1. 過去最悪の赤字へ落ちる“大塚家具”:知っておきたい「お家騒動」の顛末と教訓

過去最悪の赤字へ落ちる“大塚家具”:知っておきたい「お家騒動」の顛末と教訓

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匠大塚、大塚家具の公式サイトより
 IDC大塚家具(以下大塚家具)の経営権をめぐる父娘対決がワイドショーを賑わせたことは記憶に新しい。委任状争奪戦(プロキシファイト)の結果、経営権は娘・久美子氏が勝ち取った。

 父の経営方針と訣別し、新たな道へと進んだ久美子氏の大塚家具の経営は現在、どのような状況になっているのだろうか。久美子氏のとった経営戦略とその結果を中心に、父・勝久氏の現在の動向と経営戦略も紹介する。

 二人の戦略を比較することによって、ビジネスシーンで生かせる教訓を見出すこともできるだろう。

IDC大塚家具の“お家騒動”の顛末

 始まりは2014年7月、それまでも社長に就いていた久美子氏が社長を解任されたことから、この騒動は始まった。社長解任によって同社会長である、父・勝久氏が社長を兼任することになり、経営の円滑化を図ったのである。

 そもそも、勝久氏と久美子氏の間には経営方針に関して考え方の相違があった。

 「確かな価値との出会い」を掲げる勝久氏は、家具単品を売るのではなく、住環境の中にある家具をトータルコーディネートとして売ることにこだわっていた。顧客が納得できるものを長い間使ってもらうために、会員制という他にはない接客方法を生かし、店員とマンツーマンで、顧客は納得できる家具を買う。

 しかし、こういった一対一の接客に抵抗感を覚える消費者も少なくなく、近年の売り上げは伸び悩んでいた。

 それに対し久美子氏は、ある視点では閉鎖的ともいえる従来の会員制と接客方法を見直し、大塚家具のイメージを「よりオープンに」することにより、今まで大塚家具への入店をためらっていた層にも販路を拡大できると考えていた。会員制などの言葉によって高級店のイメージを持たれている大塚家具だが、中価格帯のものも置かれている。

 そのような、あまり知られていないIDC大塚家具の事実を、より多くの人に見てもらい、知ってもらえれば売り上げは上がる、というのが久美子氏の考えだった。

 「価値あるものを提供する」という考えは勝久氏も久美子氏も共通して持っていたが、提供のプロセスに大きな違いがあった。このプロセスの違いこそが二人の確執を深める要因になったのだ。

 2015年1月に久美子氏が社長に復帰すると、勝久氏はすぐに社長解任を株主提案。また、娘も負けじと勝久氏の会長解任を株主総会で決議、同年3月の株主総会で、勝久氏の解任が決まった。

振り返る、大塚家具の“お家騒動”

  • 同社会長であった父・勝久氏の方針:
    会員制という接客方法でトータルコーディネートを行う
  • 同社社長であった娘・久美子氏の方針:
    中価格帯へ展開し、よりオープンな雰囲気に
  • 株主総会の結果、勝久氏の会長解任が決定

株主総会で勝利するも業績は……

 株主総会で父・勝久氏に勝利した娘・久美子氏。自身の経営方針にのっとり、「よりオープン」な店づくりを進めているが、業績は低迷している。

 2016年12月期第2四半期の決算では、純利益で約25億円の赤字を発表。前期(1〜6月)の数字を踏まえ、通期の純利益予想は、6月に下方修正された16億円の赤字からさらに43億円へと拡大。大塚家具、過去最悪の赤字となる見込みだ。期初は、5億円の黒字を見込んでいたにもかかわらず、ここまで業績予想が逆転してしまった理由はなんなのか。

 騒動による顧客離れもあっただろうが、もっとも大きな要因は、久美子氏が変えようとした従来のブランドのイメージそのものだった。

 久美子氏が入りやすい店づくりをしたとしても、従来からある「大塚家具は高級店だから敷居が高い」という感覚を持つ人が完全にいなくなったわけではない。久美子氏の掲げる新しいイメージが定着するには時間がかかるだろう。変革がすぐに効果を発揮するわけではないのだ。

 それに対し、これまで大塚家具を利用していた客層は、従来の店の雰囲気との差に戸惑ってしまう。これまで利用していた利用客が好んだ会員制と接客方法をリニューアルしたことで、逆にこれまでのリピーターが大塚家具に訪れる意味をなくしてしまったといってよい。

 また、久美子氏が新たなターゲットだとした中価格帯を購入する層には競合他社が多いということもある。しかし現時点で、大塚家具は中価格帯の競合他社と競えるほどのブランドイメージを確立しているとはいえない。そういった層が家具を購入しようと考える時、まずIKEAやニトリといった店に足を運ぶのではないだろうか。中価格帯購入層をターゲットに考えた時に、それらの既存の競合の間に割って入る強みは、今の大塚家具にはまだないだろう。
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by grocap

信念を貫いた“匠大塚”の反撃

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出典:www.takumi-otsuka.jp
 「確かな価値との出会い」を貫いた勝久氏は、新会社“匠大塚”を立ち上げた。本当に価値のあるものを提供するという思いから、商品もサービスも高級路線の家具会社だ。

 匠大塚は立ち上げから売り上げが好調だという。従来のように入り口から販売員が来店客を迎え、店内を誘導して周る接客方法は従来の大塚家具から引き継がれている。

 他の企業との差をつけたこのような接客方法を求め、以前の大塚家具を利用していた顧客が流れてきており、一貫したブランドイメージと客層・商品の一致によって売り上げは安定しているようだ。こうした“匠大塚”にしかない接客は、他店への顧客の流出も防いでいる。

 久美子氏のようにブランドイメージの定着をイチからやり直すことをしなくていい分、スタート時点でも安定した利益を上げることに成功した匠大塚。現時点での父娘対決は、父が一歩リードしている。

 これまでの流れから、ビジネスシーンで生かせる教訓は次の通りだ。

大塚家具のお家騒動から得られる「教訓」

  • 変革が有効に機能するには、時間がかかる
  • ライバルに競り勝つためには、“他人にはない強み”が必要
 つまり、久美子氏の行ったような変革は効果が上がる(=定着する)までしばらくの我慢を要する。その我慢しなくてはいけない間、会社として耐久力があるのか。

 また、同じ業界の中で、自社にしかできない、他社には真似できない強みがあるのか。なければそれを構築できるのか。それが問題だ。


 大塚家具のお家騒動から導出されるこの二点をビジネスシーンに活かし、チャンスを摑むために虎視眈々と機を窺おう。中長期的なビジョンを持つことによりライバルと差をつけられるだろう。

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