュアル、ライターへの支持において、他サイトからの転載を支持していると捉えられかねないところがあった」(代表取締役社長、守安功氏)というのが、その理由だ。

モラルなき事業の失墜:守安社長「認識が甘かった」

 記者会見で経緯を説明したDeNAの守安社長。
 DeNAのプラットフォーム事業は、「DeNA Palette」と名付けられ、前述のMERYを運営するペロリおよびiemoを買収して始まった。

 元々は「キュレーターと呼ばれるライターが、独自にページをまとめて公開するサービス」を目指していたが、MERY以外の9サイトでは、記事の6〜9割がDeNAからの発注に基づいて作成されていたのが実態だ。ユーザーが作る“まとめサイト”だったはずが、実際にはDeNA主導で記事が作成されていた。

 こうした問題は、10月ごろ、ネット上でSEO(サーチエンジン最適化)が過剰に行われていると指摘されて発覚。WELQがネット上で炎上し、DeNAはWELQの記事に監修をつけると発表した。

 ただ、この事後対応では騒動が収まらず、DeNAは薬機法に基づき東京都から聴取を受けることになった。記事盗用への批判も相次ぎ、事態を重く見たDeNAは12月1日にMERY以外の9サイトの記事公開停止を発表、12月5日にはMERYも記事の公開停止に追い込まれた。
出典:mery.jp
 合わせて社長である守安氏の役員報酬を、6カ月間、30%減額する処分も発表されている。DeNAは一連の問題を検証する第3者機関を設立。「今回の問題にかかる事実確認、原因究明をお願いする。企業風土やコンプライアンス、組織体制といった背景となる課題も含む」として、10媒体の今後や役員の処分などは、第3者機関の決定に委ねる方針を取る。

 12月7日に開催された記者会見では、一連の問題の経緯が守安氏やDeNA会長の南場智子氏の口から語れた。キュレーションメディアは、ユーザーが自由に記事を投稿できるという成り立ちゆえに、当初から著作権侵害につながるおそれが指摘されていた。こうした事実は、ペロリおよびiemoを買収した際に守安氏らも認識しており、「著作権に対する考え方や、法的なところでリスクが一部あると判断したうえでの買収だった」と振り返っている。

 一方で、ライターに対しては「著作権侵害が起こらないよう、留意してきた」というが、先に挙げたマニュアルでは、記事を転載する際の“手口”とも呼べそうな指示もあった。

 こうしたマニュアルは、WebメディアのBuzzFeed Japanが内部リークを元にスクープし、守安氏ら経営陣はその記事を通じて、初めて存在を知ることになったという。

 ユーザーが自ら著作権を侵害した記事をアップロードしているだけでなく、その指示をDeNA自身が行っていた組織的盗用だったというわけだ。マニュアルに関しては、キュレーション事業を統括していた執行役員の村田マリ氏も「内容を把握していなかったと聞いている」という。
 キュレーションプラットフォームをうたう一方で、記事はDeNAから発注したものが多かった。
 記者会見では、守安氏、南場氏らが経営陣の責任に言及する一方で、詳細については「把握していない」と回答に窮する場面も多かった。記事の中身そのものはもちろん、運営体制まで経営陣が適切に管理できていなかった様子がうかがえる。

 守安氏自身も「MAU、DAUなどの利用者数を伸ばす運営をしていた」としたうえで、「記事の内容に関して、私の知見があるわけではない。どういう記事を作ろうということは、話していなかった」と語っている。媒体の運営が現場に“丸投げ”されており、それを経営側から管理するチェック機能も働いていなかったのだ。

 なぜDeNAが綱渡りのような危うい事業に手を出したのか。背景には、守安氏ら経営陣に「ゲーム以外の新しい事業を作っていかなければらない」という焦りがあったのかもしれない。ソーシャルゲームで急成長したDeNAだが、スマホシフトに乗り遅れ、さらには射幸心をあおりすぎるとコンプガチャに対しての批判が集まり、規制を受ける形となった。「さまざまな新規事業にトライしてきた」という一方で、「期待どおりに成長させることが難しかった」こともあり、「comm」や「Groovy」といった複数のサービスを終了させている。

 業績も、「2012年ぐらいをピークに下がっていた」。回復軌道に乗せるための“柱”と見込んで買収したキュレーション事業だが、成果を急ぎ過ぎるあまり、ずさんな管理体制で運営されていた可能性がある。事業に対する収益性を高く見込み過ぎていたきらいもあり、第3者委員会の決定に従い、運営体制を改めれば、キュレーションメディアは、DeNAにとって“儲からない”事業になってしまうかもしれない。その際に、事業を継続するかどうかも不透明だ。

 記者会見を開き、問題が起こった経緯を説明したDeNAだが、詳細については不明な点も多く残されている。先に挙げたように、マニュアルをいつ、誰が作り、どう運用していたのかという点は明かされていない。メディア事業を統括していたはずの村田氏が、マニュアルの存在を認識していないという点も、役職を考えると不自然だ。買収時にさかのぼり、どのような経緯でDeNAが2社を評価し、50億といわれる資金を出したのかも、改めて振り返る必要がありそうだ。

 なお、村田氏はシンガポール在住だが、「健康上の理由」で問題が発覚してから現時点まで、日本に帰国していないという。守安氏ら経営陣が把握していなかった運営体制の内側を知る人物なだけに、経緯を説明する記者会見の場にも姿を現さなかった点には疑問が残る。

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