1. 「夢の原子炉」もんじゅの失敗:それでも核燃料サイクルを進める日本

「夢の原子炉」もんじゅの失敗:それでも核燃料サイクルを進める日本

出典:enformable.com
 発電に用いた燃料以上の燃料を生み出す高速原子炉「もんじゅ」は、夢の原子炉になるはずだった。だが、度重なる事故でもんじゅの安全性を指摘されて久しい。

 ついに今年になり、もんじゅの廃炉を含めた抜本的な方針転換をする声明を政府が発表した。文字通り“夢”のまま終わってしまったもんじゅ。本記事では、もんじゅ失敗の要因、これからの日本の原子力発電を探っていきたい。

燃料を増やし続ける夢の原子炉

出典:www.cnic.jp
 高速増殖炉が危険だ、というニュースは最近になってますます多くなってきているが、いわゆる原発と何が違い、何が危険なのか理解している人は少ないかもしれない。ここでは、普通の原発と高速増殖炉の違いを解説していこう。

いわゆる原発は「軽水炉」

 世界的に採用されている原発は軽水炉である。その中でもいくつかの分類わけがされるのだが、高速増殖炉と比較する上で必要な情報を紹介しよう。
出典:www.kepco.co.jp
 原子力発電では火力発電と同じように、水を蒸発させて水蒸気によってタービンを回すことにより、電力を発生させる。軽水炉では熱エネルギーを作るために、濃縮ウランの核分裂から生じる熱を利用する。

 核爆弾ではここでの熱エネルギーをいかに大きなパワーにするかということが重要だが、原子力発電では逆に核分裂を制御することが重要になる。そこで核分裂で生じる高速中性子の速度を落とすために、減速材が使われる。軽水炉で使われているのはその名の通り軽水だ。

 同時に軽水は原子炉の熱を取り出すための冷却材としての役割も果たす。原子炉の熱が上がり続けると炉心融解(メルトダウン)が起き、最悪の場合原子炉が爆発する恐れがある。

一般的な原発「軽水炉」の仕組み

  • 燃料にウランを使用
  • 減速材・冷却材に軽水を使用

燃料を増やし続ける「高速増殖炉」

 高速増殖炉も電力を生み出す仕組みも、水蒸気を発生させてタービンを回すところは同じである。違うのは、熱エネルギーを生み出す過程、使われている減速材だ。
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 核分裂に使われる燃料には、軽水炉で生成された核廃棄物を再処理したウランとプルトニウムの混合物MOX燃料が使われている。使われるウランは、軽水炉で使われているような核分裂を起こせるウラン235と、エネルギーを生み出さない劣化ウランのウラン238。ウラン238がMOX燃料の含有量のほとんどを占めており、高速増殖炉は劣化ウランの有効活用という点で期待されていた。

 プルトニウムによる核分裂で熱エネルギーを発生させるのだが、炉心の周辺を劣化ウランで囲み、核分裂で生じた高速中性子を劣化ウランに衝突させることで、プルトニウムを増殖させることができる。このように理論上は燃料を生み出し続けることができることが、夢の原子炉と呼ばれる所以となっている。

 軽水炉では高速中性子を減速させるために減速材を用いるが、高速増殖炉では高速中性子を利用するため、減速材を必要としない。だが、冷却材を用いないと炉心融解してしまうので、中性子を減速させない金属ナトリウムのような液体金属を使用する。

夢の原子炉「高速増殖炉」の仕組み

  • 燃料はMOX燃料(ウランとプルトニウム)を使い、プルトニウムを増殖
  • 減速材は使わず、冷却材に金属ナトリウム

高速増殖炉のリスクは大き過ぎる

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 今となっては、原発全体に対する軽水炉の割合が最も高くなっているが、もともと開発が先に始められたのは高速増殖原子炉だ。その歴史は1951年のアメリカの高速増殖炉実験炉、EBR-1まで遡る。だが、今となっては高速増殖炉を運用している国は存在しない。開発を進めている国さえ、フランスとロシアの2国にとどまっている。

取り扱い困難な金属ナトリウム

 前述したように高速増殖炉では冷却材として金属ナトリウムを使用するのだが、取り扱いが非常に困難な物質なのである。まず、金属ナトリウムは空気や水、コンンクリートに触れると大きな爆発を引き起こす。そのため、金属ナトリウムを使用する室内には窒素ガスを充満させるため、人が容易に出入りすることができない。

