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西田宗千佳のトレンドノート:4Kだけじゃない! いまテレビ買うなら「HDR」に注目すべき理由

西田宗千佳

2017/10/05(最終更新日:2017/10/05)


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 テレビを買うなら「4K」、はそろそろ当たり前になりつつあるが、もうひとつ重要なファクターになってきたのが「HDR」という言葉である。

 現在、4Kテレビのラインナップでも中級以上のものに組み込まれるようになってきたが、筆者は「いまテレビを買うなら、絶対にHDRを考慮に入れて買うべき」と断言する。4Kと同等以上に映像の世界を変える「HDR」について、改めて解説してみたい。

夏の日差しや夕焼けを再現できるHDRの実力

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 HDRとは「ハイダイナミックレンジ」の略。要は、映像の明るいところから暗いところまでの「幅」が広がる、と思えばいい。

 カメラに興味がある人ならば、HDRという言葉はずいぶん前から知っているはずだ。今は、「iPhone」をはじめとしたスマートフォンのカメラにも当たり前のように搭載されるようになっている。

 だが、スマートフォンなどのカメラにおける「HDR」と、テレビにおける「HDR」の意味は異なる。

 写真などでは、表現できる色の幅が決まっている。その範囲では、夏の日差しの強さや日陰の微妙な暗さは、つぶれてしまって表現しづらい。そこで、設定を変えて撮影を行い、画像処理によって「より見た目に近い形」にしたものがカメラのHDRだ。要は、狭いダイナミックレンジの中で擬似的に表現したもので、情報の幅が広がるわけではない。

 だがテレビのHDRは違う。テレビで表現できる輝度が上がってきたため、暗い部分と明るい部分の間をしっかりと表現し「明暗のダイナミックレンジの表現の幅を広げた」のが、テレビのHDRである。

 カメラのHDR写真の場合、夏の日差しは明るいだけだが、テレビのHDRでは文字通り「刺すような日差し」に感じられる。暗闇にある松明は、これまでのテレビが苦手としてきた世界だった。松明だけを明るくすると周りが見えず、周りを明るくすると松明の明るさを感じられなくなってしまった。しかしHDRならば、より実情にあった表現になる。

 変わるのは明暗だけではない。明暗の表現の幅が広がると、今まではつぶれてしまって表現できなかった「色」が見えてくる。全体の色彩がはっきりとしてくるのだ。夕焼けのように、明るさと微妙な色合いが重要な風景では特に有効だ。

 そもそも、ここ数年のテレビは、バックライト技術の向上により、発色の向上を売り物にしていた。東芝・パナソニック・ソニーなどの製品は、内部でHDR的な要素を取り入れていたのだが、本格的にHDRが導入されたことで、より色表現の豊かな製品になっている。
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 例えばソニーはこの秋、HDR表現にこだわったハイエンドテレビ「BRAVIA Z9D」シリーズ(上写真)を発売した。Z9Dでは、バックライトを細かく制御する「バックライト マスタードライブ」という技術を投入することで、過去の液晶テレビにはないほどの豊かな色表現を実現している。そのクオリティは、うるさ方のAV評論家が皆揃って絶賛するほどだ。ただし、価格は65型で70万円、75型で100万円とかなり高い。

 お手頃な価格のHDRテレビも出始めている。シャープの「AQUOS US40」シリーズは、BRAVIA Z9Dをはじめとした各社のフラッグシップ製品ほど画質は良くない。しかし、45型の「45US40」では、実売価格で18万円を切っている。45型から49型の製品であれば、4KかつHDR対応でも20万円を切るようになっているので、手を出しやすいだろう。

HDRには「対応ソフト」が必要、実はおすすめはゲーム?

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 ただし、HDRの映像を楽しむにはひとつ問題がある。

 きちんと「HDR対応の映像」を用意しないといけない、ということだ。現状、放送ではHDR対応が行われてない。2Kの映像は4Kにアップコンバートすることで画質向上を感じられる場合もあるが、HDRで記録されていない映像を無理矢理HDRにしても、さほど大きな効果は出ない。

 HDR作品を楽しむ方法は3つある。ひとつはネット配信。「Netflix」や「ひかりTV」などの映像配信では、HDR対応の作品も増えてきている。特にNetflixは積極的で、今後のオリジナル作品の多くが「4K+HDR」で制作されるという。あのベストセラー小説をドラマ化した「火花」もHDRで制作され、配信されている。もともと映画的でしっとりとした画作りの作品なのだが、HDRではその傾向がより強まる。
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 HDRを楽しむもうひとつの方法が「Ultra HD Blu-ray(UHD BD)」を使うことだ。UHD BDは4KとHDRに対応したブルーレイ・ディスクで、従来のブルーレイの上位規格にあたる。日本では今年の夏頃から対応ソフトとプレイヤーの販売がスタートした。非常に画質が良く、ネット配信を超えるクオリティが維持されているし、なにより「最高のクオリティのソフトを所有できる」のが大きい。一方、対応プレイヤーとソフトを買わねばならないのは厳しい。UHD BDプレイヤーはパナソニックが製品化している他、11月24日に発売されるゲーム機「Xbox One S」もUHD BDに対応している。

 そして3つ目がゲーム。実は筆者的には、ゲームが一番「HDRらしさ」を存分に楽しめる、おすすめの楽しみ方でもある。HDRでは撮影段階から「HDRで最終的に見る」ことを考え、映像を制作する必要がある。

 現在は、残念ながらHDR対応テレビがまだ普及しておらず、結果的に、HDR制作される作品も多くはない。だが、ゲームの場合には、ソフトを若干書き換えるだけでHDRに対応できる。撮影からやり直しになる映画に比べると、HDR対応にかかるコストが小さい。そのため、今後は多くのゲームがHDRに対応するとみられている。
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 また、映像の特質的にも、HDRの「コクのある色合い」は、ゲームに向いているようだ。「Xbox One S」(上写真)や「PlayStation 4 Pro」といった、最新の「上位モデル」的な機種はHDRに対応しているのだが、それだけでなく、解像度は2Kに限定されるものの、これまでに出荷されたすべての「PlayStation 4(PS4)」が、ソフトウエアアップデートにてHDRに対応している。だから、すでにPS4を持っていれば、テレビをHDR対応にするだけで、あまりコストをかけずにHDRの映像を楽しめる。

 今後、HDRはスマートフォンやPC用ディスプレイにも広がる、とみられているが、今年はまだ「テレビ」のものである。もし今年テレビを買い換えるつもりなら、ぜひ4Kだけでなく「HDR」も視野に入れてほしい。

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