1. 社会への怒り、承認欲求、疎外感……高学歴者が過激組織に入信してしまうメカニズム

社会への怒り、承認欲求、疎外感……高学歴者が過激組織に入信してしまうメカニズム

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 世界中をテロの恐怖に陥れたイスラム過激組織・ISIS。彼らを構成しているのは貧困層・社会的弱者が中心であろうと思われがちだが、実態は違う。比較的恵まれた経済環境で育った高学歴なメンバーが多いのだ。本記事では、そんな高学歴者たちがなぜ過激組織に入会してしまうのかを、日本におけるオウム真理教の事例などと照らし合わせながら検証する。

過激組織には高学歴者が多い

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ISIS(イスラム国)には高学歴者が多いことが判明

 世界銀行が2016年10月に発表した報告書によれば、社会通念に反して、ISISには高学歴者が多いことが判明したという。戦闘員の多くは、その出身国がどこであろうと、自国の平均水準よりも高いレベルの教育を受けているという。ISISのデータベースから流出した戦闘員3,800人のうち、大学レベルの高等教育を受けた者の割合は4分の1にのぼる。これは、同じ3,800人のうちの高校中退者よりも大きな割合だ。

 これまでは、ISISの支持者には貧困層や低学歴層が多いと考えられてきたが、事実はその真逆であることがわかった。ISISが外国人戦闘員を勧誘する際のターゲットは高学歴層であり、ISIS支持の要因は貧困ではないのである。

日本のオウム真理教にも多くの高学歴者が

 高学歴者の割合が多い過激組織は、ISISだけではない。同じイスラム系のテロ組織であるアルカーイダやタリバンでも、高学歴者の割合が少なくないという。日本人の犠牲者も出た2016年のバングラデシュにおけるテロに関しても、実行犯は裕福に育ち、高水準の教育を受けた若者だった。

 我が国にも目を向けると、かつて地下鉄サリン事件などを起こして日本中を震撼させたオウム真理教にも高学歴者が多かった。東京大学や京都大学をはじめとした優秀な大学を出た若者たちが、教団にマインドコントロールを施され、凶悪な事件を起こしたのである。

高学歴者が過激組織に入信してしまうのはなぜか

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 それではいったい何故、過激組織に入信してしまう高学歴者が少なくないのだろうか。そのメカニズムをいくつかの観点から検討する。

高学歴者特有の社会への不満

 いうまでもなく、高学歴者は社会的に優秀であると見なされるし、本人にも自分が優秀だという自覚があるケースが多い。また、勉学に関して努力を惜しまなかったという人がほとんどだろう。すると当然、自分の才能や努力を社会的に評価してもらいたいという自己顕示欲・承認欲求が生じるものである。このことは決して悪いことではないが、過激組織は高学歴者のそういった感情に巧妙につけ込んでくる。

 自己顕示欲や承認欲求を満たされない高学歴者のなかには、その要因を社会に見いだす者が存在する。そこに過激組織の人間が「私はあなたを評価する。あなたを正当に評価しない社会は間違っている」というような言葉とともに近づいてくると、その組織に傾倒してしまう高学歴者は少なくないのだ。

 ISISやオウム真理教などの過激組織は、実際にこういった手口で高学歴者を入信させてきたという。

職に就けず、社会から疎外

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 今日、中東や北アフリカ、アジアのイスラム諸国では若年層の失業率が高く、大卒でもすぐに就職できない人々が少なくない。高学歴でも職に就けないことで、前述のような社会への不満はさらに助長される。

 また、職がないというのは社会に統合されないことを意味するので、社会から疎外されていると考える若者も多いという。社会からの疎外感も、過激組織への入信の大きなファクターとなりうる。

 実際にISISにおいては、これらの地域が出身の外国人戦闘員が大きな割合を占めている。

理数系の独特の思考回路

 高学歴の過激組織構成員を調査した結果、半数近くが理数系の出身であったというデータが存在する(オックスフォード大学の研究より)。理数系の高等教育を受けた過激組織メンバーが多いということだ。

 これには、理数系出身者に特有の考え方が影響しているという指摘がある。すべての理数系出身者に当てはまるわけでは決してないが、社会を大きな機械のように捉え、欠陥部分の交換や排除によって社会の修復が可能だと考える理数系出身者は少なからず存在するのだという。この考え方が行き過ぎると、倫理観が欠如し、テロ行為も厭わないようになるというメカニズムである。

 過激な思想を持つ人物が科学に精通している傾向は今日の過激組織にのみ見られるものではなく、古くはナチスにもこの傾向が見受けられた。ヒトラーを未だに崇拝するネオナチにも同じ傾向があるという。

日本の高学歴者は大丈夫なのか

実際に日本人がイスラム国に参加しようとした事例

 日本人の高学歴者がISISのような過激組織に参加しているというような情報は、幸い現時点では存在しない。しかしだからといって安心できるわけではない。

 事実2014年には北海道大学の男子学生が、ISISへの参加を目的にシリアへの渡航を企てていたことが判明し、世間を騒がせた。彼は警察からの聴取において「就職活動がうまくいかなかった」などと現状への不満を口にしたという。

「ローンウルフ型」の恐怖

 インターネットやSNSを媒介して過激組織の影響を受けた人物が、自国で単独でテロを起こすという事件が世界中で増加している。この様なテロは「ローンウルフ(一匹狼)型」と呼ばれ、未然の把握が難しいことから大きな脅威とみなされている。

 2016年にアメリカ・フロリダ州で起きたナイトクラブ銃撃事件も、ISISに影響を受けた男のローンウルフ型テロであった。

 日本においても、ネットを通じて過激組織に傾倒した人物がローンウルフ型テロを起こす可能性は十分考えられる。東京オリンピックを控えていることもあり、警視庁は我が国でも起こりうるローンウルフ型テロに警戒を強めている。


 本記事では高学歴者が過激組織に入信してしまうメカニズムと、それが日本でも起こりうる事実について紹介した。日本の高学歴者が過激組織に加担することがないよう祈るばかりだ。

 そもそも学問を修める目的は、自分の将来のためということだけではない。学んだことを社会のために活かすという一番大切な目的が、その根底にあるはずだ。もし過激組織に入信しようとする高学歴者がいれば、このことをもう一度胸に噛み締め、自らが学んできたものを社会の破壊という結果に帰結させないよう、今一度考え直していただきたい。

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