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必ず答えを導くエンジニアたちの「思考の技術」モジュラー思考とは?:『「考える」は技術』

Makoto Kubo

2016/07/20(最終更新日:2016/07/20)


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必ず答えを導くエンジニアたちの「思考の技術」モジュラー思考とは?:『「考える」は技術』 1番目の画像
出典:www.infoworld.com
 考えても、考えても、自分の求めるゴールに辿りつけなかったことはないだろうか。そして、そうしたときには考えることを諦め、妥協してしまったことはないだろうか。答えのない問いや、いわゆる「難題」から解決策を見出すことはとても難しい。

 重要なものほど、しっかり考える必要はあるが、そこに時間を費やしたところで結論が出ないものもある。しかし、世の中にはいかなる難題にぶち当たっても、解決策を導き出す人がいる。――それは、エンジニアだ。彼らは日頃から一筋縄ではいかない問題ばかりと向き合っている。だが、そんなエンジニアたちは考えることをやめず、必ずゴールに辿りつく。

 そこで今回は、アメリカ政府とも一緒に仕事をしたことがあるエンジニアのグル・マドハヴァン氏の『「考える」は技術――世界最高の思考ツールであらゆる問題を解決する』から、ビジネスマンにも応用できる「答え」に辿りつくための考える技術を紹介する。

分解して考える“モジュラー思考”とは

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出典:railsware.com
 モジュラー思考とは、基準にしたがって設計等を行うための考え方だ。エンジニアは、問題をそれぞれ要素に分けて考え、個々に解決することで全体的な解決策を出す技術を用いている。そこで、本書から、エンジニアがモジュラー思考をするときの3つの技術を紹介する。

技術#1:見えない「構造」をつくる

 優れたエンジニアは規則やモデルなどにしたがって、構造をデザインする。そうすることで、各要素がどのようにつながり、どういう状況で機能するかを判断している。このような考え方を用いて、エンジニアは物事を構造化し、効率よくプロダクトやデザインを作り出している。

技術#2:制約の中で物事をデザインする

 仕事をする上で、結果を左右するような制約はつきものだ。ビジネスの世界も、限られた予算・時間の中で企画を実行しなければならないときがあるだろう。特に、エンジニアにはもともと実用的な性質があり、制約条件からくる重圧は他の職業より大きい。エンジニアは顧客の要望や予算などといった、あらゆる制約を段階的に対処して、最善の結果を残している。このように、制約も要素ごとに対処すれば、その状況下で最大限の結果を残すことができる。

技術#3:トレードオフ|あらゆる解決手段の利点と欠点を考慮して最適解を選択する能力

 エンジニアは重要でないものとそうでないものを取捨選択し、優先順位を決める。このように考えることで、技術的な制約に問題として直面した際に、優先順位の高い要素から最適解を導き出すことができるのだ。

 では、3つの技術をおさらいしておこう。

モジュラー思考をする3つの技術

  • 見えない「構造」をつくる
  • 制約の中で物事をデザインする
  • トレードオフ|あらゆる解決手段の利点と欠点を考慮して最適解を選択する

“逆算思考”で信頼性と効率性を両立させる

 何かを作ったり、成し遂げたりするためには、ゴールを設定してから始める人が多い。エンジニアも同様にゴールを設定するが、彼らはどうしてそれが必要なのか、それがどのような影響をもたらすか、についてよく考えて、それを元にゴールを決める。そこで、本書が紹介する「逆から考える技術」を見てみよう。

あのライト兄弟はこう考える

 一般に、飛行機をつくるエンジニアは「突風にあおられても自動的に体勢を立てなおす自律的かつ安定した航空機」を構想していたとされている。だが、ライト兄弟はこう考えず、「いかなる体勢になっても機体の動きを自在にコントロールできる制御システムの開発」をゴールとしていた。ライト兄弟のようなエンジニアから、物事の目標を決めるときに、逆から考える技術を学ぶことは、ビジネスにおいて目標設定を行う際に便利なのではないだろうか。

トヨタのエンジニアが視察で気づいた“考える”技術

 高度経済成長期の頃、トヨタのあるエンジニアが米国・自動車業界の現地視察を任された。彼は、フォードやゼネラル・モーターズが、大量生産をしてから顧客の獲得に取り組んでいるのを目にし、非効率な面を見た。そこで、トヨタはこの仕組みを逆算し、顧客から注文があったときに必要な分だけ生産を行うようにした。需要量がないのに、供給量を確保してもモノを余らせるよりも、需要量に応じて、供給量を満たせば、正しく目標が達成できる。こうした“考える”技術で、トヨタは現在まで繁栄し続けている。

人類学思考で、アイデアの中心に人を置く

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出典:www.305startup.net
 アイデアが浮かび、それを形にしようとするとき、誰に向けてそれを提供するかを考えたことはあるだろうか。それを使うのは人間であり、人間を中心に考える、ということは忘れがちかもしれない。そこで、本書が紹介する人間を中心に考える技術を見てみよう。

中心に置くのは技術ではなく、人間

 優れたエンジニアは人間を中心に考えることを、社会科学における「常識」と捉えている。その中でも、成功するエンジニアは、世の中の仕組みを理解して、そこにある問題を技術で解決するために、人間を中心において考える。だが、多くのエンジニアは、何かを生み出すとき、まず第一に製品に注目し、その後でユーザーに注意を向ける。技術を重視してしまうあまり、それを使う人間のことを知ったつもりになっていることが大きな問題だと本書は述べている。

 もし、これを読んだあなたが、何かサービスや技術についてプレゼンすることになったときは、「誰に向けて考えられたものか」を意識して相手に伝えてみてほしい。相手の存在に寄り添うことが、成功するには何よりも大切な“技術”だ。


 エンジニアとはいえど、今回紹介した考え方をパーフェクトに体現しているわけではない。だが、“優れた”エンジニアの多くは、物事を要素ごとに分けて考え、効率を上げるために対処している。

 問題にぶつかったとき、その問題をまるごと考えるのではなく、今回紹介したような「問題を要素に分ける」ということを念頭において取り組めば、問題解決への近道になるだろう。

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