1. 増え続ける“難民”:日本政府に求められる法整備と日本国民に求められる理解

増え続ける“難民”:日本政府に求められる法整備と日本国民に求められる理解

出典:www.nytimes.com
 シリア紛争を機に増加傾向にある難民。世界の難民の数は第二次世界大戦後最多のおよそ6,530万人(2015年末まで)にも上るという。平和な日本で暮らす私たちには、縁遠い存在に感じる難民問題。だが日本に逃れてくる難民が年々増加していることはご存知だろうか。今回は難民問題にフォーカスし、紹介していく。

世界が抱える難民問題

そもそも難民とは?

 難民とは、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と1951年の難民条約に定義されている。

 現在では、戦争や紛争によって、身に危険が生じ、国外に避難した人のことも指すようになり、広い意味で使われている。

難民発生国ランキングトップ5(2015年末)

  • 第1位:シリア 487万2,585人
  • 第2位:アフガニスタン 266万6,254人
  • 第3位:ソマリア 112万3,052人
  • 第4位:南スーダン 77万8,697人
  • 第5位:スーダン 62万8,770人
 
 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の調べによれば上記のように、アフリカの北東部や中東、中央アジアが主な難民発生国となっている。第1位のシリアでは人口の半分以上が難民として避難している。

難民受け入れ国ランキング(2015年末)

  • 第1位:トルコ 250万人
  • 第2位:パキスタン 160万人
  • 第3位:レバノン 110万人
  • 第4位:イラン 97万9,400人
  • 第5位:エチオピア 73万6,100人
 
 UNHCRを参考にすると、難民発生国の隣国での受け入れが多い。しかし現在、先進各国に避難する難民が増加しつつある。

難民が生まれてしまう要因

 なぜ難民が世界中で増加しているのか。理由としては、シリア国内の不安定な情勢やイスラム国と呼ばれるテロの脅威により、生活がままならないからだ。

 さらに、シリアでは、アサド政権と反体制派、イスラム国のような過激派組織の戦闘が続き罪のない人々が家を失ったり、迫害を受けた。このようなことから、地雷や戦闘を恐れ身の危険を犯してまで密航する人々が増えていった。
出典:www.unhcr.jo

日本での難民問題の現状

日本に押し寄せる難民

 1975年頃まで続いたベトナム戦争を機に、日本に来るボートピープル(インドシナ難民)が増え、1981年に難民条約に加盟。国内の法整備とともに、難民認定を始めた。日本に押し寄せる難民は、かつてはボートや貨物船に隠れて来ることが多かったが、最近ではほとんどが飛行機で来ているという。

 難民認定にはおよそ3年、長いと5年以上という歳月を要する。しかし不認定になれば、帰国か日本入国管理センターに収容を余儀なくされる。入国管理センターは、茨城、大阪、長崎の3カ所に存在する。

 日本に来ても普通の生活をするのは、なかなか難しいのが現実だ。難民のほとんどが国民健康保険に加入できないため、医療費の支払いが難しく、病状を悪化させてしまう。そんな状況でも日本に受け入れを求めて訪れる難民は少なくない。

日本への難民申請が多い国(2015年末)

  • 第1位:ネパール
  • 第2位:インドネシア
  • 第3位:トルコ
  • 第4位:ミャンマー
  • 第5位:ベトナム
 やはりアフリカからの難民よりも、アジアからの難民の方が多い。母国から比較的近いうえ、日本は自国のコミュニティもあるため、選ぶ人が多いのだ。

難民を受け入れるのに消極的な日本

 日本では2015年末時点で、難民認定を申請した外国人は過去最多となる7,586人に上った。しかしその中で難民認定されたのは、全体の1%にも満たない、27人だった。国連や難民支援協会(Japan Association for Refugees)は日本政府に対して、もっと多くの難民を認定するよう要請した。

 2014年の11人から比べると、受け入れ人数は倍以上には伸びたが、依然として99%以上が却下されているのが現状だ。これは先進11カ国の中で最低の人数だ。難民認定が1%にも満たない理由の大きな要因としては、日本政府が難民の流入による治安の悪化を懸念しているからだ。

 実際に2015年に、難民申請中の外国人が女子中学生に対し強制わいせつを犯し、逮捕されるという事件があった。そのため日本政府は難民認定によりナーバスになっている。
出典:www.commondreams.org
 先進国の中で最も難民を受け入れている国はドイツだ。ドイツの狙いとしては、難民を受け入れることによって、人道的責任を果たし、国際的信用を得ること。そして少子高齢化による労働力不足を補うためだ。

 実際に現在EUの中でもドイツ経済は好調で、GDPでも世界第4位だ。しかしやはり多くの難民を受け入れることで、問題もあった。2015年の大晦日から2016年1月1日にかけ、“ケルン大晦日集団性暴行事件”が発生した。アラブ系やアフリカ系の移民およそ1,000人によって、ドイツ人女性に性的暴行を行ったり、強盗事件を起こしたのだ。

 このようなこともあり、大幅な難民の受け入れを支持したメルケル首相の支持率は、直後の世論調査では32.5%まで低下した。日本もドイツと同じく少子化に悩まされる、産業大国だ。似ている面の多い国であるドイツの動向は今後も目が離せない。



 人道的な立場に立てば、日本とて難民の数を増やしたいが、受け入れることによって、多くの国民が被る不利益や安全性を考えると、非常に難しいのが現状だ。今後日本に近いアジア諸国で紛争が起こるようなことがあれば、より多くの難民が日本に逃れてくるだろう。そうなれば現在の難民認定の制度ではかなりの年月を要し処理しきれない。日本政府には迅速な、法整備が求められ、我々には、理解が求められている。

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