1. 西田宗千佳の「トレンドノート」:「対スマホ」でなく「スマホ共存」が家電のトレンド

西田宗千佳の「トレンドノート」:「対スマホ」でなく「スマホ共存」が家電のトレンド

by lukew
 みなさん、はじめまして。今回から連載を担当する、西田宗千佳です。

 私は普段、テクノロジーやITの世界でなにが起きているかを中心に取材し、みなさんに記事をお届けしている。特に、ハードウエアが作られ、生まれてくる背景と、それを支える技術やサービスの話に興味があり、日々さまざまな人々に取材を行う毎日だ。本連載でも、「みなさんが手に取るハードウエアの後ろにあるもの」をお伝えしていければ、と思っている。ご愛顧いただければ幸いだ。

 さて、今回は序論として、今のハードウエアがどんな状態にあるのかをちょっと考えてみたい。

スマートフォンと連携していく今の家電製品の在り方

 みなさんが欲しいと思う「モノ」はなんだろう? 実際のところ、5年前と今とでは大きく変わってしまっている。それは中心にスマートフォンがあるか否かだ。

 例えばテレビ。2011年に地デジへの完全移行が終了したが、その後、テレビの販売数量は減った。下記の図は、一般社団法人・電子情報技術産業協会(JEITA)が発表しているデータから筆者が作成したものだ。青の線は29型以下、オレンジは37型以上のテレビの国内販売台数を指している。29型以下、すなわち小型でそれぞれの個室に置かれるテレビについては、2011年以降急速に販売台数が減っているのがわかると思う。この背景にはスマートフォンの普及がある、と考えていい。1980年代以降、テレビは一家に一台から「一部屋一台」になった。暇つぶしの王様はテレビであり、話題の中心もテレビだった。

 だが、スマートフォンが普及すると、もっとも日常的な暇つぶしはスマホの中に存在するものになった。個室にいる時、わざわざテレビを観る必要はない……と思う人が増えていったために、個室のテレビの買い替えは進んでいない。

 一方で、「すべてがスマホに飲み込まれた」と考えるのは間違いだ。

 上記の37型以上のデータ(オレンジ色)を見ていただきたい。こちらは少しずつ数が増えて、小型のものを追い抜いているのがわかる。37型以上のテレビとは、リビングに置かれる大型のものだ。すなわち、みな「テレビがいらなくなった」のではない。リビングで見るものとしてのテレビは必要で、それを買うなら、小さなスマホとは異なる、大画面で立派なものへと移行しているのである。現在、4Kテレビの販売比率は金額ベースでは半分を超えており、大型化・高品質化に向かっている。

 すなわちこれは、「スマホをベースとして、ピンポイントに良いものを求める人々が増えている」ということを示している。たいていのことがスマホで賄えるようになった現在、中途半端なものはもういらない。カメラもテレビも、低価格なものはすべてスマホに巻き取られた一方で、スマホでは簡単に代替できない、高品質なものの価値はより高まっている。自分の耳に合わせた30万円を超えるヘッドホンを使い、スマホから音楽を聴く人もいる。スマホでは360度全天周の写真をとるのは難しいが、リコーの「THETA」のような専用のカメラを使えば、その場の風景を撮影することができる。ゲームだって世界的に見れば、高価なゲーム用PCや「PlayStation 4」を使った「濃いゲーム」を楽しむ層でお金が回るようになっている。スマホが基準を示すことで、「よりお金を使うべきもの」が見えてきた、ともいえるだろう。

 一方で、それらの機器も「スマホ」と無縁ではない。スマホと連携して動いたり、撮影したデータをスマホに転送して楽しんだりする機能は必須だ。脱スマホでもポストスマホでもなく、「スマホとともにある」のが、今の家電製品の在り方なのだ。

 というわけでこれから、そんな「スマホと、その近くにあるハードウエア」の話を毎回お伝えしていきたいと思うので、お楽しみに。

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