1. オリンピックは「スポーツブランドの競技場」と化す。アンダーアーマーの“超一流ブランドへの挑戦”

オリンピックは「スポーツブランドの競技場」と化す。アンダーアーマーの“超一流ブランドへの挑戦”

by pressthebigredbutton
 2016年8月現在、ブラジル・リオデジャネイロでアスリートたちがメダルをめぐってしのぎを削っている。彼ら彼女らのウェアやシューズに、必ずと言っていいほど付いているスポーツブランドのロゴ。その多くはナイキやアディダスが多くを占めてきたが、今後の大会ではその勢力図に変化があるかもしれない。

 2020年東京オリンピックにおいても、国内ブランドがビジネスチャンスを虎視眈々と狙っている。本記事では、オリンピックを舞台に企業がしのぎを削る、熱きマーケティングの世界を紹介したい。

オリンピックは「ブランド力強化」の最高の舞台である

  世界中から選手が集まり、いくつもの競技が開催されるオリンピック。もちろん、世界中の視聴者が注目する。世界最大のスポーツの祭典、オリンピックは企業にとって最高の宣伝の場なのである。過去のオリンピックでも、壮絶なスポーツブランドによる対決が繰り広げられてきた。

オリンピックを徹底的に利用する王者・ナイキ

by Robin Geschonneck
 これまでのオリンピックでは、ナイキとアディダスがオリンピックの場で存在感を示してきた。前回のロンドンオリンピックではナイキ、アディダスともに約3,000人の選手に商品を提供。世界中にナイキとアディダスのロゴが映った映像が配信された。

 特にナイキはオリンピックでの宣伝に熱心だ。1992年のバルセロナオリンピックでは、マイケル・ジョーダン擁するアメリカの男子バスケ代表「ドリームチーム」の多くの選手とスポンサー契約を交わしていた。

 しかし、大会公式スポンサーはリーボックだったため、表彰式ではリーボックの公式ジャケットを着用するよう義務付けられていた。ここでナイキとスポンサー契約していた選手たちがこぞってリーボックの着用を拒否したことにより、ナイキに抗議の電話が殺到し波紋を呼んだのだ。ナイキは、自社のイメージを守るため選手にはリーボックの公式ジャケットを着用するよう促したが、ジョーダンは星条旗を肩に下げリーボックのロゴを隠し、ナイキへの義理を果たした。

 また、一流選手と契約しているナイキは「アンブッシュマーケティング」の達人でもある。アンブッシュマーケティングとは、大会公式スポンサーでないにもかかわらず、オリンピックを連想させる宣伝を行う、いわゆる便乗宣伝行為である。

・1984年のロサンゼルスオリンピックで、「I Love LA」キャンペーンを展開し、開催都市とのつながりを意図的に強調した
・1992年のバルセロナオリンピックで、米国バスケットボールチーム(通称ドリームチーム)のマイケル・ジョーダン選手、チャールズ・バークレー選手と個別に契約を結び、テレビで映像を流し続けた
・1996年のアトランタオリンピックで、米国内の放映権を持っていたNBCより大会期間中のCM枠を購入し、新製品「ズーム・エア」「マックス・エア」のCMを連日オンエアすると同時に、「ドリームチーム」のティム・ハーダウェイ選手に「ズーム・エア」を提供して試合中にロゴが露出するように仕組んだ
・同じくアトランタオリンピックで、オリンピックスタジアムに隣接する駐車場にテーマパーク「ナイキ・タウン」を設置した

出典:今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(下):日経ビジネスオンライン
 上の例のようにナイキは、あたかもオリンピックのスポンサーであるように宣伝することで、顧客の目を向けようと試みてきた。オリンピック開催都市でこれだけ目立つと人々の注目の的になるのは間違いない。

従来のブランド勢力図にアンダーアーマーが殴り込み

by lakelandlocal
  今夏開催のリオデジャネイロオリンピックでは、アンダーアーマーが世界的なブランドへの飛躍を狙っている。アンダーアーマーは1996年設立の比較的新しいスポーツブランド。日本でもアメリカンフットボールや野球で多くのプレイヤーが愛用している。ナイキが1968年設立、アディダスが1948年設立と長い歴史を持っていることを考えれば、アンダーアーマーは比較的新しい企業だということがわかる。

 北米の売り上げではすでにアディダスを超えているアンダーアーマーだが、売り上げの90%以上が北米と世界的なブランドになりきれてないのが現状だ。世界規模の商品展開を目論むアンダーアーマーにとって、今回のオリンピッックは絶好の機会なのだ。

本大会男子テニス金メダルのマレーも、アンダーアーマーと契約

出典:www.india.com
 男子テニスで日本代表の錦織圭選手とも対決をし、金メダルを獲得したアンディ・マレー選手もアンダーアーマーとスポンサー契約する一人だ。マレーは2014年までアディダスとスポンサー契約をしていたが、オリンピックを目前にしてアンダーアーマーに乗り換えた。北京オリンピック、リオオリンピックと二大会連続で金メダルを獲得したマレーがウェアを着用することで得られる宣伝効果は計り知れない。

東京オリンピックに向けて動き出す、国内企業ブランド

出典:www.mb.com.ph
 2020年開催の東京オリンピックも、もちろんスポーツメーカーにとって格好の宣伝機会だ。開催国という地の利を生かしたい国内企業も血眼になって戦略を練ってくるだろう。

さらなる飛躍を狙うアシックス

by Beth77
 数ある国内企業でも特に注目したいのはアシックスだ。というのも、アシックスは東京オリンピックでゴールドパートナー(国内最高位スポンサー)になったからである。ゴールドパートナーになることで、五輪の呼称やロゴを使った宣伝を展開することができる。さらに、リオオリンピック、平昌冬季オリンピック、東京オリンピックの日本選手団のウェアの担当を一括する。

 そんなアシックスの最大の得意分野はランニングシューズだ。女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子、野口みずきも愛用していたシューズのクオリティは世界中のユーザーから評価されている。また、近年の世界的なマラソンブームから海外での売り上げを伸ばし続けている。

 業績良好のアシックスだが、売り上げ2兆5,313億円のナイキ、1兆9,347億円のアディダスなどに比べると2,602億円のアシックスはまだまだ規模が小さく、オリンピックでの競争でも分が悪い。そしてナイキは、アメリカ代表だけに目を向けず、他国の代表との契約にも積極的だ。確かに、一国の代表がとれるメダルを期待するより、有望な海外の選手に宣伝効果を期待する方が効率的かもしれない。アシックスがどれだけ他国の選手とスポンサー契約するかが、東京オリンピックにおいてナイキ・アディダスに太刀打ちするには必要なのだ。
 

 世界最大のスポーツの祭典、オリンピック。同時に企業にとって最大の宣伝機会である。それだけに、企業は戦略を綿密に練り、魅力的な広告を流す。リオオリンピック、東京オリンピックと競技にだけでなく、裏側で繰り広げられる企業の宣伝戦略や着用ユニフォームにも目を向けてみるのも、案外面白いかもしれない。

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