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なぜ“がん大国ニッポン”になったのか? 日本人の死因に多い“がん”の部位TOP5

Rikaco Miyazaki

2016/08/30(最終更新日:2016/08/30)


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by phalinn
 日本人の死因の第一位である病気、がん。7月には元横綱・千代の富士(九重親方)がすい臓がんで亡くなるなど、がんによる訃報を耳にする機会は多い。ここでは、知っているようで知らない“がん”について紹介する。

そもそも“がん”とは、どんな病気なのか?

 “がん”とは、どんな病気なのか……それを一言で説明できる読者は少ないのではないだろうか。

 人間の体は約60兆個の細胞からできている。それらの細胞に、何らかの遺伝子の異常が起こり、細胞の増殖が止まらなくなり、何年もかけて異常な細胞の塊となる――それが“がん”なのだ。

 がんの原因となるものの多くは、「生活習慣」である。たばこや飲酒、食事などの日常生活で関わるエレメンツが大きな要因となっている。

 その他には、老化による遺伝子の変化、加齢に伴うホルモンバランスの変化、発がん物質の蓄積、免疫低下による感染症によって発がんするとも考えられている。

 また、がんと診断される時に避けて通れないのが「ステージ」という言葉だ。ステージとは、がんがどれくらい進行しているのか?という進行度合を0~Ⅳで表す指標だ。

 では、各ステージの状態について説明したい。

“がん”のステージ

  • ステージ0:比較的軽症のがん細胞。がん細胞が上皮細胞内に留まっている状態
  • ステージⅠ:がん細胞が少し広がり、筋肉の層にとどまっている状態
  • ステージⅡ:がん細胞がリンパ節に転移はしていないが、筋肉の層を超えている。もしくは、がん腫瘍は広がっていないが、リンパ節に少し転移している状態
  • ステージⅢ:リンパ節への転移がはっきりとわかる状態
  • ステージⅣ:初めにできたがんの原発部位を超え、他の臓器に転移している状態
 がんのステージは、がんの大きさ、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移が基準となって分類される。上記のステージについての説明を見ると、「リンパ節への転移」は、他の臓器への転移に繋がるので、ステージを分けるキーワードになっていることがわかる。

なぜ“がん大国ニッポン”になったのか?

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by Zen Len
 日本人に、がんで亡くなる人が多い理由は二つある。

 一つ目は、日本が長寿国であること。長生きする人が増えるということは、がんに罹ってもおかしくない年齢の人の比率が、どんどん高くなっていることになる。

 がん細胞の発生のメカニズムは、細胞分裂の際の遺伝子の写し間違いである。長く生きれば生きるほど、細胞分裂の数も増え、その分だけ遺伝子に間違いを起こす可能性が増える。つまり、高齢化・長寿国というのが“がん大国”の要因になっているのだ。

 二つ目は、日本の医療が発達したこと。

 今まで、日本人の死因トップであった脳卒中や心筋梗塞で亡くなる人は減少している。これは治療法の進化や、研究による病の原因追及による結果だ。

 また、以前はがんと診断されずに亡くなっていたような人もいたが、医療の発達により、死因ががんであることが判明する、というケースも増加している。

がんの部位別死亡者数TOP5

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by mripp
 日本人の死因1位のがんの中でも、どの部位のがんで亡くなる人が多いのか? がんの部位別死亡者数の上位5つを紹介したい。(データ元:2015年のがん疾患数、死亡数予測

第5位:肝臓

 物言わぬ臓器といわれている“肝臓”。初期症状が乏しく、発見されたときにはすでに末期に至っていることが多い。

 肝臓がんの主な原因は、「肝炎ウイルス」だといわれている。肝炎ウイルスにはA型~E型まであるが、B型肝炎は疾患した人の1割、C型肝炎は7割の人が、肝硬変からがん細胞を発生させてしまう。

 肝炎ウイルス以外にも、加齢や飲酒歴も大きなリスク因子だとされている。しかし、アルコールと関係のない肥満・糖尿病もがん化することが明らかになっている。

 肝臓がんの症状は、末期に現れる。体重減少、強い黄疸、腹水、浮腫、下痢、呼吸困難感、全身のかゆみ、出血傾向、意識障害などだ。

第4位:すい臓

 「がんの王様」とも呼ばれるすい臓がん。症状の進行が速く、肝臓と同じく自覚症状が出にくい性質から「がんの王様」と呼ばれている。

 すい臓がんの主な原因は、食事であるといわれている。食生活の欧米化による栄養バランスの偏りが一因なので、ビタミンCや食物繊維を含む野菜はすい臓がんの危険率を低下させてくれる。

 また、糖尿病や慢性すい炎といった病気によって、すい臓がんに罹るリスクが高くなるという報告もされている。その他には、肥満、喫煙や過度な飲酒、不規則な生活リズムといった生活習慣に関するものも原因とされている。

