1. 不祥事ばかりではない、十人十色な「元プロ野球選手」のセカンドキャリアを追跡

不祥事ばかりではない、十人十色な「元プロ野球選手」のセカンドキャリアを追跡

by TMAB2003
 2016年11月22日に元中日ドラゴンズの種田仁容疑者が道路交通法違反の容疑で逮捕された。種田氏は内装会社の営業を担当していたという。種田氏のような一流選手でも引退後必ずしも野球に携わり続けられるとは限らないのかもしれない。

 そこで、本記事では様々な分野で活躍するプロ野球選手のセカンドキャリアを追う。

セカンドキャリアに不安を抱える選手の増加

 日本野球機構(以下、NPB)は2015年10月に宮崎県で行われた「みやざきフェニックス・リーグ 2015」の中で現役若手プロ野球選手(平均年齢は23.7歳)に対して「セカンドキャリアに関するアンケート」 を実施した。

 本調査は、2015年の調査で9回目を迎えた。アンケートの主な結果は以下の通りである。注目すべきは、「一般企業の会社員」つまり、サラリーマンが引退後の希望進路の上位に位置していることである。

若手選手へのセカンドキャリアに関するアンケートの主な結果

  • 「引退後に不安を感じている選手」は72.7%
  • 不安と感じる内容は「進路」と「収入」で合計約88%
  • 引退して就きたい職業は1位:高校野球の指導者、2位:プロ野球監督・コーチ
  • 引退後の希望進路に昨年7位だった「一般企業の会社員」が3位に

理想通りにはいかないケースが多い

 NPBが2015年に戦力外通告を受けた選手や現役引退をした選手(計127名)への進路調査を行った。結果は、2016年5月の段階のものである。

2015年の戦力外選手及び現役引退選手の進路調査

  • NPBで監督・コーチ契約を結べたのは約8%(11人)
  • 野球関係で最も多かった進路は、NPB関連の職員・スタッフ(35名)
  • 野球以外のセカンドキャリアを選んだ人は約3割(計40人)
 若手選手たちの思い描くセカンドキャリアと実際にセカンドキャリアを歩み始めるのは、大きなギャップがあるのが見て取れる。引退後の希望進路の3位に「一般企業の会社員」がランクインしてることから、若手選手はセカンドキャリアでは安定志向になっているのがわかる。

様々な分野で活躍する「元プロ野球選手」たち

 厳しい現状にあるとはいえ、様々な分野で活躍している元プロ野球選手はいる。そんなプロ野球選手の活躍を紹介していこう。

解説者をはじめ幅広く活躍する:里崎智也

出典:www.chiba-tv.com
 2014年に現役を退いた里崎智也氏。彼は1998年の入団から、15年間千葉ロッテマリーンズ一筋でプレーしてきた。マリーンズで日本一を2回、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック、以下、WBC)で世界一になるなど、チームに貢献してきた。

 そんな彼は現在、主に野球評論家として活動している。その他にも、現役時代の本職のキャッチャーで磨かれた経験を生かし、「捕手里崎智也のビジネス配球術」というビジネス番組のMCを務めていた。

 また、彼は、2010年から千葉商科大学で講演を行なっており、2015年からは同大学の国際教養学部の特命講師に着任するなど、野球から学術的な仕事まで様々な分野で活躍している。

甲子園を目指し高校球児を指導:金森栄治

出典:www.kanazawa-ghs.jp
 これまでは、プロ野球経験者は高校・大学の指導資格を取得するために、2年以上の学校勤務が必要との規定があった。

 しかし、2014年から規制が緩和され、研修を修了・認定されれば、指導することが可能になった。新制度のもと、初の高校野球監督が金森栄治氏だ。

 彼は現役時代、西武ライオンズ、阪神タイガース、東京ヤクルトスワローズに所属していた。引退後はコーチとして打撃指導を行い、2016年シーズンでパ・リーグの首位打者になった千葉ロッテマリーンズの角中勝也外野手を育てた実績もある。

 そんな彼は、2014年から彼の故郷である石川県金沢市にある金沢学院高等学校(正式名称)の野球部の監督に就任している。2015年夏の県大会では、シード校入りを果たし、ベスト8に進出を果たした。プロ野球界で培ってきたスキルを存分に活かし、未来のプロ野球選手を育成している。

