1. 一握りの人間しかなれない「審判員」という職業:“試合を司る”資格とその報酬とは?

一握りの人間しかなれない「審判員」という職業:“試合を司る”資格とその報酬とは?

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 その日「悲劇のドラマ」は、審判の手によって生み出された。9月1日に行われた2018年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選にて、サッカー日本代表はUAEと対決するも1-2で惜敗。この勝負をわけたのは、ゴールラインを割っているかに見えた浅野拓磨選手のシュート。結果としてゴールにはカウントされず、Twitter上では“世紀の誤審”、“幻のゴール”と話題になった。そこで今回はサッカーのほか、野球、バレーボールの「審判員」という職業をご紹介しよう。

各競技の審判員(必要な資格、ギャランティー)

#1:サッカー

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by shawnzrossi
 審判員の資格は、原則として、都道府県サッカー協会の主催する審判講習を受講し、4級から順に3級、2級、女子1級(女性のみ)、1級と昇級試験を受けていくことで取得できる。

 1級、女子1級審判員になるためには、JFAまたは地域サッカー協会が主催する認定審査会に参加し、審査に合格する必要がある。ちなみに、1級審判員の受験資格は、2級取得後2年以上が経ち、実績のある34歳以下の者で、各地域サッカー協会の推薦を受けた人に限られる。

 1級の中でもPR(プロフェッショナルレフェリー)と呼ばれる人たちがJリーグや、W杯などで審判員をしている。日本にPRと呼ばれる人は、現在男女合わせて10数名ほどで、年収は公表はされていないが1,000万円〜2,000万円ほどと言われている。

#2:野球

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 プロの審判員になるためには、NPBアンパイア・スクールを受講する必要がある。さらに審判員の条件として、身長175㎝以上、裸眼視力1.0以上の制限がある。2014年、2015年の採用人数はともに、4人ずつ。狭き門だ。

 採用後もすぐに、1軍の試合で審判員をすることにはならない。採用後は各球団の春季キャンプや紅白戦に参加し、審判員としての技術を高める。さらにアメリカの審判学校への短期留学も行われている。帰国後に2軍戦の試合で審判員を務め、結果次第で1軍の試合へと昇格していく。

 プロ野球の審判の年収は、1軍で年間に多くの試合をこなすようになれば1,000万円をも超えるという。またプロ野球の場合は、1年ごとに契約更新がある。単年契約が年俸制で結ばれるのだ。最低年俸は、750万円。さらに、1試合ごとに出場手当が支給される。審判員のポジションによって出場手当も違い、ローテーションによって順々にまわしていく。

 選手同様に、審判員も各地を移動する。休日は選手と同じく、月曜休みだ。シーズン中は試合後に反省会が行われるため、帰宅が深夜になることも多いという。

#3:バレーボール

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 日本バレーボール協会の審判員の資格は、6種類ある。名誉審判員、A級審判員、A級候補審判員、B級審判員、C級審判員、レフェリーインストラクターが公認資格だ。Vリーグ(V・プレミアリーグ)で審判をするのは、A級の審判(候補審判員も含む)だ。

 しかし、国内最高峰のVリーグで審判員を務めても、報酬は1日あたり数千円程度。試合もほとんど週末に限られるため、国内にはバレーボールの審判員として生活をしている人は存在しない。

オリンピック、W杯の審判などの主要国際大会の審判員の決め方

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 国際審判員には年齢制限があり、男女共に45歳以下という決まりがある。1級審判員の資格を有するものの中から、JFAからFIFAに推薦される。その後FIFAに承認され、指名を受けることで審判を行うことができる。

 W杯の主審は、1国から2人以上選ばれることはない。体力テストや筆記試験を経て、審判員の適性を時間をかけて判断していく。体力テストの例では、40mを6.2秒以内で6回走るというものがある。1度でもタイムを切れなかった場合は不合格となる。1試合で走行距離が10kmを超えると言われるサッカーの試合の審判員を務めるには、かなりの走力・体力が求められる。

 副審は主審の決定後に決められ、主審が副審を推薦する。選考方法は主審の時とあまり違いはないが、推薦した副審の合格率が低いと推薦した主審まで不合格になることもあるため、慎重に選考される。
 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、世界各国の24人の審判団によって審判員が構成された。しかし審判員の大半がアメリカ人、という事態が起こっていた。他のスポーツの国際試合ではなかなか見られない状況だ。日本やアメリカでこそ盛んなスポーツである野球だが、世界的に見ると足りない部分もあるスポーツなのだ。

