1. メジャーリーグは、日本のプロ野球の4倍稼ぐ。“チームではなくリーグで稼ぐ”MLBのビジネス戦略

メジャーリーグは、日本のプロ野球の4倍稼ぐ。“チームではなくリーグで稼ぐ”MLBのビジネス戦略

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 野球界の最高峰、メジャーリーグ。球団や選手の多さ、桁違いの年俸など、日本のプロ野球と比べてスケールの大きさを痛感する。球団数がプロ野球の12球団に対してメジャーリーグは30球団と多いが、収益額もプロ野球の4倍。しかし、20年前まではメジャーリーグと日本のプロ野球の収益額は、ほぼ同じだったことをご存知だろうか。本記事では、ここまで急速に成長したメジャーリーグがどのようなビジネス戦略をとったのかを分析したい。

チームビジネスではなくリーグビジネス

出典:chenglor55.deviantart.com
 ここまでメジャーリーグ市場が成長した理由としては、「リーグビジネス」があげられる。リーグビジネスとはリーグ全体で展開する事業である。メジャーリーグでは全国放映権やスタジアム外でのグッズ販売などがそうである。一方、チームビジネスは日本のプロ野球のように各球団が各々取り組む事業だ。チーム独自のグッズやチケット、球場内の飲食販売などがある。

 では、なぜリーグビジネスだと収益がのびるのだろうか。

放映権の所在を単一化する

 メジャーリーグは規模が大きいキー局との契約はリーグで行っている。この手法はチーム個々で契約するよりも収益をあげられる。ニューヨークヤンキースのような人気球団は個別で局と契約しても多額の放映権料が得られるが、弱小球団は契約を勝ち取れない。リーグで契約することで弱小球団を含めた放映権も一括で契約することができるので、リーグ全体の収益を上げることができるのだ。

 この収益は全球団に均等に配分される。ただ、この手法だと人気球団からは不満が生じる。そこで、キー局と比べると放映権料は下がるが、ローカル局との契約は各チームの権利となっている。

グッズのプロモーション

 球場外のグッズ販売もリーグが一括している。スポーツファンであれば贔屓のチームのグッズを買いたくなるものだが、チームのロゴが付いた付いたグッズはロイヤルティー(商品使用料)がかかっているため、割高になっている。ロイヤルティーはMLBが管理しており、メーカーだけでなく球団も独自にグッズを開発することができない。

 球場内のグッズ収益はほとんど球団に入るが、球場外の収益はMLBの収益として一定額引き下げられたのち、放映権料と同じく全球団に分配される。

 他にも球場内の飲食販売やスポンサー契約はリーグが一括して管理している。確かに、人気球団は個別に展開するよりも収益が少ないが、得になることもある。全球団の収益が安定することで球団が消滅することがなくなり、メジャーリーグの運営が不安定になることはないからだ。また、球団同士で収益を争うのではなく、アメフトやホッケーのような他のエンターテインメント事業自体と競合することで、市場の規模を大きくすることにつながる。

勢力均衡によるリーグ活性化

 どんなスポーツでも数チームがずば抜けて強いとつまらない。以前のメジャーリーグはパワーバランスが崩れており、何年もの間、複数の強豪チームがリーグ首位を独占していた。後述するサラリーキャップが取りれられる2003年以前、10年間のワールドシリーズ(94年ストライキのため中止になり開催は9回)はヤンキースが5度出場し4度優勝している。

 プレーオフだけでなく、ペナントレースの間に早く優勝チームが決まってしまうと客足は遠のく。そこでメジャーリーグは勢力均衡を実現するために策を投じた。

勢力均衡のためのサラリーキャップ

 パワーバランスを保つため工夫の一つが「サラリーキャップ」だ。サラリーキャップとは球団が選手に払う年俸を制限する制度のこと。チームの総額年俸が定められており、基準を超えたチームには「ラグジュアリー・タックス」と呼ばれる罰則金が課せられる。2003年に導入されて以降、ワールドシリーズを連続で勝ち抜いたチームはなく、一定の成果を上げている。

 もちろん、この制度も資金力が豊富な球団からは不満が上がった。そのため現在、「シャーキング・タックス」の導入が議論されている。ラグジュアリータックスは戦力を強化しすぎたチームに課せられる罰則金だが、シャーキングタックスは戦力強化を怠ったチームに課す懲罰金である。

 下位チームはシャーキング・タックスを払うくらいなら、高額の年俸をスター選手に支払うようになり、さらなるリーグの活性化が期待出来る。

名物GMやオーナーたち

 フィールドでプレーする選手以外に、リーグやチームの活性化に腕をふるうGM(ゼネラルマネージャー)やオーナーたちにも注目だ。メジャーリーグではここ10数年で監督の野球からGMの野球にシフトしつつある。野球の専門家ではない弁護士や銀行員などビジネスエリートが就任することが多いGMが作る、新しい野球のビジネスモデルがさらにリーグを盛り上げている。

『マネーボール』の奇跡

出典:www.washingtonblade.com

 映画『マネーボール』で注目を浴びたオークランドアスレチックスのGMビリー・ビーン。2000年代初頭、サラリーキャップが本格導入される前、球団格差が広がっていた時期に彼は今まで注目されてこなかった野球理論を用いることで強いチームを作り上げた。2001年、2002年はリーグ最低レベルの総額年俸ながら、ペナントレースで100勝を挙げた。

 
 今もなお人気を博し続けているメジャーリーグ。フィールドの鮮やかなプレーに酔いしれるのもいいが、その裏で繰り広げられている徹底したビジネス戦略を、覗いてみても面白いかもしれない。

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