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リクルートの「自由闊達な企業風土」の作り方:『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』

樋口純平

2016/07/27(最終更新日:2016/07/27)


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リクルートの「自由闊達な企業風土」の作り方:『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』 1番目の画像
出典:leadchangegroup.com
 長い就職活動を経て、やっとの思いで入社した企業での働き方に疑問を感じることはないだろうか。「聞いていた話と違う」「仕事が楽しくない」などといった不満は、私たちビジネスマンのパフォーマンスを著しく下げる要因だ。こうした企業風土に対する違和感を持つことから、退職してしまうビジネスマンも珍しくない。

 実際、コンサルタントが企業の経営を見直す際、まず企業風土のチェックから行うそうだ。また、トヨタもホームページで自社の企業風土を強みと示している。テレビでも業績が伸びている企業が紹介される際、技術や戦略よりもオフィスの設備や社内制度が特に紹介されているように思える。一体どのような企業風土だとビジネスマンが業績を伸ばすのだろうか。

 そこで今回は、リクルート創業者である江副 浩正氏の『リクルートのDNAー起業家精神とは何か』から、企業の業績を大きく左右する企業風土の作り方を学び、生き生きとした企業風土作りを目指していくとしよう。

組織のパフォーマンスを最大化させる、企業風土の作り方

リクルートの「自由闊達な企業風土」の作り方:『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』 2番目の画像
出典:www.projectmanagers.net
 リクルート創業者である江副氏は、企業風土の基礎は「考え方の統一」であると示している。江副氏が経営者として大事にしたのは、「自分自身のメッセージを明確に提示する」ということであった。経営状況の説明などではなく、会社全体がどのような方向に向かっていきたいのかを抽象的なものであっても文章化する。

 リクルートの企業風土は外部の人から「自由闊達」というイメージを持たれるようになり、風通しの良い企業という認識が広まった。経営者の思いを文章化して共有したことが、こうした企業イメージを生んだと江副氏は感じている。江副氏はどのように企業風土を形成しようと考えていたのだろうか。

「私のニックネームはエゾリン」 社員のやる気を生む、現場第一主義とは

 江副氏はリクルート創業15年目まで全社員の名前を覚えるようにしていた。だいたいの社員にはニックネームをつけ、ニックネームが思いつかない社員はファーストネームで呼ぶようにしていた。このニックネームで社員を呼ぶ企業風土は、現在も楽天などの企業で導入されている。

 このニックネームで社員を呼ぶ風土がもたらす効果は、社内の親和性の向上である。さらに、ニックネームで覚えた社員がどのような仕事をしていて、どのような成果を挙げているかも経営者が覚えやすくなる。経営者が社員一人ひとりの働きをしっかり見ているということが社員に伝われば、社員も高いモチベーションで仕事に取り組むことができるのだ。

リクルートを支えた、経営三原則とは

 リクルートが企業経営をしていく上で、社員と共有した経営三原則は、「社会への貢献」「個人の尊重」「商業的合理性の追求」である。特に「個人の尊重」は、リクルートの企業風土を形作る経営原則だ。社員それぞれでできることとやりたいことは異なる。そのギャップを埋めるために、自分の行きたい部署への異動を希望する人事制度などが整備される。

リクルートも「仕事の生産性を上げ、仕事のスピードを高め、高収益会社にして税金を納めることがリクルートの誇り」とした。

出典:リクルートのDNAー起業家精神とは何か 20ページ
 リクルートの「商業的合理性の追求」という経営原則には、江副氏のこのような思いが込められている。そのため、リクルートでは、「質の高いサービスを提供する」「モノ・サービスをスピーディーに提供する」の2点に重きを置いている。スピードを上げるためには、大きなコストもいとわないのだ。

リクルートの経営三原則

  • 社会への貢献
  • 個人の尊重
  • 商業的合理性の追求

社員が生き生きと働ける企業風土とは

リクルートの「自由闊達な企業風土」の作り方:『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』 3番目の画像
出典:www.wsp-pb.com
 江副氏の創業したリクルートは「自由闊達」と言われる企業風土を形成することに成功した。この企業風土を形成するために、江副氏は生き生きと働ける企業風土を目指し、経営者として小さな取り組みをこつこつと実践してきた。本書から、生き生きとした社会風土を作り出した江副氏の小さな取り組みをご紹介しよう。

組織をより高みへ導く、「社員皆経営者主義」とは

 リクルートではプロフィットセンター制(PC制)と呼ばれるマネジメントシステムが存在する。企業がより効率的に機能するための提言を社員が行うことができるシステムだ。こうした制度から社員が自発的に仕事をするようになり、社員一人ひとりが企業経営を学ぶことができるようになったのだ。

リクルートの企業風土を洗練させる、入社前教育と退職面談

 江副氏の入社前教育は他の企業にはない独特なものだった。内定が決まった学生にリクルートの入社案内を作るために、企業内で取材をさせたのだ。このワークは内定者が入社前後で抱えるギャップを最小限に留める効果があった。また、退職面談の際には、退職する理由を本音でぶつけてもらうことで、新たな人事制度などの取り組みを行う参考にした。こうした取り組みが残った社員のモチベーションを向上させることとなったのだ。


 リクルートはあらゆる業界に参入している一流企業だ。このように様々な業界に参入できたのは、社員一人一人が自分のやりたいことを思索し、それが実現できる環境がリクルートにあったからだ。企業を成長させるのは、戦略や技術ではない。戦略や技術を生み出す社員一人一人のモチベーションを向上させる、優れた企業風土が原点にあるのだ。「起業したい」「自分に合った企業を見つけたい」といった人は、本書から企業風土を学ぶべきだろう。

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