 また野球後進国の国では、世界共通のジャッジをできる人がいない。今後、世界的に審判員育成をしていく必要があるだろう。
 世界選手権やオリンピックのような国際試合で審判員を務めるためには、国際バレーボール連盟の公認審判員候補にならなければならない。そのためには、日本バレーボール協会が開催する“I(アイ)スクール研修会”に参加しなければならない。

 そこで2年以上のスクール活動及び英語力検査に合格後、日本バレーボール協会から国際バレーボール連盟に推薦してもらえる。国際審判員候補として実績を積み、世界大会にて主審3試合以上の公式記録を提出すると国際審判員と認められる。年齢は40歳以下に限定される。

各競技で起こった“世紀の誤審”

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#1:サッカー

 サッカー界の世紀の誤審といえば、1986年のメキシコワールドカップの準々決勝だろう。当時アルゼンチン代表だったマラドーナのゴール手前で、こぼれ球を手で押し込んだものが有名だ。審判はこれを見逃しゴール判定となり、30年経った今もなお“神の手”という言葉が残っている。

#2:野球

 野球界の“世紀の誤審”は、2006年WBCの日本対アメリカ戦で起こった。3-3の同点で迎えた日本の攻撃。8回表1アウト満塁の場面で、岩村のレフトフライに、三塁走者西岡がタッチアップし、セーフに。日本が勝ち越したかに思われたが、アメリカベンチが三塁走者のタッチアップが捕球よりも早かったと抗議、まさかの判定が覆り、9回裏、日本はサヨナラ負けを喫した。

 この判定は、敗戦した日本だけでなく、アメリカでも物議をかもし、“アナハイムの悲劇”と言われた。

#3:バレーボール

 バレーボールでの誤審は、記憶にまだ新しい2013年の日中戦で起こった。第3セットの24ー25から日本側がスパイク、ワンタッチを奪い同点に追いついたかに思われたが、ワンタッチは認められず、このセットを落とした。その後もスパイクが度々アウトの判定を取られるなどし、日本は敗戦した。
 
 解説者の川合俊一氏も、ブログで「今日の日本は素晴らしい試合をしたが、あれだけ主審の誤審があるとさすがに勝てない」と落胆の声を漏らした。SNS上でも「主審に負けた」など批判の声が相次いだ。

審判の限界とは?

チャレンジ制度

 先日のUAE戦でも導入を求める声が相次いだ、チャレンジ制度。今回紹介している3つのスポーツの中で、日本で取り入れられているのはバレーボールだけ。チャレンジ制度とは、きわどいの判定をどちらかのチームの監督がモニターでのリプレイを要求、判定するシステムだ。

 野球でもメジャーリーグにおいて近年取り入れられたことを機に、日本でもチャレンジ制度の導入の機運が高まっている。しかし、チャレンジ制度の導入を阻む壁のが、金銭の問題だ。メジャーリーグでもシステム導入には10億円以上の費用が投じられたという。

 さらにサッカーや野球に取り入れられない理由として挙がるのが、プレー進行の遅延である。チャレンジ制度が実際に導入され、その権利を行使するとなると試合の中断は免れない。プレーの中断による試合の流れの変化も危惧されている。

 しかし、コストや試合の雰囲気以上に判定の正確性を求める声は多いため、チャレンジ制度の導入はそう遠くないのかもしれない。

審判の定年

 紹介した各競技にも一般の職業同様に定年がある。以下に3スポーツの定年をまとめる。

サッカー、野球、バレーボールの審判の定年

  • サッカー:国際試合の審判の定年は45歳。国内の試合は、以前は50歳までだったが、2007年に規約から削除、以後自分で引退の覚悟をした時。
  • 野球:58歳まで。ほかにも判定のミスが多くなるなどして、契約更新されなかった時。
  • バレーボール:55歳まで。A級審判員で4年ごとの更新、A級審判員候補は2年更新で、契約更新しなかった時。
 各競技それぞれ、一般の職業より定年が早いことが分かる。身体的な面がより必要とされる職業なのだ。


 今回3競技の審判と審判員を紹介してきた。普段フォーカスされない「審判員」という職業だが、その実態は厳しい制約の下、ごく一握りの人しか務められないことがわかった。試合を司る審判員とはーートップ選手のパフォーマンスを、最も良いカタチで発揮させられるーー縁の下の力持ち的な存在なのだ。

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