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46億で落札された高額ドメイン「.shop」:拡大し続けるEC市場の“台風の目”となるか?

菊池喬之介

2016/09/19(最終更新日:2016/09/19)


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46億で落札された高額ドメイン「.shop」:拡大し続けるEC市場の“台風の目”となるか? 1番目の画像
出典:learningfolder.net
 「.com」「.net」あるいは「.jp」「.fr」など、企業や国を意味するドメイン。普段インターネットで目にすることは多くても、大して気にしたことがないという人も多いだろう。だが、近年このドメインが注目を浴び始めているのをご存知だろうか。特に「.shop」というドメインは世界で最も価値が高いドメインと言われ、今年の初めに46億円で落札された。我々の生きるインターネットの時代、ドメインがネットビジネスでさらに重要な要素となり始めている。

今注目の「ドメインビジネス」とは

 ウィキペディアでもの調べするとき、ユーチューブで動画を見るとき、お気に入りの芸能人のブログを覗くとき、ネット上でサイトを観覧するときにいつもアドレスバーに表示されるのがドメインだ。ここまでは読者の皆さんも周知の通りだろうが、ここに様々な意味があるのをご存知だろうか

いろいろな意味を持つドメイン

 一言でドメインと言っても実は4つの部分から構成されている。
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出典:www.nic.ad.jp
 本記事で取り上げるのはドメインの末部、TLD(トップレベルドメイン)だ。また、TDLの中にも大きく分けて2種類ある。

 1つ目はgTLD(分野別トップレベルドメイン)。例えば下のものがgTLDだ。

gTLD(分野別トップレベルドメイン)

  • com:商業組織用 世界中誰でも使える
  • net:ネットワーク用 世界中誰でも使える
  • biz:ビジネス用 ビジネス利用者のみ使える
  • museum;博物館、美術館用 公共の博物館、美術館等のみ使える
 2つ目はccTLD(国コードトップレベルドメイン)だ。このTLDは各国、各地域に割り当てられている。同じccTLDでもドメイン名登録を全世界に公開しているものと、国内、地域内に限定しているものに分けられる。日本のccTLD、jpは後者である。

ccTLD(国コードトップレベルドメイン)

  • jp:日本
  • us:アメリカ
  • fr:フランス
  • au:オーストラリア

新ドメイン解禁で高まる熱

 なぜ今となってドメインが注目を浴びているのかというと、今まで厳しかったgTLDの審査を大幅に緩和することが決まったからだ。全世界のドメインやAPアドレスを管理する非営利団体のICANN(アイキャン)が2008年に緩和の方針を決定し、2012年には申請を受付た。7種類のから始まり2011年になっても22種類しかなかったgTLDだが、最初の申請期間で1,930件に上り順次追加されている。

 新gTLDが生まれることで期待されている企業のメリットは以下のとおりだ。

レジストリとしてドメインを販売
独自ドメインによる信頼性の高いWebサイトなどの運営
フランチャイズや店舗など、販売網に活用
顧客向け、会員向けなどのサービス提供
プロモーションでの利用など、認知度の向上

出典:新gTLD:gTLDの自由化-ドメイン・レポート[ドメインネーム.jp]
 企業でなく個人のメリットももちろんある。今までドメインが限られたため、新しくアドレスを作っても被ってしまうケースが多かったが、ドメインが増えることでアドレスの選択肢も増えるのだ。

46億円で「.shop」を落札したGMO

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出典:recruit.gmo.jp
 先述の通り、今注目を浴びているドメインの中でも世界一の潜在能力を持っていると言われているのが「.shop」だ。そして、この「.shop」を今年の1月に日本のGMOが落札し、話題となった。

Amazon、Googleと競合して勝ち取った「.shop」

 2016年1月に行われた「.shop」の運営権利をかけたオークションは、ドメインをかけたオークションで最大のものとなった。入札企業はAmazonやGoogleなど世界の超一流企業を含めた計8社。GMOは名だたる企業と競合し4150万1000ドル(約46億円)で落札した。この額は、過去最大額だった「.app」の2500万1000ドルを大幅に超えた。 

