1. 日銀が物価上昇率目標の先送りを発表:物価上昇にこだわる理由と先送りの原因

日銀が物価上昇率目標の先送りを発表:物価上昇にこだわる理由と先送りの原因

日銀が物価上昇率目標の先送りを発表:物価上昇にこだわる理由と先送りの原因 1番目の画像
出典:japaneseclass.jp
 日本銀行が2%の物価上昇率目標の達成時期をまたしても先送りすると発表した。これで黒田東彦総裁の任期中での目標達成は事実上困難になった。就任から3年半の間で5回目の目標先送りということもあり、黒田総裁に対する厳しい意見も挙がっている。

 ところで、そもそもなぜ日銀が「物価の上昇」を目標に掲げているのかを、正確に把握できていないという人は少なくない。そこで本記事では日銀が物価上昇を目指す理由から再確認したうえで、黒田総裁が行なった金融政策や、またしても目標が先送りになった原因などを紹介する。

なぜ物価を上昇させたいのか:デフレのデメリット

 物価が持続的に下落して行く経済減少をデフレーション(デフレ)といい、2016年現在、日本の経済はデフレの状態にある。日銀は日本経済をこのデフレから脱却させるべく、物価の上昇を目論んできたのだが、そもそもデフレとはどのようなメカニズムで発生し、どのようなデメリットを持つのだろうか。

デフレのメカニズムとデメリット

 デフレが生じる根本的な原因は不景気である。不景気で世の中の金回りが悪くなると、人々がモノを買わなくなるので、売る側も値段を下げざるをえなくなるのだ。

 また、デフレが長引くと、デフレスパイラルという状態に陥ってしまう。デフレスパイラルのメカニズムは以下の通りだ。

デフレスパイラルの仕組み

  • ①物価が下がると、モノを売る利益が減るので企業の減収をもたらす
  • ②企業の減収が、企業の倒産や従業員の給料の減額、従業員の解雇をもたらす
  • ③人々の手元からさらにお金が減り、よりいっそうモノを買わなくなる
  • ④物価がさらに下がる
 この①から④の過程が延々と繰り返され、歯止めがかからなくなってしまう状態がデフレスパイラルだ。デフレスパイラルに陥ると景気はさらに後退し、恐慌状態が訪れてしまう可能性すらある。

 日本経済においてはバブル崩壊後の1990年代からデフレが始まったとされており、2008年の世界金融危機の際にはデフレスパイラルの発生が現実味を帯び、大変懸念された。

 以上のようなデメリットをもつデフレからの脱却のために、日銀は物価上昇を目標に掲げてきたのである。「物価が下がる」と聞くと、消費者心理としてはラッキーなことのように思えてしまうが、その先に待っている事態の深刻さを考えれば、決して喜ばしいことではないのだ。

黒田総裁が行なった金融政策とは

日銀が物価上昇率目標の先送りを発表:物価上昇にこだわる理由と先送りの原因 2番目の画像
出典:www.acting-man.com
 以上のような理由から物価を上昇させたい日銀が、黒田総裁のもとで行なった金融政策がマイナス金利の導入である。日本においては初となる試みであったため、大変な話題となったこのマイナス金利について解説する。

マイナス金利:どのような金融政策だったのか

 日本の中央銀行であり、日本銀行券(=円)の発行を担う日本銀行には、日本の各金融機関が預金をしている。

 さて、通常日銀は金融機関からお金を預かっている際に、対価として一定利率の金利をその金融機関に支払う。金融機関からすれば、設定されている金利の分が預金に上乗せされるため、日銀に預金しているだけで徐々にお金が増えるのである。

 ところが、金利がマイナスになるとどうだろうか。金利がプラスの値のときとは真逆になるため、日銀に預金しているとマイナス金利の分だけ預金が減っていく(=損をする)のである。すると金融機関は、「日銀に預金をしていても損をするだけなので、預金を減らし、その分を顧客に融資したほうが得だ」と考えるはずだ。

 以上のような過程で金融機関からの融資が増えれば、それは世の中の金回りが良くなることを意味するので、物価の上昇が期待できる。黒田総裁によるマイナス金利政策は、これを狙ったものだったのだ。

 しかし、このような大胆な金融政策に踏み切っても、物価は上昇せず、目標は先送りになった。それはいったい何故なのだろうか。

またしても目標先送りになってしまった原因

消費増税・原油安・新興国経済の減速

 物価上昇率目標がまたしても先送りになった原因として考えられるものは複数ある。

 まず挙げられるのは、消費税の増税だろう。消費税が上がれば、買い物をする際に支払う金額が増えるのだから、当然人々はモノを買わなくなる(=需要が減る)だろう。需要が増えなければ物価は上昇しないので、物価上昇率の目標も達成できなかったのだ。

 原油価格の下落も原因のひとつと考えられる。原油安はエネルギー企業の株安を招き、これがアメリカ株式市場全体に波及した。そしてグローバル化が進んだ今日には、その株安の波が日本の株式市場にも届いたのだ。株安の状態では景気は良くなりにくく、需要も伸びない。

 新興国経済の減速も原因として挙げられる。先進国のモノの市場、投資先となっている新興国の経済が停滞すれば、当然先進国は煽りを受ける。日本の景気にも当然影響した。

根強いデフレ心理

 長きに渡るデフレ・不景気を経験している日本の人々には、足下の物価が下がると、将来も物価が上がらない(=不景気が続く)のではないかと考える傾向が高まっている。景気の見通しが暗ければ当然モノを買う人も減り、必要なモノは安く済ませようとするものだ。このような心理を、デフレ心理といい、物価の上昇を妨げる原因となっている。

 事実、今秋に株価を上げている銘柄としては、100円ショップの銘柄や牛丼チェーンの銘柄など、商品の安さをウリにしている企業の銘柄が目立つ。このことは日本人のデフレ心理を如実に表しているといえる。


 本記事では、日銀が物価上昇率の目標をまたしても先送りしたニュースを、「そもそもなぜ物価を上げたいのか」という基本的な点から解説した。経済の問題というのは難しく取っ付きにくいように思われがちだが、やはり我々一人一人が真摯に考えることが重要だろう。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する