1. 「世界一貧乏な男」と呼ばれた男、ドナルド・トランプの大逆転を巻き起こす“交渉術”

「世界一貧乏な男」と呼ばれた男、ドナルド・トランプの大逆転を巻き起こす“交渉術”

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 トランプ旋風を巻き起こし、世界一のお騒がせ男となっているドナルド・トランプ。不動産王として巨富を築いた一方、数々の事業の失敗で苦汁を舐めたこともあった。今ではその失敗を乗り越え、その資金力とプレゼン力を武器に、大統領候補に名乗りをあげている。一時、「世界一貧乏な男」とまで呼ばれたトランプは、多くの危機をどのように克服したのであろうか。トランプの危機対処能力、その交渉術を分析すれば、大統領候補としての資質を見極めるためだけでなく、ビジネスマンにも参考になる部分は多くあるはずだ。

「不動産王」から「世界一貧乏な男」への転落

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 トランプの失敗した事業で有名な例として、「トランプシャトル」がある。トランプシャトルとは、当時経営不振に陥っていたイースタン航空からシャトル便を買収し、豪華なサービスを売りにした航空会社だ。それまでのトランプは複数のカジノやトランプタワー、トランププラザなど「不動産王」の名の通り、数多くの不動産を所有していた。

 1980年代の好景気の波に乗り、業績良好だったトランプ。しかし、1980年代後半になり景気後退が進むにつれ、負債を抱えることになる。不動産市場は低迷し、多額の借入金で経済的苦境に立たされた。

 その過程の中でトランプシャトルも手放すことになる。シャトル便という不動産以外の新しい事業に手を伸ばしたトランプだったが、短い飛行時間のシャトル便では豪華なサービスの需要はなく、赤字続きだったのだ。トランプシャトルは「世界一貧乏な男」と言われるまでの没落の象徴となった。

帝国の崩壊、最底辺からのカムバック

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 「自分の帝国が崩壊するのを見た」とまで話したトランプ。当面の目標は、債権者団体から救済措置を受けることだった。債権者との交渉でこんなエピソードがある。

 債権者に電話をかけるため、ある雨の夜、シティバンクのオフィスに呼び出されたトランプ氏は「かなり落ち込み、ほとんど泣きそうな様子で」到着した、とバンカーのロバート・マクスウィーン氏は話す。

 だが、電話口でトランプ氏のカリスマ性が突如、姿を現す。マクスウィーン氏は「彼は10分で完全に自信満々の頂点に達した。彼は債権者に、素晴らしいものになる、私たちがそれを実現するのだと話した」と振り返る。債権者を説得し、電話を切ったトランプ氏は冗談まじりに「どうだった?」と聞いたという。

出典:トランプ氏と負債―その脱出劇 - WSJ
 破産が近い、と報道されていたトランプだが、数々の交渉でその状況を打開した。いずれの交渉でも自らの能力を強く見せつけ、相手を説得させた。その後、1990年代後半の好景気に乗じて業績を良化させる。経済誌「フォーブス」のトップ企業400にランクインするなど、トランプは復活を遂げた。そして、多くのカジノやリゾートをオープンし、再び不動産王として返り咲いたのだった。

国民を虜にするトランプの「超強気」交渉術

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 交渉力を武器に、ビジネスの世界で成功を収めたトランプ。大統領候補選でも、不動産業で培った自らの交渉力を度々主張している。確かに、彼の過去の実績から交渉術の高さは認めざるをえない。下馬評を覆すほどの多くの有権者がトランプを支持していることからわかる通り、その交渉力を演説においても効果的に使っている。

 最初にあげられる交渉術の特徴は、「高い要求から始める」だ。例えば、「メキシコに国境を作る」「日本自動車の関税を2.5%から38%まで引き上げる」など実現不可能と思われる発言をしている。だが、おそらくトランプも自らの発言が実現不可能であることは承知の上だろう。

 また予備選挙が進むにつれ、あれだけヒスパニック系移民に強く当たっていたにもかかわらず、「ヒスパニックが大好きだ」とツイートするなど手のひらを裏返す発言をしている。このツイートは炎上したが、極端な発言から始めることによって、相対的に印象を良くなる効果を狙っているのだろう。


 トランプの交渉が正しいかということはさておき、トランプの交渉術は、交渉相手からより良い条件を引き出す上で有効であると言える。アメリカでこれだけバッシングされているトランプの交渉術を日本で使えば、お国柄上さらなる反発を生むこと間違いなしだが、覚えておいて損はない手法だ。この交渉術、ひいてはマインドが、絶望的な状況からの「大逆転」を巻き起こすことができるかもしれない――。

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