1. 「男だって泣いていい!」新たな活動「涙活」に熱が走る:男を泣かす男たち

「男だって泣いていい!」新たな活動「涙活」に熱が走る:男を泣かす男たち

出典:www.inovasee.com
 季節の変わり目は、日照時間が短くなり気候も様変わりする。今までのライフスタイルに追いつかず、身体と精神のギャップが生まれ、憂鬱な気分になりやすい。自然とストレスが貯まりやすくなるこの時期、一風変わった「涙活(るいかつ)」というものが行われているの知っているだろうか。

 また、「男の子なら泣くな」……そんな決まりごとが昔から私たちの中には何となくある。さらに自分の感情を抑えこむことが多い現代社会によって、ありのままの感情、特に泣くという行為は一層他人に見せないことが善となっていた。今回は、その「常識
」の真逆をいく、隠した感情を解放する機会を与える「涙活」に迫っていきたい。

近年注目の「涙活」で泣く男性続出!

はじめは女性を中心に話題となった涙活

 涙活とは、意識的に涙を流すことで心のデトックスを図り、ストレス解消を行う活動のことである。今や「涙活」は、映画イベントやアーティストとコラボレーションするなど、この季節に引っ張りだこだ。この涙活は、2013年に「離婚式プランナー」として活躍する寺井広樹氏(上写真)が考案した。彼の肩書きにもある離婚式プランナーとはこれから離婚される方や既に離婚された方を対象に、「再出発の決意」を誓い合う式をプロデュースする人のことだ。

 この涙活は、当初女性中心に話題を呼び、泣ける映画や本を読んで日頃の疲れを癒す女性が多く見られた。私自身も実践しており、予想以上に心身安らぐ経験をした。また最近では、徐々に男性の増加も目立って来ている。「男性は強くあるべきだ」という固定概念が近年崩れ、「男でも泣いていい」「自分の感情に素直になる」という精神が認められ始めている。「生きづらい」が積み重なり、過度なストレスに陥る人の救いの手にこの「涙活」がマッチしたのだ。

「涙活」誕生のきっかけは泣く男性の姿

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 寺井氏がこの活動を始めるきっかけとなったのが、離婚式の男性の泣く姿であった。離婚式の開催を手がけていると、女性よりも男性の方が泣いていることに気付いた。泣いた後多くの男性がすっきりした表情になる光景を見て、思い切り泣くことで気持ちを切り替えることができるのでは? と感じたとのこと。それが原点となり、泣いて心を癒す場づくりを行うようになった。

 寺井氏自身が会長を務め、泣ける舞台のプロデュースを行う全米感涙協会では、新たな医療職の取り組みも行われている。その名も“感涙療法士”である。泣くことは、笑いや眠りよりもストレス解消の効果が見込めるとし、医療や福祉・教育の場で泣くことを推奨することで、心や健康のサポートを行っている。

涙活の効果

 では、なぜ感涙療法士という職が生まれるほど「泣く」行為に注目が集まっているのか? 「泣く」行為で得られる効果を以下みていくことにする。

「泣く」が脳を休ませる薬になる!

 寒いと感じると鳥肌が出たり、緊張すると心臓の鼓動が早くなったり無意識にカラダをコントロールする自律神経が私たちには備わっている。その自律神経を構成するのが、カラダを活発にさせる「交感神経」とカラダをゆったり休ませる「副交感神経」である。泣くと、副交感神経の方が優位になりカラダを休ませる信号を出すので、ストレスが解消されるという構造になっているのだ。

 また、私たちがストレスを抱える状態というのは、ホルモンにも関係がある。ストレス物質であるコルチゾールなどが増えることでストレスを感じる。これらのストレス物質を排出する役割が涙にはあると言われており、カラダを休ませる副交感神経の働きを導く。さらに泣いた後は「エンドルフィン」という脳内麻薬ともいわれる物質が分泌され、ストレスや痛みを和らげる

笑うよりも泣く方がストレス解消効果は高い

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 一時的な気分や感情を測定するPOMS心理テストによると、「笑う」「泣く」の二つでストレス解消の度合いを比べると「泣く」方がストレス解消の効果は高いことが分かっている。笑うと脳の活力になる側面の方が強く、自律神経のバランスを保ったり、緊張や不安を和らげる効果は泣く方が強い。そして、ストレス解消を感じる時間も泣く方が長い。「泣く」という行為は意外にも心身を癒す効果が大きいのだ。

 普段の生活で泣く場面に遭遇することはあまり多くないので、「涙活」のように定期的に涙を流す習慣を身にけることで、脳がカラダを休ませることを覚え感情のバランスを整えるトレーニングにもつながる。意図的に涙を流すことで、一種の療法になっている。

泣く感動を与える「泣語家」の登場

落語家ならぬ泣語家を

出典:hirupino.blog.so-net.ne.jp
 観客を笑わせたり、喜ばせたりするエンターテインメントに新たなジャンルが生まれた。それは泣かせる「泣語」というものだ。涙活の一環として創案され、泣ける話に特化した人情噺を提供する。寺井氏の涙活に魅せられ、彼のプロデュースをもとに泣語家として活動する泣石家霊照氏は、教育現場や医療現場をはじめ様々なイベントで涙活の普及の一躍を買っている。

 泣語は、大きく分けて自身の体験に基づいた「体験泣語」と見聞きした情報をもとにつくる「創作泣語」の2種類で成り立っている。泣語は5分以内がルールであり、泣語家自身も話の終盤で目に涙を貯めて袖で涙を拭うという作法がある。短い時間の中で、多くの人に感涙してもらうためのユニークな工夫がみてとれる。

泣語家の衣装からうかがえる思想

 泣語を行う時は、必ずブータンの民族衣装をモチーフにした「泣き装束」を着用することが決まっている。ブータンと言えば、「国民総幸福量(GHN)」という独自の国家指標を提唱したことで話題になった。

 「国民総幸福量」とは、伝統や人々の思い、環境などを配慮して国民の幸福の実現を目指す考え方である。国民一人あたりの幸福を最大化することで、社会全体の幸福を最大化するビジョンに共鳴し、取り入れられた。

 この衣装を着用することで、「国民総涙量を増やし、ストレスを軽減させ、社会全体の活力を与える」という泣語家活動の方針を体現しているのだ。


 「涙活」は、男性にも受け入れられ、新たな癒しやエンターテイメントの場として確立しつつある。今回取り上げた泣語家以外にも、もう会えない人に思いを届けてくれる“天国ポスト”(寺井氏プロデュース・直木賞作家志茂田景樹氏が命名)や一緒に泣いてくれるイケメンの感涙療法士のプロを宅配する法人限定の“イケメソ宅泣便”など新たなサービスも出て来ている。

 ストレス社会ともいわれる現代において「涙活」の登場は、苦しむ人々のよりどころになるのではないだろうか。泣くことは恥ずかしいという自分たちを律するような考えはやめて、自分を追い込まず、一回立ち止まって素直な気持ちを許してあげる機会をこの活動は提供してくれるだろう。

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