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家がベッドタウンにある人は「危機感」を持つべき!高齢者増加率75%が引き起こす問題について

Shusuke Takebe

2016/12/19(最終更新日:2016/12/19)


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 少子高齢化問題といえば「地方の市区町村」がクローズアップされがちだ。しかし、今後「首都圏」でも少子高齢化の影響が出る恐れが、十分にあるのだ。特にベッドタウンでは将来、街として機能しなくなる可能性もある。今回は、「首都圏・ベッドタウンにおける高齢化」について考えていきたい。

今後、高齢者は首都圏で増える

 現在、首都圏の高齢化率は地方の他県に比べて飛びぬけて高いわけではない。その数値は、全国平均と同程度。それに加え、首都圏では働く世代の人口も多いため、今は高齢化による影響をさほど感じないだろう。

 しかし、10年後、20年後の人口分布の推計をみると、その様相は一変するのだ。
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出典:www.ipss.go.jp
 国立社会保障・人口問題研究所が公表した「都道府県別の老年人口の増加率」によると、2005年~2035年までの30年間で、東京の高齢者が倍以上に増加

 特に増加率に問題があるのは、神奈川、埼玉、千葉の3県。もともとの人口や経済活動が東京ほどではない3県において、高齢者の増加率が75%を超えている。もはや高齢化問題は、地方だけの問題ではないのだ。

若者の人口も変動する

 東京郊外エリアでは、高齢化だけでなく“もう一つ”の人口変動が併せて起こるという予測もされている。

 都心の会社に勤める人の住居が郊外のベッドタウンに拡散し、都心の空洞化が進む「ドーナツ化現象」。しかしこの現象は、既に過去のものに。2000年代以降、通勤時間の短縮や利便性を求めて、働く世代の「都心回帰」が進んだ。通勤時間の長短が、人口の増減により直接的に反映されるようになったのだ。

 埼玉、千葉、神奈川のベッドタウンにおいて、働く世代が許容する通勤時間に該当する場所は多くないはずだ。ニーズを満たせないと判断されたベッドタウンは、若者の流入が見込めず、街の規模自体も縮小していく恐れがある。

人口変動で首都圏・ベッドタウンはどうなる?

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急激な高齢化による弊害:①街の活気がなくなる

 軒並み高齢化率が上がる首都圏。働く世代の人口が減る可能性が高いベッドタウン。実際に、上記のような事態になってしまったとき、どのような弊害が生まれるのだろうか。

 まず、街の活気がなくなることが考えられる。「帰ってくる場所」に特化したベッドタウンでは、主たる産業はない。若者が減り高齢化が進むと、税収の問題だけでなく消費の鈍ってしまう。新たに街を活性化させる勢力がなくなれば、街自体の衰退は免れないのだ。

急激な高齢化による弊害:②埼玉、千葉の医師不足は全国最低レベルに

 首都圏全体の問題として、医療の人材・設備不足が考えられる。人材・設備不足の問題は、既に兆候が表れている。

 埼玉、千葉の人口当たりの医師の数は、全国でも最低レベル。埼玉県では人口10万人に対し、148人。千葉県は170人となっている。東京は、人口10万人に対して303人と、比較的高い水準にある。しかし、その医師の多くが23区の中心部に集中していて、23区外では少なくなっているのが現状だ。

 埼玉、千葉の人口当たりの医師数が少ないのは、県内の医大・医学部の数が少ないということも関わっている。東京近郊という立地から、着実に人口を増やしてきた2県。しかし、人口増加に応じた医療の人材育成・環境の整備ができていなかったのだ。近年、ようやく対処に動き出したが、急速に進む首都圏の高齢化に対応するのは、相当に困難なことであると考える。

急速な高齢化による弊害:③介護施設が足りずに行き場を失う都内の高齢者

 東京23区では既に、介護の施設・人材が不足している。現在、周辺の県や地域に比較的余裕があることから、周辺県・地域を頼っている23区。つまり、23区の施設から高齢者が溢れている状況なのだ。

 今後、ますます増加する23区の高齢者。2025年頃、神奈川、埼玉、千葉のそれぞれの県の介護施設が、自県の高齢者でいっぱいになると予想されている。周辺地域の施設が受け入れ不可能になってしまった場合、23区の高齢者が行き場を失ってしまう恐れがあるのだ。

 今後30年間で、高齢者人口が急激に増加する首都圏。その変化に対応できる医療や介護の人材・施設が、各県にない現状。現在の「医療は、周辺県が23区に。介護は、23区が周辺県に」という構造は、10年後には限界を迎える。


 医療・介護環境の整備だけでなく、各県、各地域の若者・高齢者人口の変化への対応も、到底間に合っていない首都圏。

 今後の高齢化問題は、地方の問題だけではなく「首都圏の問題」であることを認識しなければならない。本記事で紹介した問題点を放置すれば、日本社会が危機的な局面を迎えてしまうだろう。国の施策に頼るだけではなく、ぜひ読者個人の問題として、どのように対応していけばいいのか考えてみてほしい。

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