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「高学歴」はむしろ邪魔? 年収200万円以下の“ワーキングプア”の実態

Ruka Kobayashi

2016/09/23(最終更新日:2016/09/23)


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「高学歴」はむしろ邪魔? 年収200万円以下の“ワーキングプア”の実態 1番目の画像
出典:www.nbcsandiego.com
 “働く貧困層”と訳されるワーキングプアとは、アメリカで言われ始めた言葉であり、資本主義の先進国に見られることが多い。近年、ワーキングプアは海外だけでなく日本国内でも問題視されている。また、中学や高校の中退者がそれに当てはまるように思われがちだが、実際は有名大学を卒業したような高学歴ながら、ワーキングプアから抜け出せない人が増えている。何故、“高学歴”にも関わらず、そのような事態に陥ってしまうのだろうか。

“ワーキングプア”とは

貧困線以下で労働する人々のこと。「働く貧困層」と解釈される。 これまで貧困はよく失業と関連づけられてきたが、しかし雇用に付きながらという新しい種類の貧困として米国・カナダ、さらにイタリア・スペイン・アイルランドなどの先進国で見られると論じられるようになった。

出典:ワーキングプア - Wikipedia

 日本の場合、国民貧困線(統計上、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標)が公式設定されていない。そのため、派遣社員、あるいは正社員としてフルタイムで働いていたとしても、生活の維持が困難であることや、生活保護の水準にも満たない収入しか得られない(年収200万円以下)労働者の社会層と捉えられることが多い。

ワーキングプアの男女別の人口比率と手取り

 男女別のワーキングプアの年収を調べてみると、年収200万円未満の男性は、全体の約10%、女性は全体約40%が200万円未満となっている。意外にも女性が、男性の四倍もワーキングプアに陥っているのだ。年齢は30代に多く、独身でかつ転職を繰り返している人、結婚・出産・育児などで仕事を諦めざるを得ない人が、十分な賃金を獲得できていない場合が挙げられる。

“ワーキングプア”の手取り例

  • 年収が200万円だった場合:手取額は月額約14万円
  • 年収が100万円だった場合:手取額は月額約7万円
  • 年収が50万円だった場合:手取額は月額約3万円
 内容としては非正規で働いていても昇進はなく、ボーナスもない、時給も上がらないという場合が多い。パートタイマーの場合は昇給があっても10円程度。このような状況では30~50代での年収の上昇率は、ほぼ無いに等しいというのが予想される。

貧困に苦しむ生活の実態

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出典:www.ppic.org
 日本労働組合総連合会が調査した結果によると、今後の収入アップも見込めないと考える人がワーキングプアの80%弱、将来に希望が持てないと考える人が60%を超え、暗澹たる生活実態を表していることが分かる。

 一日の食費は、平均して、3食で約700円~800円(一食約230円〜)程度。東京都内のランチ代一食分にも満たないような金額だ。

 また、生活が苦しいために実家で生活をしている人も多い。この傾向に拍車がかかってしまった場合、「親の持ち家が老朽化した場合」、あるいは「親が病気に罹ってしまった場合」などに、低収入の中高年の多くが住む家を失ってしまうという深刻な問題に発展する恐れがある。

なぜ“高学歴”ワーキングプアが生まれるのか

 高学歴にして、ワーキングプアになってしまう特徴として、いくつかの理由が上げられる。

・将来のビジョンを描けられない:修士号、博士号まで持っているのにその先の将来像が全く描けていない。

・常に受動的になっている:高学歴という育ち方をしたため、基本的に受動態であり、就職活動において能動的に動くことができない。

・求められる努力のギャップ:一度は職に就いたものの、勉強だけに力を費やしてきたことにより、それ以外の強みが少ない。学生時代と、社会との努力のギャップに苦しむ。

・奨学金返済による苦悩:大学院修了時、学位とともに奨学金の長期返済を抱えたまま、社会に出なければならない。

・大学院卒という需要性:大学院卒の専門知識が必要な仕事は、研究職など限定的。大学院進学者は、25〜28歳ぐらいの年齢で就職活動をすることになる。その際、年齢は上なのに「新卒」か年齢の割に職歴のない「中途未経験」という不利な立場となる。

貧困から抜け出す、具体的な対策

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出典:www.rabobank.com
 高学歴でありながらワーキングプア状態になっている人々は、プライドの高さと社会経験の無さ、自分をマーケティングする能力が低いことが要因だと考えられる。逆手に取れば、「学歴」+αがあれば、周囲と差を付けることも可能だ。すると、自分の個性や自分だけにできること(オリジナリティ)を相手に伝えやすくなる。

 しかし、問題は当事者だけにあるわけではない。日本学生支援機構の奨学金貸与は、過去10年間で2.7倍に増額しているが、そのほとんどが有利子、返還性のものである。アメリカやイギリスで実地されている給付型の奨学金やドイツやフランスでの授業料の無償化や低廉が充実している中、日本は授業料滞納者、中途退学者が増加し続けているのが現状である。


 我々の国、日本では、とりわけ高等教育に対する自己負担の割合が大きく、奨学金等を受けたとしても、その膨大な額の返還義務は過酷で、不安定な就職活動とともに当事者の肩に重くのしかかる。社会人になった時点で、借金を抱えていることになるのだ。

 “ワーキングプアの現実”はそれぞれの大学や研究機関の将来、そして日本の科学・技術の未来がかかっている大きな課題でもあることを認識しておきたい。

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