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“目薬をさして”見えてきた「動物実験のイマ」:製品開発に潜む大きな犠牲

Mayuko Ono

2016/08/23(最終更新日:2016/08/23)


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“目薬をさして”見えてきた「動物実験のイマ」:製品開発に潜む大きな犠牲 1番目の画像
出典:carrington.edu
 特に何も考えず、日常的に使っている目薬やクスリ。それらが市場に出回る前、どのようにして開発されたか考えたことはあるだろうか。新しいモノを開発する際、避けては通れないのが“実験”である。

 製品に使用されるあらゆる物質の安全性や、有効性を試すのに行われる実験の中に“動物実験”があるのはご存知だろう。今回はこの、動物実験に対する日本と世界の動向・現状をみてみたいと思う。

年間1億1500万の犠牲

 動物実験とは、ヒトに対して危険が生じる可能性のある化学物質などをヒトに適用する前に、動物にその物質を用いて生物に無害かどうかを実験することをいう。主にウサギやラット、マウス、モルモットなどの動物が使われる。

 世の中には数多くの動物実験が存在するが、それら全ての実験で使用された動物たちは、過酷な実験の途中で息絶えてしまうか、経過を見た後に殺処分される。

 2008年には「年間でおよそ1億1500万匹もの動物が世界中で犠牲になっている」と、英国のドクター・ハドウェン・トラストと英国動物実験廃止連合が発表した。

動物実験廃止に向けた他国での取り組み

 現在でも多くの動物たちが製品開発のため実験に使われ、命を落としている現実がある一方、実験によって殺されていく動物を少しでも減らそうとする動きが世界中で起こっているということも事実である。

 2013年3月、EUでは、化粧品の動物実験が例外なく完全に禁止になった。ここで定義される化粧品とは、日本で医薬部外品と分類されるものも含まれている(例えば男性用コスメや、デオドラント用品、育毛剤など)。EU諸国内での動物実験はもちろん、動物実験を経て開発・製造された輸入品の販売も禁止されている。

 こうしたEUの取り組みにより、北米、ノルウェー、インド、ニュージーランドや韓国など世界中の600以上のメーカー・ブランドで動物実験廃止への動きが盛んになった。

日本における動物実験廃止の取り組み

 2013年より以前から、日本でも動物実験に対して疑問視する声が上がっていたが、なかなか廃止に対する取り組みがなされなかった。

 しかし、EUが動物実験の完全撤廃を表明して以来、日本でも多くのメーカー・ブランドがEUの方針に賛同し動物実験を廃止している。

 国内で行われてきた研究を国内外に公表・共同開発することで、日本は世界中の代替法の研究の促進にも貢献してきた。 

資生堂・花王共同開発h-CLAT

 2013年4月より化粧品・医薬部外品の開発において動物実験の完全撤廃を表明した資生堂は、皮膚感作性試験(物質の皮膚への反応を見る試験)の代替法として花王と共にh-CLATを開発。動物の代わりにヒト単核球細胞株であるTHP-1を使用するh-CLATは普及に向け、特許実施の無償化を決定した。

花王独自開発STE試験

 化粧品の開発において動物実験の完全撤廃を表明した花王が独自に開発したSTE試験は、眼刺激性試験(眼に試験物質をさしその反応を見る試験)の代替法である。細胞培養系の眼刺激性試験代替法として世界で初めて非刺激性物質、強刺激性物質の区分を可能とする国際的な試験法として認められた。

 資生堂や花王以外にもマンダムやコーセー、メナード、THREEなど多くのメーカーが動物実験の完全撤廃を表明しており、代替法の実用化に向け様々な研究が行われている。しかし、日本を含め、まだ動物実験を行って化粧品・医薬部外品の開発を行っているメーカーが世界中であるのも事実である。
“目薬をさして”見えてきた「動物実験のイマ」:製品開発に潜む大きな犠牲 2番目の画像
出典:laboratoriomartinez.com
 世界で動物実験の廃止に向ける動きがあるものの、未だに8割の国で動物実験は合法であり、中には動物実験を行うことが製品として売る法的要件である国すら存在する。


 例えば我々ビジネスマンが仕事の効率アップのために日常的に使う目薬。デスクに置いた目薬を一瞥し、その製造過程をご一考して頂けることを祈るばかりだ。

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