人気うどん店を経営する元巨人軍投手:條辺剛

出典:www.johbe-udon.com
 現在、埼玉県ふじみ野市でうどん店を経営し、成功を収めているのが元読売ジャイアンツの條辺剛氏である。

 1999年にドラフト5位で読売ジャイアンツ入団し、2002年には47試合に登板し、チームの日本一に貢献。しかし、故障が原因で24歳という早さでプロ野球界を引退した。

 引退後は、巨人軍の先輩で同郷の水野雄仁氏から紹介を受け、宮崎県内のうどん店に勤務した。その経験がきっかけとなり、うどんの本場である香川県の名店で修行を積んだ。

 その修行を経て、2008年に埼玉県ふじみ野市で『讃岐うどん 條辺』を開店した。暖簾に書いてある「條辺」という文字は、巨人入団時の監督であった長嶋茂雄氏の直筆のものである。修行で培った経験をもとに、うどんを作る際も粉や塩水の分量や濃度も天候によって変えるほどのこだわりである。現役時代のファンも店を訪れるなど人気店になっている。

高校時代の簿記がきっかけで公認会計士へ:奥村武博

出典:www.kentei.ne.jp
 公認会計士は、毎年の合格率が8〜10%程度である。そんな難関な試験をクリアし、公認会計士として働くのが元阪神タイガースの奥村武博氏である。

 彼は、1997年にドラフト6位で阪神タイガースに入団。一軍での出番はなく、2002年に引退した。

 簿記との出会いは、彼の出身校である岐阜県立土岐商業高校在籍中。高校在籍中に日商簿記2級を取得していたという経歴があった。引退後、簿記という得意分野を生かし、2004年から公認会計士を目指した。会社員として働きながらの猛勉強が実り、2013年に晴れて試験に合格し、2014年からは監査法人で会計監査を仕事としている。

 学生時代の本業と言ってもいい「学業」がプロ野球選手のセカンドキャリアを支えてくれるということを証明している。

セカンドキャリア支援が大きな課題

出典:nextfield.ecareer.ne.jp
 12球団の現役日本人選手で構成される一般社団法人日本プロ野球選手会(以下、選手会)が、転職応援サイトなどを運営するSBヒューマンキャピタル株式会社と転職応援サイトの「イーキャリアNEXTFIELD」を2014年から始めた。

 今までは選手に就職活動のノウハウがないため、一般企業に就職しづらい状態にあったこと。また、野球で培ってきた才能を生かせる人材を雇いたいと考えていた企業もあったが、両者を引き合わせる場がなかったこと。以上の二つの要因から、引退後の選手の一般企業への就職が少ない状態にあった。

 「イーキャリアNEXTFIELD」は、引退後の選手がいつでも求人情報を検索することができる。気になる求人があれば就職まで支援する。逆に、求人募集企業は引退選手のレジュメを閲覧することができ、スカウトしたい選手がいれば、採用までサポートを受けることができる。

 ようやく、企業側と選手の間に架け橋がかかり、引退後の選手が企業でのセカンドキャリアを歩みやすくなった。最近では、「イーキャリアNEXTFIELD」以外にもプロ野球選手のセカンドキャリアを支援する企業が増えてきている。選手会も2015年から若手選手を集めて、引退後のキャリアの準備を行う研修会を行っている。

クリケット競技にセカンドチャンスが?

出典:cricket.or.jp
 イギリス発祥のスポーツで野球の原型とも言われている「クリケット」。引退後のプロ野球選手のセカンドキャリアとして、クリケットが注目を集めている。クリケットは、日本では浸透していないが、世界の競技人口がサッカーに次ぐ2位と世界的に人気のスポーツである。

 なぜ、クリケットがセカンドキャリアとして注目が集まっているのか。クリケットはバットで木の球を打つなど野球との共通点も多く、プロ野球選手が活躍できる可能性を秘めている。そのため、セカンドキャリアとして注目されている。

 その影響もあってか、2016年11月に栃木県で開催中のクリケットの2016年男子東アジアカップをプロ野球選手会の森忠仁事務局長が視察した。今後、プロ野球選手がクリケット界を盛り上げるかもしれない。


 プロ野球選手の多くは社会人の経験を経ずに、球界へ進んでいく。そのため、引退後に社会のことを知らないまま、野球以外の仕事に就いて失敗することも少なくない。もはや、セカンドキャリアだけではなく、サードキャリアまで含めた視野に入れた職業選択が求められている現状である。

 どんなに活躍した選手でも人生は引退後の方が長く、野球に携わり続けられる選手はほんの一握りである。現在、引退後の彼らが野球以外で活躍できる場の提供が進められている。元プロ野球選手の活躍に注目である。

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