1. 加熱するハリウッド映画の“中国びいき”:その背景をビジネス的観点から探る

加熱するハリウッド映画の“中国びいき”:その背景をビジネス的観点から探る

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 映画の王道といえばやはり、“ハリウッド映画”である。莫大な製作費をかけ、豪華スターを配役し、長年にわたって観客に夢と感動を与えてきた。

 そんなハリウッドの大作映画に近年、“中国びいき”の傾向が多く見受けられるのをご存知だろうか。本記事ではそのようなハリウッド映画の“中国びいき”の実例を挙げながら、その背景を探る。

近年のハリウッド大作映画に見られる“中国びいき”

舞台として中国が登場

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 近年のハリウッド映画には、中国が舞台として登場する作品が多い。例としてまず挙げられるのは「トランスフォーマー ロストエイジ」(2014年)だ。大ヒットシリーズの最新作である本作では、物語の舞台が途中で中国に移動する。北京・広州・香港の計3都市が登場し、さながら「トランスフォーマー中国ツアー」といったような印象を受ける。

 中国企業の製品やロゴマークがはっきりと目立つように映されるなど、舞台設定以外にも中国びいきが見受けられ、その甲斐もあってか本作は中国で大ヒットした。

 同じく人気シリーズの最新作である「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(2015年)や、巨大ロボットが登場するSF大作「パシフィック・リム」(2013年)にも中国が重要なシーンの舞台として登場している。

 さらには最初から最後まで丸々舞台が中国というハリウッド映画も登場。2017年公開の「The Great Wall(原題)」はマット・デイモン主演の歴史ファンタジー大作で、“万里の長城の本当の建造理由はモンスターを防ぐためだった!”というストーリーである。共演にも中国人スターが多数起用されるなど、注目を集めている。

中国人俳優の起用

 主要キャストに中国系の俳優を起用するハリウッド映画も増えている。大ヒットSF大作の続編である「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」(2016年)には“主人公の相棒が恋に落ちる戦闘機パイロット”という主要な役に中国の人気モデル:アンジェラベイビーが起用された。

 また、今冬公開の「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ作品である「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の主要キャラクターにも、ドニー・イェンとチアン・ウェンという二人の人気中国人俳優が配役されている。同シリーズにはこれまで主要キャラクターにアジア人が配役されたことがなかったため、話題を集めている。

味方、ヒーローとしての中国

 かつて中国という国や中国人は、ハリウッド映画の中では敵として登場することも多かった。カンフーを駆使する中国人の悪役などがよく登場したのである。しかし最近では悪役としての登場は減り、味方あるいはヒーローとして中国が登場することが多い。

 物語の一部を明かしてしまうが、火星に取り残されたアメリカ人宇宙飛行士の奮闘を描いたSF映画「オデッセイ」(2016年)では、主人公を救うのは中国の宇宙船。本作では中国が、主人公の救出のためにNASAに協力するアメリカの友好的かつ対等なパートナーとして描かれる。主人公の救出劇を固唾を飲んで見守る中国国民の描写も印象的だった。

 また、アメリカ本土を舞台とした架空の戦争を描いたアクション映画「レッド・ドーン」(2012年)は、中国がアメリカを侵略するストーリーだったが、撮影終了後に敵国が中国から北朝鮮に変更された。すでに撮影が終了していたために、この修正作業には100万ドル近くの費用がかかっている。

ハリウッドの“中国びいき”はなぜなのか:その背景を探る

中国の映画市場の急成長

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 中国では映画市場の成長が著しい。2015年の中国における映画興行収入はドル換算で68億ドル。北米に次ぐ世界二位の数字で、日本の約4倍だ。特筆すべきはその成長率で、前年に比べて49%の成長である。中国の映画市場が北米市場を抜いて世界1位になる日もそう遠くはないと言われている。

 このように巨大な映画市場となった中国を、当然ハリウッドは無視できない。莫大な製作費がかかるハリウッド映画が利益を出すためには、中国でのヒットはもはや必要不可欠である。それゆえに最近のハリウッド映画のなかには“中国びいき”な描写や設定が多いのだ。

中国政府による外国映画の上映本数規制と検閲

 上記のようにハリウッドは中国で興行利益を出したがるが、すべての映画を中国で上映できるわけではない。中国では外国映画の公開本数が年間34本までと決められており、当局の検閲を通過した映画しか公開されない。

 このような事情からも、中国に否定的な描写がある映画は当然公開が難しくなり、逆に中国に肯定的な映画は公開されやすいのだ。このこともハリウッド映画の“中国びいき”に大きく影響している。

中国企業からのハリウッドへの投資の活発化

 また、中国企業がハリウッドに活発に投資しはじめたことも“中国びいき”の要因となっている。一つ一つの映画の製作への投資も活発化したが、最近では中国の企業がハリウッドの映画会社を買収するケースも増えている。

 特に注目すべきは中国一の富豪:王健林氏が率いる複合企業、大連万達集団(ワンダグループ)による買収だ。大連万達集団は2016年1月に、「GODZILLA ゴジラ」(2014年)や「ジュラシック・ワールド」(2015年)を制作したハリウッドの大手制作会社:レジェンダリー・ピクチャーズを買収し、大きな話題となった。

 大連万達集団は青島(チンタオ)に巨大な映画撮影施設を建設しており、今後いくつかのハリウッド大作がその施設で撮影されることが決定しているなど、影響力を増している。

 このような中国資本のハリウッドへの進出も、ハリウッド映画の“中国びいき”の大きな要因のひとつだ。中国資本が投じられて製作された映画なのだから当然のことである。

アメリカ人や中国人の反応

米政府の焦り

 中国資本のハリウッド進出に関して、米政府は焦りを見せている。前述の大連万達集団は、同社が中国共産党と密接な関係にあり、会長の王健林氏はレジェンダリー・ピクチャーズ買収の調印式の際に「中国企業はこれからグローバルな映画産業において“話語権”(発言力)を勝ち取っていく」という挑発的なスピーチを行なった。

 これを受けて米下院の16名の議員が2016年9月に、中国資本の影響下に置かれることでハリウッド映画が中国によるプロパガンダとして利用される可能性を危惧し、政府に調査要求書を提出した。政府側も権限の及ぶ範囲で調査を行なう旨を回答している。

“花瓶”にしらける中国人

 中国人気を狙って、作中に有名中国人俳優を脇役でちらりと登場させるケースもハリウッドでは増えているが、そのような演出を冷ややかな目で見る中国人も少なくない。

 ハリウッド映画に、お飾り程度で顔だけ出すような中国人女優を中国の人々は“花瓶”と揶揄している。例えば「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年)には中国で大人気の女優:ファン・ビンビンが出演したが、全体を通してセリフが一言しかないという“花瓶”っぷりであったため、中国の人々も冷ややかな反応であった。事実、中国の国営メディアである北京日報も、同作のビンビンの配役が「物議をかもした」と伝えている。
 

 本記事では、昨今のハリウッド映画における“中国びいき”をビジネス的観点から検証した。なにも考えずに思い切り楽しめる作品が多いのがハリウッド映画の魅力であるが、こういったビジネス的観点から鑑賞してみるのもおもしろいかもしれない。

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