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勝者は誰だ? NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク大手3キャリアの上半期決算レポート

石野純也

2016/11/14(最終更新日:2016/11/14)


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 大手3キャリアの上期決算が出揃った。NTTドコモとKDDIはは増収増益、ソフトバンクは為替の影響で売上高こそ減ってはいるものの、営業利益は増益と業績は好調だ。この結果を受け、NTTドコモに関しては、通期での業績見通しを上方修正している。

 それぞれの会社の売上高、営業利益は次の通り。NTTドコモは売上高2兆2,883億円で、営業利益が5,856億円。KDDIは売上高2兆3,016億円に対し、営業利益が5,326億円となる。これに対し、ソフトバンクはSprintやYahoo!Japanなど、国内通信以外の比率も高く、純粋には比べられないが、売上高が4兆2,718億円で、営業利益が6,539億円となった。

大手3キャリアの上期決算の状況

NTTドコモ:上期は増収増益

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KDDI:増収増益と業績好調

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ソフトバンク:為替の影響で売上高減少

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 順風満帆に見えるキャリア3社の業績だが、これは利用者1人あたりからの売上である「ARPU」と呼ばれる数値が上がっているためだ。

 その背景には、ユーザーのスマホへの移行があり、これによってデータ通信から得られる収益が増加している。また、NTTドコモやソフトバンクについては、NTT東西からネットワークを借り、それぞれ「ドコモ光」や「ソフトバンク光」のサービスを開始している。この利用者が増えていることも、業績に貢献した。

 一方で端末販売の減少などに伴い、コストも下がっており、営業利益を押し上げている。本来であれば端末販売が減れば、業績に悪影響を及ぼしそうだが、短期的には増益の効果がある。そのカラクリを、ソフトバンクグループの代表取締役兼CEOの孫正義氏は、次のように説明する。

 「我々は端末販売では、ほぼ1円ももうかっていない。むしろ、赤字で(端末販売を)行っている状況だ。回線が減ると我々の収益には決定的な打撃が出るが、回線が減らず、端末の入れ替わり台数が減るというのは、経営的にそんなに大きな打撃があるわけではない。台数が減ることで、一番の打撃を受けるのは国内でハードを作っている会社で、国産スマホメーカーはもう壊滅しかけている」(孫正義氏)

 端末の販売が減少したのは、総務省が4月に施行した「ガイドライン」の影響が大きい。このガイドラインにより、実質0円やそれを大きく下回る価格が禁止され、見かけ上、端末は値上がりした。これによって、買い控えが発生しており、KDDIやソフトバンクの端末販売台数は減少傾向にある。
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 KDDIやソフトバンクは端末の販売数が減少傾向で、冬モデルのラインナップも少な目になった。
 ガイドラインの影響が強く出ているのは、番号ポータビリティでの端末購入で、元々機種変更需要の大きかったNTTドコモについては、前年と大きく変わっていない状況だ。NTTドコモの代表取締役社長・吉澤和弘氏も、「(ガイドラインの影響は)あまり出ていない」と語っているが、同社も端末への割引は抑えており、コストは削減されている。

 ただ、総務省からは端末販売を適正化した一方で、通信費の値下げも迫られている。端末販売の減少で利益を押し上げたといっても、素直に喜べないのが実情と言えるだろう。また、ガイドラインの影響もあり、MVNOへの流出も続いている。KDDI代表取締役社長・田中孝司氏は「契約者については、MVNOへの流出が起こり、現実的にはマイナス傾向」と語っている。

 通信キャリアの収益は、ユーザー数とARPUの掛け算で決まる。そのため、いかにユーザーを囲い込み、MVNOへの流出を減らせるかによって、今後の業績も決まってくる。各社が既存ユーザーの優遇を手厚くしているのも、そのためだ。KDDIやソフトバンクについては、UQ mobileやワイモバイルなどのサブブランドも充実させており、競争の軸が変わろうとしていることが今回の決算でうかがえた。

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