1. 記事はネットを越えてリアルを動かす:「MERY」を司るイマドキ女子を掴む“キュレーション術”

記事はネットを越えてリアルを動かす:「MERY」を司るイマドキ女子を掴む“キュレーション術”

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 株式会社ペロリ(代表 中川綾太郎氏)が運営する女性向けキュレーションプラットフォーム「MERY」。2013年にWEBメディアとしてスタートし、昨年にアプリをローンチ。現在、月間4億PV、アプリは600万ダウンロードと、女性たちから圧倒的な支持を集めている。

 スタートからたった三年半。MERYで取り上げられた商品が翌日、店頭からなくなるという例も多く、その影響力たるやネットの世界の枠を超え、リアルをも動かす存在となっている。その中枢で「女の子たちの明日のかわいい」を考え、MERYを司っているのが、現在25歳の佐藤桃子さんだ。男性ばかりの創業メンバーの中、当時からその成長を支え、編集・編成を担当しつづけている彼女は、なぜ今の女の子たちの気持ちや行動がそんなに理解できるのか。女性たちのハートをつかむ記事を発信し続ける佐藤桃子の、内側にたぎる情熱とストイックなキュレーション術に迫る。

毎月アップされる約数千本の記事から40本/日をキュレーション

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 MERYでは、ファッション、メイク・コスメ、ヘアスタイルやネイルやグルメに恋愛に至るまで、幅広いジャンルに渡って書かれた記事が毎日、アップされていく。それらは、ユーザーと同世代のキュレーターたちがそれぞれの個性を活かして書きあげたものだ。その数、日に数百本、月では約数千本を超える量だ。

 しかし、それらの記事が単純にアップされるだけではないところにMERYが成長しつづける理由があると言えよう。佐藤さんは数千本を超える記事にすべて目を通し、そこから日に40本の記事をピックアップしてユーザーに届ける。つまり、世のあらゆることからキュレーターたちが独自の視点で探し出し、書き上げた記事の中から、さらに佐藤さんのフィルターによって“キュレーション”するのだ。

 彼女がピックアップする際に心がけるのは、全体のバランス。佐藤さんは「次の日の天気や気温、どんなことが起こるかまで考えてさまざまなジャンルから選んでいます。どんなタイトルならフックとして興味をひくかはもちろん、人物の画像ばかりが並ばないようになど、イメージ画像の配色や雰囲気がどうなるかまで考えていますね」と話す。検索ワードやトレンドを見て、「いまみんなどんなことに興味があるのか」ということを把握した上で記事をピックアップするのはもちろんだが、女の子がどんなことを気にしながらサイトを見るか、どんな記事ならクリックしたくなるのか、細部まで考え抜いているということだ。

 さらに、少なくとも、月に数千本ほどの記事に目を通しているため、「イマドキの女の子の間で本当に流行っている最新トレンドの動向」をいち早く、正確に得ることができ、その知見を自社のオリジナルコンテンツに還元しているのだ。

 取材中に彼女が何げなく発した「“ふーふー”っていう文字面と、“ふぅふぅ”って全然違うじゃないですか? どっちのほうが“伝わる”か、ものすごく考え抜きます」というひと言。この言葉にこそ、彼女の「伝え方」へのこだわりが集約されているように感じた。

店頭からヒートテックが消えた? 実はその裏に「MERY」あり

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 意外だったのは、記事を選ぶ際の視点について。自身のアンテナに引っかかるものを選ぶというより、「MERYらしい記事とは」という客観的な視点を大事にしているという。

 「MERYは読者と同じ立場の『普通の女の子』が記事を書いています。だから、文章の技術の上手さというよりは『本当に好きで書いてくれている』と思えるような熱意のある記事をピックアップすることも心がけています。本人が本当に面白いと思ったものであれば、読んだ人たちの共感が生まれるからです。みんなが気になる『普通の悩み』がMERYにくれば解決できるのだと思ってもらったり、『そうそう、それ気になってたの』というような共感が生まれたりします」(佐藤さん)。

 佐藤さんのその感覚とユーザーたちの感覚はぴったり合致し、ブレはない。それが証拠に、ピックアップで取り上げた商品が話題になることが多く起きているのだ。一部では“MERYに掲載されると商品が売れる”と評判になっている。

 例えば、コスメなどは店舗から直々に「取り上げられた商品があっという間に品切れになりました!」という連絡をもらうことも多いという。確かに、MERYを読んだユーザーが店舗に行ってみると「今日は朝からメリーを読んだという人で大賑わいなんです」とショップ店員さんに言われたという声はよく耳にする。また、「はさみでちょっきん!『ヒートテックはみ出る』3つの予防方法」という記事をピックアップとして掲載した翌日、ユニクロからヒートテックがなくなったという話もあるほどだ。

 佐藤さんによると「新しく発売されたものだけでなく、昔から愛されている商品が『MERY』に取り上げられたことで少し違う見え方になり、支持層が広がった」というケースもあるそうだ。「店員さんは皆ノーファンデ?みるみる肌が変わると話題のスキンケアsozai LAUREL」などの記事はこの顕著な例と言えるだろう。

言語化もルール化もできない:誰にも真似できないキュレーション術

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 ネットの記事がリアルを動かす。それこそがMERYの最大の強みと言えるだろう。「雑誌は憧れを作るもの、ネットは明日の自分のかわいいを作るための情報ツール。MERYを読んでくれている女の子たちの明日が楽しくなるための記事を届けたい」と佐藤さんはしっかりとした眼差しで語った。

 なぜ彼女がセレクトした記事は多くの女性の心をつかむことができるのだろう? その答えは、おそらく佐藤桃子という人の“キュレーション術”にあると言えよう。

 「ピックアップの方法やポイントを言語化してルール化することはできません。これをしてしまうと途端に『選び方は正解だけど、心に響かない』というつまらない記事の羅列になってしまうんです」と佐藤さんは話す。マニュアルで選ぶのではない。そこに情熱を帯びたエッセンスが入ることで温度が宿り、“伝わる”記事になるのだ。だから、それを読んだ女性たちは突き動かされるのだろう。


 佐藤さんの場合、そのエッセンスは「女の子たちをハッピーに」という強い意志だ。「WEBの世界ってネガティブな意見が飛びかうことも多いじゃないですか。だからMERYは、読んだ後にポジティブになったり、楽しくなったり、とにかく気持ちが前を向くような記事を増やしていきたいと、強く考えていました。その方針は始めた頃から、今もずっと変わっていません」とブレはない。

 多くのキュレーターを束ねる“超一級のキュレーター”、それが彼女を形容するのにふさわしい言葉のように思えた。

Interview/Text:牧野圭太、粟野あみ
Photo:栗原洋平

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