 また、高温であるために、制御することが難しい。ナトリウムが漏れコンクリート接触させないために、床に鉄板を貼るのだが、もんじゅのナトリウム漏洩事故ではその鉄板さえとかしてしまい、爆発事故を起こす手前まで深刻な状況となった。

原爆の材料プルトニウム

 高速増殖炉にしようされる燃料であるプルトニウムも扱いが非常に難しい。わずか1gのプルトニウムだけで数百万人を殺傷することができるほどの猛毒であり、原爆の材料になっている。長崎原爆のプルトニウム含有量が5kgだったことを考えると、もんじゅの原子炉で使われているプルトニウムが1.4tというのは驚異的な数字だ。

  プルトニウムは原発の燃料になるが、核のゴミにもなってしまう。もんじゅでは核燃料サイクルの一環として、プルトニウムを再利用し続けることが期待された。だが、もんじゅが廃炉に追い込まれてしまった今、プルトニウムを処理する施設は存在しない。また、もんじゅの発電のためにMOX燃料を軽水炉を採用している発電所の廃棄物から作り続けていたため、その処理方法にも課題を残している。

もんじゅ廃炉、それでも続ける核燃料サイクルは不安だらけ

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 高速増殖炉もんじゅ。1967年から開発が開始され、1995年に発電を開始した原発だ。だが、運用からわずか4カ月足らずでナトリウム漏洩事故を起こし、15年以上もの対策期間を取らざるを得なくなった。2010年に発電が再開した後も、複数の事故を起こし即稼働停止、ついには廃炉に至ることとなった。

代替案も行き詰まり気味

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 かくしてもんじゅは実現不可能な計画に終わりそうだが、政府は核燃料サイクルを諦めたわけではない。核燃料サイクルとは、使用済みのウランやプラトニウムを再処理することで、燃料を再利用する仕組みだ。前述したMOX燃料もその一環で、もんじゅは核燃料サイクルを実現するために必要不可欠な存在だった。

 では、頼みの綱であったもんじゅが廃炉になりその代替案があるかというと、存在しないのが現状だ。MOX燃料を通常の軽水炉で燃料として使うプルサーマル炉が注目されたが、成果は芳しくない。プルサーマル炉である高浜原発3、4号機は今年始めに再稼働したが、3月に司法判断で差し止められた。現状で稼働しているプルサーマル炉は伊方原発3号機のみである。

それでも核燃料サイクルへの望みを繋げる政府

 核燃料サイクルの両輪が機能しなくとも、政府はどうしても核燃料サイクルを進める姿勢を見せている。というのも、核燃料サイクルが確立しないと既存の原発を稼働することができないからだ。核廃棄物の処理方法がない今、国民の再稼働への同意を得るのは難しい。

 そこで、政府が新たな軸にしようと開発を進めているのが、高速炉である。高速増殖炉との違いは燃料に使う物質だ。高速炉ではMOX燃料ではなく、軽水炉で生成される核廃棄物である合金ウランを使用する。金属ナトリウムを冷却材で使うことは同じだが、高速増殖炉と違ってプルトニウムを増殖させることはできない。

 それでも、核燃料サイクルのに組み込むことができる高速炉に、政府は期待をかけている。2014年にはフランスとの共同開発に同意しており、実用化の一歩手前である高速実証炉の「ASTRID(アストリッド)」の開発を進めている。今回のもんじゅ廃炉で、さらに高速炉開発への熱が入りそうだ。

 だが、国民の反応はといえば冷ややかな声も多い。20年以上もの間に稼働日数はわずか250日。にもかかわらずかけられた予算は1兆円を越す。この前例を国民がどう受け止めるのか、高速炉の開発に肯定的な態度を取る人が多いとは思えない。

 
 もんじゅの廃炉、高速炉の開発の加速。今、日本のエネルギーは転換点にある。確かに核燃料サイクルが実現すれば、原子力発電の燃料調達に困ることはないだろう。だが、結局核燃料サイクルがあったとしても、核廃棄物が廃絶されるというわけではない。サイクルの最後には、必ず行き場のない核廃棄物が生成される。

 非常に難しい問題だが、原子力発電を続けていく上で、本当に重要なことは核廃棄物の最終的な処理方法だ。今回のもんじゅ廃炉で、一度立ち止まり最優先に考えてみてもいい問題なのではないだろうか。

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