1. 再編の続く百貨店業界:都心と郊外・地方、残酷なまでのコントラスト

再編の続く百貨店業界:都心と郊外・地方、残酷なまでのコントラスト

 小売業の中でも歴史のある「百貨店」。きらびやかな売り場、おいしいレストラン。買い物を単なる消費行動ではなく、一つのイベントのように演出し、一昔前では「百貨店で買い物をする」ということはステータスだった。

 しかし、この業界は価値観の変化や消費不況などから現在苦戦を強いられている。そしてそんな苦境を抜け出そうと、改革・再編、統廃合に店舗の整理が行われ、都心と郊外・地方で明暗が大きく分かれつつある。

都心部と地方の売り上げ格差

出典:www.adeevee.com
 日本百貨店協会によると、百貨店全体の売上高は2015年は6兆1,742億円であり、前年比で2.2%減少している。そしてこの売上高減少は軒並み地方店舗の不振が原因である。

 東京や大阪など10都市での売上高は2015年に4兆1,646億円で、前年比1.2%の上昇、ここ10年以内で最も訪日外国人数が少なかった11年と比べると約4%の増加となっている。インバウンド需要をうまく取り込めたことなどがこの売上高アップを後押ししていると思われる。

 一方で、10都市以外の地域は芳しくない。15年に2兆96億円で、前年比3.0%の減少、11年比では6%余り減少した。百貨店の経営は都心よりも地方のほうが苦戦しているといえそうだ。

 そのため、こうした業績の動きを見て各百貨店とも、都心部の店舗の競争力向上、売上アップを目指すようになった。つまり、「地方店舗の切り捨て」に舵が切られることになる。

都心部における百貨店の動き

 不振といわれる百貨店業界だが、都心部では大型店舗のオープン・リニューアルが相次いでいる。主な百貨店の近年の都心部での動きを一つずつ追っていきたい。

大丸松坂屋

●名古屋店(名古屋市)内にヨドバシカメラを誘致(2015年11月)
 客の要望に合わせて異なる売り場の商品をまとめて売り込む「コンシェルジェサービス」を開始するなど、家電量販店の中でも「サービス・接客のレベルが高い」ヨドバシカメラに大丸松坂屋が白羽の矢を立てた。

大丸松坂屋の狙い

  • 松坂屋とヨドバシが一体となって、家具やインテリアと家電を組み合わせた生活スタイルを総合提案すること
  • 百貨店を利用する機会の少ない若者や男性といった新しい客層を呼び入れること
 これを足掛かりに全国の主要店で「脱百貨店」を進めていく方針である。

東急百貨店

東急プラザ銀座内に「ヒンカ・リンカ」をオープン(2016年3月)

ヒンカ・リンカとは?

  • 自社で初となるファッションに特化した大型セレクトストア
  • アパレルだけでなく雑貨やライフスタイル、フードに至るまで衣食住すべてを「ファッション」と定義し、そうした「ファッション」を包括した店舗となる
  • 東急百貨店は銀座エリアへの出店は初めてで、新たな客層の開拓に挑む
 ともに出店する東急ハンズも「ハンズエキスポ」という既存の店舗とは異なる商品をイベントと共に紹介する新業態での出店となっており、東急プラザ銀座は挑戦に満ちた店舗となっている。同時に、東急プラザ銀座店は、東急プラザの旗艦店と位置付けられており、同じ東急グループの東急百貨店、東急ハンズ、東急文化村が集結した「オール東急体制」となっている。

H2Oリテイリング(阪急阪神百貨店)

●セブン&アイホールディングスと資本提携(2016年10月)
 百貨店事業では、セブン&アイ傘下のそごう神戸店(神戸市)、西武高槻店(大阪府高槻市)、そごう西神店(神戸市)にかかわる事業をH2Oが引き継ぐ。

資本提携の狙い

  • H2Oの店舗などでためられるポイント「Sポイント」をセブン&アイ傘下のセブン・イレブン・ジャパンの関西圏の店舗でも使えるようにする
  • 百貨店、スーパー(イズミヤ)に加えコンビニを客との接点とできることで、目標とする「総合生活産業」に一歩近づける

