1. 高齢化が止まらない“塀の中”:年老いた受刑者たちの哀しい実情

高齢化が止まらない“塀の中”:年老いた受刑者たちの哀しい実情

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出典:yellowhammernews.com
 刑務所では高齢になっても体が動く限り、刑務所内での工場で作業に従事する。「ここを出たら、どこで誰と暮らすか? なにをしたいか?」と社会福祉士などに促され、受刑者が答えるのは「1人でアパートで暮らす」などと答える人が多いようだ。

 しかし、法務省の犯罪白書によれば、刑期を終え65歳以上の高齢になった受刑者のおよそ半数は5年以内に、また罪を犯し刑務所へと帰ってくるという……。

刑務所内の高齢受刑者

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出典:www.healingcorrections.org

増加する高齢受刑者

 20年前は年間500人ほどだった、刑務所入所者人数が、平成26年の段階で年間2,200人強にまで増え、比較すると65歳以上の犯罪件数は約4.5倍、再犯率はおよそ半数の50%ほどと、増加傾向にある(法務省の犯罪白書調べ)。高齢での初犯の件数も増え、刑務所内にも高齢化の波が押し寄せている。

 高齢の犯罪者が増える要因は、高齢者が1人で暮らしていける環境が整っていないことが大きいと言われている。現在の日本社会は、「刑務所より厳しい生活を余儀なくされている」と揶揄する声も少なくない。

過去にあった高齢者の犯罪事例

  • 缶コーヒーを1缶盗む。路上生活で生活に困窮し、逮捕を望んで犯行に至った。
  • スーパーの惣菜シールを他のシールに張り替え、商品購入。年金受給額が少なく、節約しようと犯行を行った。

受刑者にかかるコスト

 法務省によれば、受刑者1人あたりにかかるコストは年間320万円で、生活保護を受給した場合のほぼ倍の金額だ。刑務所内でかかる医療費も伸びていて、年間でおよそ60億円にも達する。

受刑者の一日のスケジュール(東京拘置所)

  • 起床:6:40
  • 朝食:7:00
  • 作業開始:7:30
  • 昼食:11:50
  • 作業開始:12:20
  • 作業終了:16:10
  • 夕食:16:20
  • 就寝:21:00
 上記は光文社刊の『All color 日本の刑務所30』に基づく受刑者の一日のスケジュールである。他の刑務所も起床時間は多少異なることもあるが6:30〜6:40が一般的だという。

刑務官の苦悩

 高齢化の波が押し寄せ、刑務官にかかる負担は大きい。政府は2017年度から刑務所に介護専門スタッフを配置する方針だ。高齢受刑者の多い全国32カ所に1人ずつ配置されるという。

 高齢化に伴い、刑務官の人手不足も深刻だ。高齢受刑者が持病を持ち、刑務所外に検診に行く場合、受刑者は1人で外出できないため、刑務官が付き添うことになる。ましてや入院になれば24時間刑務官が常に3人、立ち替わり付き添うこととなるため、刑務官への負担が増すだけでなく、より人員を割くことになる。

 中でも大変なのが、認知症を煩った高齢受刑者だ。刑務官が体を拭き、オムツを替え、ご飯を食べさせたり、身の回りの世話をすることとなる。さながら福祉施設化していると言われるのも頷ける。

高齢化した受刑者の社会復帰

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出所後の就職

 出所後の再就職の方法として、更生保護委員会・保護観察所を通して行うものがある。そこで協力雇用主となっている企業を紹介してもらう事が再就職の近道だ。

 協力雇用主にはあらかじめ前科者だと伝えられており、事情を了解した上で採用しているため、個人で探すより遥かに内定をもらいやすい。

 しかし出所後定職に就ける割合は、10%ほどという。パートや日雇い、今後定職の見込みがある人を合わせても、50%にも満たないのだ。

再び罪を犯す高齢者

 出所後に再び罪を犯す受刑者は少なくない。特に高齢者の再犯率は近年大きな問題となっている。その背景となっているのが、社会的孤立と金銭面などからなる、生活苦によるものだ。

 高齢受刑者の多くは身寄りがなかったり、頼れる人がいないのが現状だ。相談したり頼ったりできる人が近くにいないために、再び罪を犯してしまうケースが後を絶たない。 日本の刑法システムは、犯罪者に罰を与えて罪を償ってもらうという点に重視されがちで、罪を償ったあとの社会復帰システムが不十分だ。

 10数回も服役を繰り返す常習性の高い受刑者は、窃盗などの軽犯罪に手を染め、わざわざ刑務所に戻る。高齢受刑者の多くは、刑務所に入る不安より刑務所を出る不安の方が大きいという。刑務所内であれば、1日3食の健康的な食事、睡眠スペースなどが確保できるが、出所すると最低限の生活すらままならないのだ。


 自由より安心した生活を求め、犯罪に手を染める高齢者。「刑務所の方がよっぽど健康な暮らしができる」と高齢者たちの行う犯罪は、深刻な社会問題だ。犯罪を犯したら、罪を償わせて終わり。ではなく、再犯を防ぐためにはなにができるか。高齢化が進む中で私たちは社会福祉の観点からもう一度見直す必要がありそうだ。

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