1. SFの憧れが現実に:グーグルが牽引するクルマの“自動運転”

SFの憧れが現実に:グーグルが牽引するクルマの“自動運転”

出典:www.pcworld.com
 テクノロジーは我々の予想を超える早さで進歩している。そのスピードは特にAI研究で顕著だ。チェスや将棋だけでなく、更に複雑なボードゲームである囲碁のトッププロも負かせてしまった。AIの勝利はまだまだ先だろうと考えられていたのにもかかわらずだ。

 急速に発達するAI技術は我々の日常生活に活かされ始めている。その一つが「自動運転」だ。SFに登場する空想の産物だと思われていた自動運転が、実用化されようとしているのだ。本記事では、自動運転開発の展望とその分野で世界のトップを狙うグーグルに焦点を当てていきたい。

「自動運転」と言ってもレベル分けされている

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 自動運転は、現在最も盛り上がっている開発事業の一つだ。自動車メーカーのみにとどまらず、グーグルやソフトバンクなどのIT企業も事業に参入している。2030年には市場規模は7兆円に達すると予想されており、自動車産業だけでなく社会全体を変える可能性を持った分野である。

現在はまだレベル2

 一言で自動運転と言ってもシステムが担う仕事でレベル分けされている。

 まず、レベル分けの定義を振り返ろう。NHTSA(米運輸省高速道路交通安全局)は、自動運転を下の表のように4つのレベルに区分けしている。内閣府もこのレベル分けに従っていることから、日本でもレベル4までの呼称が一般的になっている。

出典:自動運転のレベル分け、勝手に名付けてみた (2ページ目):日経ビジネス ...
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 レベル1は日産のスカイラインなどに搭載されているエマージェンシーブレーキのような自動ブレーキなどだ。レベル1が単一の補助機能だったのに対し、自動ブレーキに加えて車線維持機能が付いているとレレベル2になる。ここまでの段階では運転手が常に前方を気にしないといけないため、実質的な自動運転とは言えない。

 大きく変わるのはレベル3からだ。レベル3では一定の条件下ならば運転手が前方から目を離し、システムがすべての機能を行う。政府はこの段階を準自動走行としている。そしてレベル4は完全自動走行で、文字通り運転手は運転に一切関与しない。

 現段階で市販されているのはレベル2までの自動車までであり、レベル3の自動運転はまだ発売されていない。だが、2016年、もしくは2017年に高速道路に限定された自動運転車の販売開始を日産やアウディなど複数のメーカーが公表している。また、政府は2020年までに一般道でも自動運転運転の実用化を目標に掲げている。

「完全自動運転」はグーグルが一歩リードか

by Photographing Travis
 トヨタや日産などの日本企業は自動ブレーキなどで世界トップクラスの技術を誇っている。だが、レベル4の自動運転、いわゆる完全自動運転では残念ながら遅れをとっている。では、完全自動運転の開発でもっとも存在感を示している企業はどこか。それはGMやアウディといった大手自動車メーカーではなく、グーグルなのだ。

AI技術で他社を凌駕

 自動運転のレベルが上がっていくにつれ重要度を増していくのが、ソフトウェアの質だ。自動車メーカーは本業であるハードの面で、グーグルよりもはるかに高い技術力を持っているが、自動運転の核であるソフトではグーグルが一人勝ちしている。

 そもそもグーグルは自動運転のシステムに必須のAI開発で世界をリードしている存在だ。現在の第三次AIブームの火付け役となったディープラーニングの開発でも、自動車メーカーだけでなく他のIT企業も置き去りにしている。グーグルが開発した囲碁のシステム「Alpha碁」がトッププロを負かしたことからも技術力の高さを読み取ることができる。

圧倒的なテスト走行距離

 自動運転を実現させるためには、信号や人、自転車などを見分ける能力を持ったシステムが必須になる。そのシステムを可能にするにはテストを実施し、ディープラーニングに多くの判断材料を与えることが必要だ。早くから完全自動運転の開発を始め、目標を一本化したグーグルはテスト走行距離で他社を圧倒している。
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 グラフを見るとわかるように、グーグルのテスト実績は他社に比べ圧倒的だ。ディープラーニングはデータから物体の特徴づけを自発的に行う。走行距離が増えるほどそのデータも多くなり、正確なシステムの構築に近づいていくのだ。

他社にない付加価値

 またグーグルは他社にない強みを持っている。というのも、グーグルはただ自動車を販売する以上のサービスが可能なのだ。例えば、無人自動車を指定の場所に配車し指定場所に連れていく、という無人タクシーのサービスだ。

 こういったサービスはグーグルだからこそなせる技だ。他のどの企業も持っていないグーグルマップという地図情報は、標識や信号の位置まで入力された高度な地図情報で自動運転に非常に役立つ。

 また、グーグルが巨大なクラウドを保有していることも自動運転戦略のカードとなる。単一の自動車に掲載されたAIで自動運転するだけでなく、他の自動車とクラウドで繋がることでさらなる適切な判断ができる。

それでも、まだ山積みの課題

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 世界のトップ企業が本腰を入れて開発を進める自動運転に人々の期待も高まっている。2020年までに自動運転車をタクシーなどで取り入れるために日本政府も協力的な姿勢を見せている。だが、自動運転を実用化する上で、まだ課題は山積みだ。より安全で快適な自動運転のための技術の改善はもちろん、自動運転を受け入れる社会の態勢作りが急務だ。

事故の責任は一体誰が?

 真っ先に挙げられる問題は、事故の責任の所在だ。ドライバーが負うのか、自動車メーカーが負うのか。自動運転により事故が減ることが期待されているが、ゼロになるわけではない。実用化されると自動運転の事故をめぐる訴訟が相次ぐだろう。実用化の前に責任の所在を定めるのは困難なことなので、判例を通じて基準が決まっていくと考えられる。

 また、自動運転によってドライバーが運転からどこまで解放されるか決める必要がある。ドライバーは運転中にスマホをいじることやゲームをすることは許されるのか。究極の問題は無人運転の合法化だ。自動運転のメリットをできるだけ制限したくはないが、安全面から考えると実用化してすぐは慎重な法制度の元で運用されそうだ。


 自動運転の開発が急速に進む一方、実用化への不安も消えない。だが、事故の減少、弱視や身体障がいによる交通弱者が運転できるようになる可能性など、自動運転によるメリットは多々ある。何より、SF映画に出てくる空想の産物だったはずのものがつい数年後に私たちが乗っているかもしれない。そう考えると興奮せざるにはいられない。

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