高島屋

●JR名古屋高島屋の売り場3割改装(2017年春開業予定)
 婦人服売り場で世代・年齢別のフロア構成を廃止し、服の雰囲気やテイスト別にする。

大幅改装の狙い

  • 名古屋は母娘が一緒に百貨店を訪れることが多いため、配置する服の年齢層を混ぜることで、親子で買い物がしやすいフロアを目指す
  • 各テナント間の壁や仕切りは低くし、商品を見比べながら歩けるようにする
 こうしてみると、百貨店経営は苦戦しているとはいえ、都心部ではまだまだ華やかで改革・改編もドラスティックである。

郊外・地方における各百貨店の動き

 都心部での改革・改編がドラスティックなのは各百貨店が店舗の経営、売上アップを「都心部に絞った」ということの裏返しでもある。華々しい都心部の店舗オープン・リニューアルの一方で、郊外・地方店舗は閉店が相次いでいる。

三越伊勢丹

三越千葉店(千葉市)2017年3月閉店予定
 ルイ・ヴィトンなどの有名ブランドが競合店である、そごう千葉店に移転してしまった。閉店前から空きテナントも多かったようである。

 売上高は現在確認できる2009〜2015年度まで7期連続で前年割れし、今やピーク時(1991年度)の4分の1となる126億円まで落ちこんでいる。営業赤字も全国の三越伊勢丹全店の中で最大である。

 これほどまでに同店が苦戦を強いられている理由としては、若者が幕張にできたショッピングモールやアウトレット店に足を延ばすようになったこと、そしてそごう千葉店(千葉市)のリニューアルにより客差しを奪われたことの二点があげられる。

●三越多摩センター店(多摩市)2017年3月閉店予定
 2000年9月に閉店した旧そごうの跡に同年11月にオープンし、京王線・多摩センター駅そば「ココリア多摩センター」の核テナントとなっている。しかし、売上高もピーク時の70億(2007年)から低迷が続いた。

 さらに、三越伊勢丹ではこの2店舗のほかにも伊勢丹松戸店(千葉県松戸市)、伊勢丹相模原店(神奈川県相模原市)、伊勢丹府中店(東京都府中市)の閉店も検討されている。

そごう・西武

●そごう柏店(千葉県柏市)2016年9月閉店
 同店はJR柏駅東口の市街地再開発事業の中核店舗として1973年10月オープン。最上階の14階には回転展望レストランが入るランドマークであり、柏駅周辺の地域経済を牽引してきた。しかし、近年は周辺のショッピングセンターなどに押され、ピークの91年2月に590億円あった売上高は、2016年2月は115億円まで減り、閉店せざるを得なくなった。

●西武旭川店(北海道旭川市)2016年9月閉店
 道北唯一の百貨店で、JR旭川駅前のシンボルとして41年に渡って親しまれた同店は近隣にできたイオンモールに客足を奪われ、閉店することに。

地方百貨店苦戦の理由

by brittreints
 地方百貨店の売り上げが都会に比べて伸び悩み、数カ月の間にこれほどの店舗数が閉店するには理由がある。その理由を大きく3つに分けてみていきたい。

爆買いの恩恵を受けられなかった

 「爆買い」とは、主に中国からの消費であるが、訪日外国人のほとんどが都心か観光地以外には足を延ばさなかった。それ故、郊外や地方の百貨店はうまく訪日外国人たちを誘致できず、爆買いの恩恵を受けられなかった。

 さらには、今年4月から中国政府は高級時計、酒、化粧品の関税を大幅に引き上げた。これに円高が重なったことで爆買いが収束し、旗艦店の売り上げで郊外・地方店の赤字を支えることもできなくなった。故に、かねてより不振を続けていた店舗が相次いで閉店していったのである。

郊外への大型ショッピングモールやアウトモールの出店

 「イオンモール」や「ららぽーと」といった大型ショッピングモールの出店の増加は郊外・地方百貨店の経営を圧迫している。百貨店に比べ、圧倒的に安くかつ若者向けの商品を得意とするこれらの施設に若い顧客を取られてしまう。

建物の老朽化

 建物の老朽化や耐震補強のために改修をする必要があるが、その費用を工面できるほど売り上げがなく、閉店に追い込まれる。

 百貨店業界では三越と伊勢丹、阪急と阪神の統合などの統廃合が相次ぎ、さらには売上不振店舗の整理が始まったりと、業界再編が続いている。苦戦を強いられているこの業界がまたかつてのように栄光を取り戻すことはあるのだろうか。

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