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南米チリでシェアNO.1を獲得した日本のMVNOブランド「FREETEL」を知る

井上 晃

2016/11/23(最終更新日:2016/11/23)


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 最近、通信料金が割安になる「格安SIM」が話題だ。今回は、タレント・佐々木希のテレビCM「ニクキュー」でおなじみの格安SIMブランド「FREETEL(フリーテル)」に焦点を当てつつ、その運営会社であるプラスワン・マーケティングについても解説していく。

 そもそも格安SIMは、「MVNO(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれる企業が大手通信キャリアからネットワークを借りて提供する通信サービスの総称だ。訴求点は、大手通信キャリアと比べて月額基本料が圧倒的に低いこと。最近はテレビCMを打つサービスも増えてきたことで、着実に知名度は上がってきている。

 こうしたMVNOの一つに「FREETEL」ブランドでサービス展開するプラスワン・マーケティングがある。同社は「メーカー」という立場を貫き、同ブランドでオリジナル端末を展開している点がユニークだ。また、海外市場にも進出しており、「SAMURAI(サムライ)」シリーズなど、「和」をテーマにしたネーミングが目立つ。
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 最近の動向としては、同社は10月6日「FREETEL World 2016 Fall/Winter」と称した発表会を開催。そして、間を開けずに11月21日「FREETEL World 2016 Fall / Winter 2」を開き、両日合わせ、スマホやモバイルルーターなど今季発売のモデル4機種が発表されており、どれもSIMフリーで提供される。また、新サービスも多く告知された。
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※上記写真は11月21日に発表された「Priori 4」。

  また、11月21日の発表会には、CMキャラクターの佐々木希のほか、キャイーン・天野ひろゆき、お笑いコンビ・どぶろっくが登壇。まるで、大手キャリアの発表会のような華やかさだった。これは、MVNOの発表会としては異色であり、同社が戦略的に“単なる格安SIMキャリア”を脱しようとしているタイミングにあるとも解釈できる。
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運営会社プラスワン・マーケティングとは

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 プラスワン・マーケティングが設立されたのは、2012年の10月。当初は低価格帯のSIMフリースマホ「freetel Priori」などを開発・販売していた。2014年の秋からは「freetel mobile」として、MVNO事業にも参入している。

 「SIMフリー元年」とも言われた2015年には、次々と挑戦的な新端末や通信サービスを発表するようになった。同年、増田薫社長(上記写真)が、「10年後に世界一を目指す」と明言したこともあり、その後は怒涛の勢いで事業規模を拡大している。2016年11月22日現在、FREETELの公式サイトの表記に従えば、資本金は62.06億円だ(資本準備金を含む)。

 増田氏は元々、デルで携帯電話事業に携わっていた経歴を持つ人物である。会場では自ら先頭を走り回り、報道陣に対しても腰の低さを見せるなど、いわゆる“営業力”の高さが印象的。

 また、同氏は「お客様視点」を重視しており、「儲ける製品を作るメーカーはダメだ」と言い切る歯切れの良さもある。その熱意あふれる姿勢で、モバイル業界ではいつしか名物社長の一人となった。

注目すべき3つの施策

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 さて、今秋冬に発表されたFREETELの施策で注目したいものが3つある。それは、(1)通話定額アプリの解放、(2)ゼロ・レーティングの拡大、(3)渡航者へのトライアルだ。

(1)通話定額アプリの解放

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 まず、10月6日の発表会では、通話定額オプションとして提供している電話かけ放題アプリのアップデートが予告された。サービス名は「だれでもカケホ」。11月下旬から提供開始となる。「FREETEL SIM」のユーザー以外でも利用できる点が特徴だ。

 「音声通話定額サービス」は、格安SIMのトレンドである。しかし、こういったオプションを未だに用意していない格安SIMが存在するのも事実だ。「だれでもカケホ」が提供されるようになれば、“通話定額の有無で格安SIMを選ぶ”という従来の価値基準が変わるに違いない。

(2)ゼロ・レーティングの拡大

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 この「ゼロ・レーティング」とは、特定アプリの通信料を無料とすることだ。要するに“Facebookのタイムラインを見ても通信量は消費しません”などのサービスがこれに当たる。LINEモバイルが用いる「カウントフリー」という言葉で表現されることも多い。

 FREETELでは、元々「LINE」「App Store」「WeChat」「WathsApp」「Pokemon Go」などのアプリがゼロ・レーティングの対象となっていた。10月6日の発表では、ここに「Twitter」「Facebook」「Messenger」「Instagram」も追加された。

 この時点では、「Twitter」「Facebook」「Messenger」が定額3GB以上のプランのみ対象。「Instagram」が定額5GB以上のプランのみ対象とされていた。しかし、11月21日の発表会で、アップデートが掛かり、「Instagram」も定額3GB以上のプランで適応されるようになった。

 長期的な視点で見ると、ゼロ・レーティングのシステムには問題も確かにある。しかし、短期的なユーザーメリットがあることも事実だ。賛否両論あろうとも、SNSを多用する消費者の目には、魅力的に映ることは間違いない。

(3)渡航者へのトライアル

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 来日旅行者に対する実証実験が行われていた。まず、日本航空とともに行った実証実験は、中国からの訪日旅行者に対するもの。北京・上海発便の機内で同社SIMを無償配布し、「WeChatペイメント(※)」からチャージすることで、日本国内における通信手段を確保できるようにした。もちろん、「WeChat」のパケットは無料だ。

 被験者に対して行われたアンケートの結果については、「次回も使いたい」と答えた割合が54%となっている。

※「WeChat」は中国最大のSNSであり、月間アクティブユーザー数は8億人。WeChatペイメントによるモバイル決済は4億人が利用しているという。

 さらに、フランスからの観光客向けにもトライアルを実施。こちらのパートナーは、JTBグローバルマーケティング&トラベルだ。内容は、宿泊先のホテルでSIMカード入りの端末を提供し、帰国時まで自由に使ってもらうというもの。実証実験は12月9日まで行われているため、詳細な数値はまだ出ていないが、いまのところアンケートには高評価な意見の割合が多いという。

 日本政府観光局が公表する統計データを参照すると、2016年は毎月50万人程度の中国国籍の人と、1万人以上のフランス国籍の人が来日していた。変動はあるとはいえ、インバウンドを狙った通信サービスは、やはりビジネスチャンスが大きい。

チリではシェア1位を獲得したという

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  また、11月21日の発表会では、FREETELのスマホがチリでシェア1位を獲得したことが明かされた。増田氏は、その理由について「日本ブランドを押し出したことが功を制した」との旨を述べる。

 同社は今後も中南米や東南アジアを中心に海外展開への注力を続けるという。視野が“外”に向いているという点で、他MVNOと一線を画すFREETEL。本当に世界一になれるかどうかは現時点では未知数だが、ビジネスを展開するスピードは、確かに目を見張るものがある。

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