 すい臓がんの症状は、腹痛、体重減少、黄疸など。すい臓がんが発見された患者の約70~80%が、すでに手術できないほど進行した状態になっている。

第3位:胃

 消化器官である胃。胃がんには、早期胃がんとスキルス胃がんの2種類がある。

 胃壁は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜と層状になっていて、早期胃がんとは粘膜・粘膜下層までにとどまっているもののことを指す。早期胃がんは比較的転移の可能性が低いといわれている。

 スキルス胃がんは、胃壁の内側の粘膜の下に潜り込んだ“がん”が、胃壁全体に広がっていく。進行すると胃壁全体が硬くなることから、「硬がん」とも呼ばれている。進行は比較的早く、自覚症状は乏しい。

 胃がんの主な原因は、塩分や化学調味料の多い食事、喫煙や過度な飲酒、ストレスの多い不規則な生活。その他にも日本の全人口約50%が感染しているといわれるピロリ菌も、非感染者と比較して数十~数百倍胃がんにかかりやすくなると言われている。

 胃がんの症状は初期~末期にかけて重くなっていく。初期は、胃もたれ、げっぷ・吐き気、嘔吐、胃・みぞおちの痛みと不快感、全身倦怠感、急激な体重減少、貧血症状やめまい、黒色便。末期は、腹水、黄疸、腸閉塞などがある。

第2位:大腸

 水分の吸収や便を作り、体外へ排出する役割を持っている大腸。大腸がんの死亡者数は男女総合では2位だが、女性での死亡者数は第1位。男性よりも女性のほうが死亡に繋がるケースが多いのだ。

 大腸がんの中でも、女性を中心に増加傾向にあるのが「結腸」にできるがん。結腸とは、盲腸と直腸を除いた大腸の主体のこと。これは食生活の欧米化が原因だといわれている。

 その他の原因は、喫煙や過度なアルコール摂取、運動不足、肥満といった生活習慣に起因するもの。

 さらに、大腸がんは遺伝傾向が強い。両親や祖父母などの近い血縁者に大腸がん患者がいる場合は、定期的ながん検診の他にも遺伝子検査を受けることを推奨する。

 症状は、下痢と便秘が繰り返す、血便、下血、残便感、腹痛、胃痛、腹部の膨満感、食後いつもお腹が鳴る、体重減少、貧血などがある。

第1位:肺

 呼吸をするために欠かせない臓器の肺。肺がんは早期発見も難しく、完治・進行を止める治療法がほとんどないため難治がんとされている。

 肺がんの原因の約70%は、たばこ。たばこには発がん物質が約60種も含有されており、その物質が蓄積することでがんになるのだ。

 非喫煙者が肺がんになる理由は明らかにされていない。遺伝子の突然変異や、受動喫煙、アスベスト、放射線、大気汚染などの発がん物質も危険因子であるとされている。

 初期の胃がんは自覚症状はほとんどなく、喘鳴(ぜんめい)や血痰、息切れ、声枯れ、吐血、体重減少、脱力感、食欲不振といった症状が現れる頃には症状が進行している。

致命率の高いがん・疾患数の少ないがん

 部位別の死亡者数TOP5は紹介したが、それはがんの氷山の一角に過ぎない。がんには疾患数が少ないため、認知度の低いものや致命率(がんになった人の中に占める、亡くなった人の割合)が高いものがある。

致命率の高いがん

致命率が高いがん(部位別)

  • すい臓がん:87.8%
  • 胆のう・胆管がん:79.6%
  • 多発性骨髄腫:70.7%
  • 肝臓がん:69.4%
  • 白血病・肺がん:68.8%・68.7%
 がんの部位別死亡者数のTOP5に入ったすい臓がん、肝臓がん、肺がんは、致命率も高いことがわかる。すい臓がんに次いで、致命率の高い“胆のう・胆管がん”。胆のう・胆管がんは、70代に最も多く、加齢が危険因子となっている。

 多発性骨髄腫や白血病は、血球減少による血液の病。多発性骨髄腫の疾患数は少ない。血液の病だが、骨の痛みを伴うことが大きな特徴だ。

疾患数の少ないがん

 疾患数の少ないがんは、咽頭がん(4,700人)、脳・中枢神経系(5,100人)、多発性骨髄腫(8,600人)。この三つ以外のがんは、疾患数が年間1万人を超えている。


 以上、“がん”という病気について紹介した。日本人の死因1位のがんを部位別に見ても、致命率の高さを見ても、原因が生活習慣によるものがほとんどであった。がんは年齢が若いほど進行スピードも早いという。この記事をきっかけに、現在の生活習慣を見直し、今のうちからがん予防に努めたい。

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