現在、運用に向け売り出し中

 2016年の7月1日から8月31日にかけて行われた商品やブランド名を保有する商標権者への先行登録では申請件数が1,182件に上り、一般向けの新gTLDの登録では過去最高を記録した。一般向けの登録が始まる9月からはさらなる盛況が予想される。

 9月からは一般向けの先行登録がダッチオークション形式で行なわれている。ダッチオークションとは、入札者が多くなるほど値段が吊り上げられていく一般に知られているオークションとは違う。該当期間の初日が最も値段が高く、日が経つにつれ低くなる仕組みだ。なぜこのような形で取引が行われているかというと、すでに登録されているドメインは別のユーザーが使用することができないからだ。

 そして一般向先行登録期間が終わると、均一の価格設定がされた通常の一般期間に入る。この期間からは登録は完全に早い者勝ちなので、利用されたい方はぜひお早めに。

潜在能力No.1ドメインで伸び続けるEC市場を狙う

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出典:techhive.com
 46億円という大金を投じて獲得した「.shop」。このドメインにはどれだけの可能性を秘めているのだろうか。GMOが思い描くドメインビジネスとは何か、本項で分析していきたい。

最も高い評価を受けたドメイン「.shop」

 「.shop」は運営が開始される前から高い評価を受けてきた。

また、北米・欧州を中心としたドメイン名売買業界の大手企業であるSedo GmbH社が、すべての新gTLDを対象に5つの観点で潜在価値の評価を行ったところ、「.shop」が最も潜在価値の高いドメイン名という結果も出ている。

出典:登録は早い者勝ち! 新ドメイン「.shop」で、ネットショップビジネスを強化 ...
46億で落札された高額ドメイン「.shop」:拡大し続けるEC市場の“台風の目”となるか? 5番目の画像
出典:netshop.impress.co.jp
 ドメインが持つ意味の明確さ、覚えやすさから「.shop」はこれからのECサイトで必須のドメインだ。ウェブサイトの目的とブランドをシンプルに打ち出したい企業にとって覚えやすいドメインはウェブサイト運営で必要不可欠なのだ。

  また、「.com」や「.jp」ではすでに他の人がとってしまったドメインを「.shop」で獲得することができる。シンプルなドメインは覚えやすいだけでなく、ユーザーの信頼を得ることができる。手作り感が出ていたり、長すぎて適当な印象を受けてしまうドメインだとユーザーから敬遠されがちになる。

GMOだからできるドメインビジネス

 高額でドメインを獲得してまでGMOが成したいことは何なのだろうか。数あるドメインの中から「.shop」をこれだけ欲しがった理由でまず挙げられるのは、成長著しいEC市場に参入するためだ。EC市場は2015年で13.8兆円(前年比7.6%増)と急速に拡大しており、同時にEC事業の成功に必須なドメインの需要も増える見込みがある。

 また、「お名前.com」を運営するGMOはドメイン管理の実績と技術力に定評がある。GMOは1999年にアジアで初めてレジストラ(ドメイン登録サービス事業者)にICANNから認定されているドメイン登録の先駆者だ。

 さらに、GMOはEC事業に必須なショッピングカートのサービスやクレジット決済のサービスも行っていることから「.shop」をセットにして販売することも考えているという。このように付加価値をつけることで低価格に設定し、ECサイト開設を身近なものにし、さらなるEC市場の活性化を狙っている。


 何だか当たり前のようで注目を集めることが少ないドメイン。だが、何かにつけてインターネットに頼ってしまう現代、ドメインは無限の可能性を秘めている。EC市場が拡大するにつれ、その形態も多様化している。一般的なビジネスマンや主婦/主夫が仕事の片手間でECサイトを運営する時代もそう遠くない。もしあなたがEC事業を始めてみたいと思いたったのならば「.shop」を使ってみてはどうだろうか。

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