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経済・宗教で紐解く、歪んだ世界の秩序とは:『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』

樋口純平

2016/11/07(最終更新日:2016/11/07)


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経済・宗教で紐解く、歪んだ世界の秩序とは:『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』 1番目の画像
出典:www.independentcinemaoffice.org.uk
 今日の社会は100年前の社会に比べて、どれだけ変化しただろうか。おそらく人類史上最も社会の変容が激しい一世紀だったのではないだろうか。特に技術的進歩が著しく、新しいモノ・サービスの誕生は世界経済を成長させる引き金となった。そして、今日もまた私たちは、新しいモノ・サービスを生むことに固執している。

 「経済成長」という言葉が現代社会では多く用いられる。アベノミクスなどの経済戦略の目標もまた「経済成長」だ。そもそも、経済はまだ成長する余地があるのだろうか。経済成長に限界はないのだろうか。著しいスピードで変容していく社会の中で、私たちはいつの間にか「無限の可能性」を過信しているのではないだろうか。

 そこで今回は、松村嘉浩氏の『増補版 なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか? 日本人が知らない本当の世界経済の授業』から、現代の世界システムに起きている歪みを経済と宗教の面から見ていきたいと思う。世界をシステム的に見ることで、あなたの生きていくべき未来が示されるかもしれない。

欲望と経済の矛盾が生んだ、人類の闇とは

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出典:maxikq.deviantart.com
 まず過去を振り返ってみてほしい。著しいスピードで進化したテクノロジー、その当初の目的は、人々のニーズを満たすものであった。しかし、徐々に人々のニーズが満たされ始めると、利便性などを追求したテクノロジーが生み出されるようになった。それが人々の欲望を満たすことに目的を置いた結果であり、現代社会はモノ・サービスが多様で豊かになった。

 つまり、経済は人々のニーズ・欲望を満たすことで成長してきたのだ。しかし、欲望が飽和状態にある現代でさえも、世界中が経済成長を目標に掲げている。以前よりもテクノロジーの誕生による経済成長が見込めないため、各国は苦しい経済戦略を展開し、形式上の経済成長を実現に向けて悪戦苦闘している。

 著者は、こうした各国の矛盾した経済戦略から、貧富の差は拡大し、貧民が凶暴化していったと考えている。例えば、お金を稼ぐためにイスラム国などのテロ集団に貧民が集まってくることは珍しくない。テロ集団を世界各国は「誠に遺憾である」などとのたまっているが、実際にテロ集団を生み出してしまったのは自国の責任でもあることを忘れてはならないのだ。

宗教戦争を生んだ、歪んだ世界システム

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出典:www.strangenotions.com
 世界の秩序は誰が整える立場にあるのか考えたことがあるだろうか。最後の世界戦争で勝利を手にした覇権国である。つまり、アメリカを中心とした欧米諸国が世界各国の線引きに介入し、正義という名分の下で世界秩序を築いた。しかし、その地域のことはその地域の者にしか分からない事情というものが存在する。その事情を見逃した世界秩序の創造は、人々の争いをも生み出す結果となった。

 主に中東の各国では国内で複数の民族が対立関係にあったり、宗教間の紛争が勃発している。これは覇権国が中東地域の宗教・民族事情を考慮に入れていない国境線を引いたためである。相容れない民族同士の紛争から、独立国家の誕生を望む声をよく聞く。

 中東地域におけるテロ集団の誕生は、世界経済の成長が限界に達していることを示すだけでなく、覇権国による過去の過ちをも示していると著者は語る。世界の意思を聞く場として設けられている国際連合なども、強い権力を持つ常任理事国は覇権国だ。もはや、国際連合も歪んだ世界システムの産物に過ぎないと言っても過言ではない。

世界宗教と日本の多神教から見える、日本の課題とは

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 日本では世界各国に比べて、民族・宗教問題が少ない。まず、日本の特徴として、様々なものに神が宿ると考える多神教の面が多く見受けられることが挙げられる。多神教であるがゆえに、様々な宗教を受け入れることができる島国となった。さらに、和を大事にする考え方を持っているため、あまり相手の宗教の話などをすることを好まないことから、宗教そのものに対する興味が薄い。

 一方で、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教の3つの宗教が各国でぶつかり合っている。宗教は本来、精神世界におけるものであるのに、現実世界においても大きな影響力を持つ。例えば、政治・経済さえも宗教的影響に左右され、国家が崩壊することだってある。同じ系統で生まれたこの3つの宗教でさえ、対立し合っている現状から、世界でどれだけの数の宗教紛争が起きているか日本人には想像がつかない。

 日本の欠点は宗教色が薄いため、各国の宗教問題を深く理解することができないことであると著者は述べている。実際、宗教戦争の歴史を根本から知っている人もあまりいないのではないだろうか。私たちはより世界情勢に耳を傾けるためにも、一神教の宗教観などをもっと理解するように努めなければならない。


 世界は複合的なものの成り立ちに見えて、実は全て連動している。ビジネスにおいては、あらゆる視点から物事を見ることが重要視されがちだが、全てが連動していることを意識したシステム的に全体を見る力もまた重要だ。また、ビジネスも世界情勢と連動していくものである。私たちは常に世界情勢に耳を傾け、今何をするべきか考えるべきなのだ。

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