世界には、全人口が毎日3500キロカロリーを摂取するのに十分な食糧がある。しかし、国連開発計画の委託を受けた人間開発白書によると、世界の7人に1人が飢餓状態にあるという。
また、世界の人口の半分が1日2ドル未満で、12億人が1日1ドル未満で生活しているという状態をご存知だろうか。
貧困の定義
現在、国際社会における貧困を図る尺度は、すべて貨幣価値で示されるようになっている。
「貨幣価値で示される」指数からの脱却を図り、国連開発計画が「人間開発指数」を打ち出した。
人間開発指数とは
- 40歳未満で死亡する人間の割合
- 成人非識字率
- 人並みの生活水準を実現できていない人間の割合
「人間開発指数」とは上記の定義であるが、「人間開発指数」の3項目と、前述の貨幣価値に非常に近い「国民総所得」はほぼ重なっている。しかし、この2つの定義をもってしても、人間の豊かさは容易に測定できるものではない。
人間の豊かさ
人間の豊かさについて、著述家のウィニン・ぺレイラは書いている。「ウォーリ族(インド、北マハラシュトラの部族民)の多くは読み書きできないが、数え切れないほどの世代にわたって親から子へと口伝された膨大な知識を持っている。」
つまり、ウォーリ族の子供たちは識字率がほぼ皆無であるが、生きていくのに十分な知恵や技術を持っており、貨幣がゼロにも関わらず、幸福に暮らしているのだ。
このことから、上述した貧困の定義では、人間の豊かさを数値で測ることが出来ないということがよく分かる。
国際連合とその機関のはたらきかけ
ではここで、世界の貧困に対する国連機関の介入とその結果をさらいたい。個々の機関による貧困国への介入は、果たしてどのような結果を生んだのだろうか。
国際通貨基金(IMF)
IMFは、旱魃に続く洪水に喘ぐマラウィ政府に対し、国の外貨獲得の一番の産物であるトウモロコシを安価で売り払うように指示した。マラウィ政府は、なおもIMFに従い、3年分の備蓄のトウモロコシを全て売ってしまった。
その売却はマラウィ国家で多大な損失を生み、2~3ヶ月で何百万人もの餓死者が出るという結果に終わった。
世界銀行
世界銀行のチーフエコノミストであったローレンス・サマーズ氏の覚書を引用したいと思う。「世界銀行は、汚い産業を低開発国にもっと移すことを推奨すべきでないだろうか。有害廃棄物をきれいすぎる大気を持つ低賃金の国に捨てることを促す経済的論理は申し分のないものであり、われわれはそれを認めるべきである」「5歳未満の死亡率が1000人中200人の国よりは、前立腺ガンを発症する年齢まで生存している国に配慮すべきである。」
“世界銀行のチーフエコノミスト”が放った言葉とは考えられない言葉である。この覚書はあまりに悪名高い。
世界貿易機関(WTO)
国際会議により、最貧国は公衆衛生のために、より安価な薬品の購入を許されると合意された。しかし、ジェネリック薬品を開発し、輸出する(ことが許される)多国籍企業はなかった。つまり、ジェネリック薬品を製造する技術のない最貧国にとっては、その合意はなんの意味も持たなかった。(ここでいう最貧国……エチオピア、ブルンジ、シエラレオネ、ギニヤビサウ、ニジェール、タジキスタン、マラウィ、エリトリア、チャド、モザンビークの10ヵ国)
日本と貧困
そんな貧困問題は自分とは無関係――そう考えている読者も少なくはないだろう。しかし、2015年のOECDによる「高齢者の貧困率」で、日本が4位という予想以上に高いランクであったことは記憶にも新しい。
ちなみに1位は韓国、2位はオーストラリア、3位はアメリカ、とんで5位はトルコだ。
日本の高齢者の貧困率が高い一番の原因は「年金制度」で、これは1位に選出された韓国の要因とも合致する。
われわれビジネスマンの給与からは天引きされることも多い年金だが、これほど支払っていても日本の高齢者の貧困率が世界4位という結果は驚きとともに不安感を募らせる。
また、長寿大国日本が誇る沖縄県は、なんと生活保護対象者の半数以上が高齢者、特に単身者であるという点も押さえておきたい。
出典:www.thinglink.com 今回は「貧困」を様々な面、要素から取り上げた。アフリカ大陸では未だ紛争が絶えず貧困率も非常に高い。対して日本は衣・食・住が満ち足りているように見えるものの、貧しい暮らしを強いられている高齢者たちがいる。
状況は違えど、貧困は世界中にある問題なのだ。
『世界がもし100人の村だったら』から抜粋したいのは、その村に住む100人のうち、20人は栄養が十分ではなく、1人は死にそうで、15人は太りすぎだという。また、75人は食べ物の蓄えがあり、雨露をしのぐところがあるものの、あとの25人はそうではなく、17人はきれいで安全な水を飲めないという。
自分には無縁だと思う前に、一人の“地球人”として一考していただければ幸いだ。
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