1. 「KAROSHI(過労死)」が英字辞書に登録されて数年:世界の“働く”、日本の“働く”を考える

「KAROSHI(過労死)」が英字辞書に登録されて数年:世界の“働く”、日本の“働く”を考える

by Sam T (samm4mrox)
 Oxford English Dictionary Onlineには「KAROSHI」という単語が登録されている。日本語の「過労死」が、そのまま英単語として世界で認知されているのだ。世界中から“働き者が多い”と思われている日本は、果たして本当に働きすぎなのか? その実態を、世界と比較していきながら紹介したい。

世界の労働時間ランキングTOP5

by ILO in Asia and the Pacific
 まずは日本以外の国の労働時間を見ていこう。ランキングデータは、経済協力開発機構(OECD)によるものを使用。OECDが調査の際に使用しているデータは、各国の政府が発表しているものだ。日本の場合は、厚生労働省の「毎月勤労統計」を使用。これには事業者が答えた数値が反映されている。

1位:メキシコ

 1位は、南アメリカのメキシコ。平均年間労働時間は、2,228時間。有償・無償合わせると1日10時間働いていることになる。

 しかしメキシコは、2016年の世界幸福度ランキングで“8位”と、TOP10にランクインしている。この結果から、労働時間ランキングはトップであるものの、楽しく生活していることがうかがえる。

2位:コスタリカ

 2位は、中央アメリカのコスタリカ。平均年間労働時間は、約2,210時間。

 コスタリカの主要産業は、農業・製造業・観光業。最も従業者率が高いのが、サービス業なので観光業に従事している人が多いことがわかる。

3位:韓国

 3位は、お隣の韓国。平均年間労働時間は、2,124時間。

 韓国では、慢性的な長時間労働が問題となっている。30代の過労死にまつわる労災申請が増加傾向にあるのだ。労災申請をしても、認められるのは30%という数字に留まっている。

4位:ギリシャ

 4位は、エーゲ海に面するギリシャ。平均年間労働時間は、2,026時間。

 ギリシャの労働時間が長くなっている原因は、ギリシャ人に多い自営農家や小売店主は、雇用契約の時間よりも長く働く傾向にあることだ。長時間労働が必要な仕事が労働市場の多くの割合を占めていることで、4位という結果になったと考えられる。

5位:チリ

 5位は、南アメリカのチリ。平均年間労働時間は、1,990時間。

 チリは国の決まりで週5日以上、6日以内で働くことが求められている。この法律から、週6で働いている国民も少なくない。

 平均年間労働時間の上位5か国を紹介したが、日本がランクインしていないことに驚いた読者もいるのではないだろうか。日本の順位は全体の21位で、平均年間労働時間は1,729時間。TOP10にすら入っていないという、意外な結果だ。

日本国内での過労死の多い職種

by tokyoform
 平均年間労働時間が21位とはいえ、“KAROSHI”という英単語の元の言葉は日本語である。

 過労死の言葉の意味については以下の通りだ。

仕事上の過労やストレスが極度に達して起る死亡。突然死と呼ばれるケースもある。クモ膜下出血や心筋梗塞など脳血管疾患,虚血性心臓疾患によることが多い。

出典:過労死(かろうし)とは - コトバンク
 過労死は仕事上の過労・ストレスが極度に達し、脳や心臓に悪影響を及ぼすことによって起こるのだ。では、どんな職種で過労死をする人が多いのかについて、三つの事例を見ていきたい。

① チェーン飲食店店長

 2008年、26歳の女性が過労自殺した事件が起きたのを覚えているだろうか。女性は、チェーン飲食店に勤務していて、「朝5時までの勤務が1週間連続」「最長で連続7日間の深夜勤務を含む長時間労働」「1か月の残業が約140時間」という過酷な労働条件のもとで働いていた。

 飲食店では、人員不足による社員の過酷な勤務体制や長時間労働は当たり前と化している。客単価の低い飲食業界では、人件費をコストとして考え、できる限り少人数で運営をしようとする。人員不足と人件費カットによって、特に店長の負担はより大きいものとなってしまうのだ。

② IT企業の下請けSE

 一日中パソコンと向かい合って作業をするSE。システム構築には納期がある。納期までに終わらせるために徹夜、休日返上、サービス残業をすることで、労働時間が長くなってしまう。

 また、下請けは仕事を断ることができない。親請けの指示による納期の短縮もあり、労働時間・心労がたまる職種といえる。

③ 大手広告代理店の営業

 華やかに見える「広告業界」。

 1991年、大手広告代理店の電通に勤める24歳の男性が過労自殺している。電通といえば広告業界のトップ企業である。亡くなった男性の月平均残業時間は、残業における会社の「月別上限時間」の60~80時間を大幅に超過した147時間にのぼる。1日約6時間の残業。8時間の通常勤務と合計すると、1日に14時間働いていたことになる。

 営業担当には月売上のノルマがあり、残業も当たり前。華やさの裏側には、過労死というリスクも潜んでいたのだ。

世界の労働時間が少ない国の実態とは

 労働時間の多い国や、過労死について紹介してきたが、労働時間の少ない国とはどんな国なのだろうか。先述した世界の労働時間ランキングの下位3か国を見てみよう。

労働時間の少ない国 TOP3

  • 1位:ドイツ(平均年間労働時間:1,366時間)
  • 2位:オランダ(平均年間労働時間:1,420時間)
  • 3位:ノルウェー(平均年間労働時間:1,427時間)
 2000時間を超えていた上位5か国と異なり、いずれも1500時間以下である。さらに、これら3か国は日本の上をいく労働生産性を誇っている。

 2014年のOECD加盟国の労働生産性をみると、第2位にノルウェー。8位にオランダ、12位にドイツという結果となっている。

 すば抜けて労働時間の短いドイツだが、働きやすい環境が整っている。毎年約30日の有給消化率はほぼ100%、ほとんど残業がない、労働者の権利が守られている、といった環境があるからこその生産性の高さなのだ。


 日本の平均年間労働時間は21位という結果だが、OECDに提出している厚生労働省のデータは事業者の申告によるものなので、現実とは異なっている可能性もある。長時間労働、低効率な働き方は国も問題視している。「脱時間給」「非正規雇用の一掃」「月末金曜15時退社」など、国会や政府でも働き方を見直す動きもあり、一刻も早く議論が実を結ぶ日が来ることを祈る。

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