1. 日本は働きにくい環境? 「ビジネスのしやすさ」ランキングから考える1位ニュージーランドとの違い

日本は働きにくい環境? 「ビジネスのしやすさ」ランキングから考える1位ニュージーランドとの違い

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 10月25日、世界銀行から2017年度「ビジネスのしやすさ」指標が発表された。これは、その国で「ビジネスをする環境がどれだけ整っているか」ということを示す指標である。

 そして、この指標によると、「最もビジネスのしやすい国」はニュージーランドであるらしい。どうしても「羊」のイメージばかりが先行してしまうが、ビジネスをする仕組みも非常に整っているようである。

 一方で日本の「ビジネスのしやすさ」は190カ国中34番目であり、GDP規模の割にかなり低い順位となっている。ビジネスに関しては閉塞感があるということだろう。ここでは、「ビジネスのしやすさ」という指標を通して、ニュージーランドと日本の現状を見ていきたい。

「ビジネスのしやすさ」という概念とは?

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 「ビジネスのしやすさ」とは世界銀行が発行するビジネス環境に関する年次報告書「Doing Business」のなかで発表される指数である。この報告書では、毎年、約190カ国のビジネス活動における規制や制度的環境を比較評価し、各国のビジネスのしやすさをランキング化している。

 「ビジネスのしやすさ」という指標を決定するのは次の要因である。

ビジネスのしやすさ

  • 納税のしやすさ(Paying taxes)
  • 事業の始め易さ(Starting a business)
  • 建設許可(Dealing with construction permits)
  • 資金調達(Getting credit)
  • 契約執行(Enforcing contracts)
  • 少数株主の保護(Protecting minority investors)
  • 不動産登記(Registering property)
  • 海外貿易のしやすさ(Trading across borders)
  • 電力事情(Getting electricity)
 これら10の要因の評価を総合して各国の「ビジネスのしやすさ」が決定される。以下は29位までの順位を載せた表である。日本は34位で残念ながらこの表には入っていない。
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 「ビジネスのしやすさ」において、数年間1位の座を守ってきたのはシンガポールだが、2017年度の調査ではニュージーランドが「最もビジネスのしやすい国」に選ばれた。ここからは、「最もビジネスのしやすい国」であるニュージーランドの実力と「ビジネスのしやすさ」において順位を下げ続ける日本の現状について見ていきたい。

起業しやすい国:ニュージーランド 

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 なぜニュージーランドがなぜ「最もビジネスのしやすい国」なのか、その秘密に迫りたい。

ニュージーランドの現状

 まずはニュージーランドという国について知ってみよう。

ニュージーランドの基本データ

  • GDP成長率3.24(%)[推定値][2014年]
  • 1人当たりGDP43,837(ドル)[推定値][2014年]
  • GDP総額198.12(10億ドル)[推定値][2014年]
  • 失業率5.70(%)[2014年]
 そして「ビジネスのしやすさ」の内訳となっている各指標の順位が以下の通りである。

ニュージーランドの「ビジネスのしやすさ」内訳

  • 納税のしやすさ(Paying taxes):11位
  • 事業の始めやすさ(Starting a business):1位
  • 建設許可(Dealing with construction permits):1位
  • 資金調達(Getting credit):1位
  • 契約執行(Enforcing contracts):13位
  • 少数株主の保護(Protecting minority investors):1位
  • 不動産登記(Registering property):1位
  • 海外貿易のしやすさ(Trading across borders):55位
  • 電力事情(Getting electricity):34位
  • 破綻処理(Resolving insolvency):34位

ニュージーランドの評価される点とその理由

 事業の始めやすさ、建設許可、資金調達、少数株主の保護、不動産登記の5部門で1位を獲得しているニュージーランドであるが、中でも評価されているのが「事業の始めやすさ」と「納税」の部門である。

 「事業の始めやすさ」については、1回の手続きで済み、起業が1日でできるニュージーランドがトップに立った。同国ではインターネットで登録申請するだけで開業できる。手数料は163.55ニュージーランドドル(約1万3,000円)。最低資本金は定められていない。

