1. 史上最大規模のドローンショー開催:“空の市場”の覇者は、時代の寵児が率いる中国企業「DJI」

史上最大規模のドローンショー開催:“空の市場”の覇者は、時代の寵児が率いる中国企業「DJI」

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by Sworldguy
 首相官邸の屋上やホワイトハウスの敷地内で発見されるなど、何かと世の中を騒がせているドローン。新たなテクノロジーが世に出ると、必ずと言っていいほど法整備の遅れが注目される。確かに新たな犯罪の手法になる可能性を否定することはできないドローン。だが、誰もが操作できる飛行物体が変えるであろう新社会に、世界中の人々が期待を寄せているのもまた事実だ。

 そんなドローンの史上最大の展示会「インタードローン・ショー」が2016年9月7日から9日まで開催された。今回のショーで、拡大し続けるドローンビジネスの現状と市場をリードする企業が見えてきた。本記事ではドローンビジネスが今後の世界に与える影響と、このブームの核となる企業に迫っていく。

まだまだ加熱するドローン産業

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by ActiveSteve
 インタードローン・ショーは9月7日から9日にかけてアメリカ、ラスベガスで開かれた過去最大のドローンの祭典だ。参加者は3500人以上、会場は230ブースで満杯になった。多くのユーザーや企業に注目されるドローン産業の盛り上がりの現状と理由を見ていこう。

現状ですでに飛行機越えか

 まだ始まったばかりのドローン産業ではあるが、すでに機体の数では飛行機を追い抜いている。展示会の初日の講演では、その現状がドローンブームの象徴として紹介された。

ウエルタ長官は冒頭に「有人飛行機の世界では、過去100年かかって32万機が登録された。一方、ドローンは過去9カ月間で約55万機(娯楽用約52万機、業務用3万機)が登録されている」と述べ、ドローン需要の急成長ぶりを指摘した。

出典:過去最大のドローンショー 市場獲得へ技競う :日本経済新聞
 もちろん機体単体のコストを考慮すれば、有人飛行機の方が圧倒的に高いため、機体数の比較のみで事業の規模を正確には計れないが、ドローンが事業が急速に伸びていることはわかる。また、アメリカでは商用ドローンの規制を大幅に緩和したこともあり、上記のペースを上回る可能性があるのだ。

AI、レーザーレーダーとの相乗効果でさらなる発展も

 ドローンは事業単体としてだけでなく、他のテクノロジーと掛け合わせることでさらに優れた、利便性の高い製品を作ることも出来る。まず挙げられるテクノロジーは、ディープラーニングによって第三次ブームが巻き起こっている「AI」だ。

 自動車の移動運転技術に応用されているAIは、ドローンの完全自動運転での運用を可能化するテクノロジーとして期待されている。今回の展示会でも多くのAI技術が紹介された。中でも、物体認識やGPSによる地図認識ができる技術は、多くのユーザーの関心を集めた。

 もう一つの注目されているテクノロジーは「個体素子レーザーレーダー」だ。個体素子レーザーレーダーは、従来の電波によるレーザーよりも優れた物体認識能力を持っている。このテクノロジーもまた、自動車の自動運転技術に活かされている。小型化が難しく、ドローンに応用するには困難かと考えられていたが、最近では開発が進み製品化する企業もある。

新たな空の市場の覇者は、中国企業「DJI」 

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出典:www.minidronesreview.com
 一大ビジネスとなりそうなドローン。そんなドローン市場で存在感を示している企業はどこなのだろうか。それはアメリカでも日本でもなく、中国の新興企業「DJI」である。聞き馴染みがない、という方も多いかもしれないが、DJIは個人向けドローンで世界70%のシェアを誇るドローン最大手なのだ。

中国企業らしからぬ中国企業

 中国製の製品といえば安く、悪い。有名ブランドの偽装品が出回っており、手抜きのものが多い。そんなイメージが製品にはつきまとう。だが「DJI」は違う。性能の高さは世界随一で、コストパフォーマンスにも優れている。操作性に秀で、最高時速は70km、高画質で撮影可能という機体性能で10万円前後で購入出来る。

 だからこそ、世界で70%のシェアを獲得しているのだ。記事冒頭で触れた首相官邸やホワイトハウスで発見されたドローンも、実はDJIのドローン「ファントム」だった。そして、この事件のすぐ後にはこのような重要施設に近づけないようなソフトをアップデートするなど、内臓ソフトの柔軟なアップデートも評価されている。

世界一を実現させたエンジニアCEO「フランク・ワン」

 DJIを世界一のドローン企業に成長させた最大の要因は、創業者のフランク・ワンの力が大きい。ワンは若い頃から空の世界に、輸送や農業、警備への大きな需要を感じていた。大学在学時はヘリコプターの空中制御技術を研究し、初期のDJIはそのシステムを販売する企業として誕生した。

 当初から高い技術力を評価されていたDJIの空中制御技術は、現在のドローンに反映されている。DJIの看板商品「ファントム」シリーズは、性能の高さと価格の低さから大ヒット。2011年の売上高420万ドルから2014年には10億ドルに増加した。

 ワンはドローン販売にあたって最初から世界を見定めていた。世界各地で開催される展示会でDJI製品をアピールしながら、販売戦略でのパートナー、優れた技術者の獲得に動いた。今では20か国以上の人材が集まるグローバル企業に成長し、先述のようなネガティブな「中国企業」らしさを全く感じさせない。

 このように、エンジニアとしてもCEOとしても傑出した才能を持ったワンがDJIの快進撃を支えているのだ。

ドローン後進国の日本は、産業用ドローンで勝負

 一方で日本企業はドローン市場で遅れ気味だ。というのも日本では、他の先進国に比べてドローン規制が厳しいからだ。法律により200g以上のドローンは全て規制対象になっている。このストリクトな規制は、19世紀にイギリスが自動車への過剰な規制をした「赤旗法」と共通している。イギリスではこの法律により、世界に先駆けていた自動車開発が停滞することになってしまったという歴史を持つ。

 このように、ドローン開発が他の先進国に比べて理解が進んでいない日本だが、世界展開に野心を見せている日本企業もある。

産業用ドローンで勝負に出る「プロドローン」

 今回の展示会で注目を集めたのが、商用ドローン専門メーカーの「プロドローン」だ。今まで産業用ドローンは、農薬散布や空撮など対象と接触しないものが中心だったが、プロドローンが発表したのはアーム付きのドローン。物を運ぶ、設置する、切断するなど直接的な作業が可能なのだ。

 個人用ドローンのDJIと違い、未だ圧倒的な存在がいない産業用ドローンの市場は今後激戦区になるだろう。現在は、個人用ドローンよりも産業用ドローンに開発の主軸を置く企業が増えてきた。その背景として、大型で多機能なクローンを作る技術の進歩はもちろん、個人用ドローンの需要よりも産業用ドローンの方が需要の伸びしろがあることがあげられる。

 
 新たなテクノロジーには実用化への脅威がつきまとう。墜落による傷害、盗撮、爆弾をドローンに運搬させることでテロも可能だ。だが、ドローンの持つ可能性を考えるといつまでも足踏みするわけにはいかない。需要は高まり、市場が拡大し、開発も熱を帯びている。10年後の利益のために企業、国に求められているのはドローンへの理解と柔軟性だろう。

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