 「納税のしやすさ」の部門に関しては前年より順位を2つあげ、これがニュージーランドの順位を1位に押し上げたと考えられている。

 しかし、この点に関しては、資金洗浄防止の観点から懸念の声も上がっている。同国は今年、タックスヘイブン(租税回避地)に関する内部文書「パナマ文書」問題で、課税逃れの有力拠点として利用されていたことが明らかになった。その「納税のしやすさ」から違法な資金の流入先になっていることを否定できない。

破産処理だけは得意な国:日本

それでは我々、日本のデータを見ていきたい。

日本の現状

日本の基本データ

  • GDP成長率マイナス0.06(%)[推定値][2014年]
  • 1人当たりGDP36,332(ドル)[推定値][2014年]
  • GDP総額4,616.34(10億ドル)[推定値][2014年]
  • 失業率3.58(%)[2014年]
 そして「ビジネスのしやすさ」の内訳となっている各指標の順位が以下の通りである。

日本の「ビジネスのしやすさ」内訳

  • 納税のしやすさ(Paying taxes):70位
  • 事業の始めやすさ(Starting a business):89位
  • 建設許可(Dealing with construction permits):60位
  • 資金調達(Getting credit):82位
  • 契約執行(Enforcing contracts):48位
  • 少数株主の保護(Protecting minority investors):53位
  • 不動産登記(Registering property):49位
  • 海外貿易のしやすさ(Trading across borders):49位
  • 電力供給(Getting electricity):15位
  • 破綻処理(Resolving insolvency):2位

ビジネスのしにくい国:日本

 日本は「事業のはじめやすさ」が89位と大きく後れを取った。日銀の大規模な金融緩和が続くにもかかわらず「資金調達」は82位で「納税のしやすさ」は70位、「建設許可」も60位である。

 「最もビジネスのしやすい国」であるニュージーランドと比較すると、やはり「納税のしやすさ」「事業の始めやすさ」「資金調達」といった点でかなり劣る。今後、日本がより「ビジネスのしやすい国」になっていくには、規制緩和や法人税制改革、行政手続きの簡素化などが求められそうだ。

 一方で、「破綻処理」は2位と健闘している。処理手続のスピード、コスト、債権者の手続への参加などが評価されている証拠である。JALが経営破綻から立ち直ったのは記憶に新しいし、実は牛丼チェーンである「吉野家」も実は1980年一度経営破綻している。

 去年32位という結果からさらに2ランク落とし、安倍政権の掲げる「2020年までに先進国で3位」という目標からは遠ざかる結果となった。日本以外の世界のGDP大国の中で見ても、アメリカ:8位、中国:78位、ドイツ:17位、イギリス:7位となっている。世界GDPトップ5のなかで、34位の日本を下回るのは中国だけなのだ。 

「ビジネスがしやすい」=「職がある」なのか

 確かに「ビジネスのしやすさ」において、日本とニュージーランドの間には大きな差をつけられている。

 しかし、この指数はビジネスがしやすい「仕組みが整っている」ということを示すものである。「ビジネスのしやすさ」の順位が高いからといって「職がある」というわけでない。

ニュージーランドと日本の失業率比較(2014年)

  • ニュージーランド:5.70%
  • 日本:3.58%
 比較してもらえればわかるように、ニュージーランドのほうが日本より失業率が高い。

 加えて、ニュージーランドは「破綻処理」が34位となっているのに対し、日本は2位という評価を受けている。これは、日本の方が破綻した際の処理が適切で、破綻した後でも再起しやすいということである。


 今の日本のビジネスには、ニュージーランドに比べれば閉塞感があることは間違いないだろう。しかし、失業率の低さや破綻処理の優秀さから、日本のビジネス界の懐の深さがうかがい知れるということも確かである。「ビジネスのしやすさ」という指標を悲観視し、過敏に気にするのは早計なのかもしれない。

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