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コーチングで実現する「リーダーの自己変革」:自らの欠点を自覚し、さらけ出すことが第一歩。

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2016/07/03(最終更新日:2016/07/03)


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コーチングで実現する「リーダーの自己変革」:自らの欠点を自覚し、さらけ出すことが第一歩。 1番目の画像
by 드림포유
 今注目を集めている、マネジメントコーチ(経営者コーチ)。インテルにて、オペレーション部門全般から、技術標準・新規事業開発など幅広く15以上の職務を歴任され、現在は複数の企業やエグゼクティブのマネジメントコーチとして活動される板越正彦さんによる連載。

 第6回は、「コーチングで実現するリーダーの自己変革」。前回では、グローバルリーダーが受けるコーチングの「具体的ステップ」についてお話した。今回は、その「振り返り」によって自分の行動変革すべきところを見つけ、優秀な人が、より優秀に変革できた具体例を挙げていきたいと思う。

 まずは大企業編。最初から完璧な人はいない、キャリアにおけるステップアップの中で行動変革が必要になる、そうした変革を促進するコーチングだが、今回はそのようなタイプ別の行動変革の様子を掲載した。

自分との対話の時間を確保する。経営層へのレベルアップに必要なもの

 商社系の大きなシステムインテグレータに勤めるA専務。自分の経営者としてのレベルを1ランクあげたいと思っていたことから、かねてより興味をもっていたエグゼクティブコーチングを受けることにした。

 A専務はコーチングを通して、もう一段上の経営層にレベルアップするには何が必要かを認識するに至った。過去に体育会的な厳しいマネジメントを経験していたため、彼自身もそれまではマイクロマネジメントのスタイルだったが、そうではなく、部下に任せるスタンスを見せていくことが必要だという気づきを得ることができた。そうして、意識的に自分から指導するのではなく、部下に問いかけるスタイルに変革することができたのだ。

また、彼にとってコーチングを受けて得られた最大の気づきは、「定期的に自分の時間をもちなさい」と言われたことだそうだ。それまでは、事務処理と会議、客との会食だけで、日々の時間が終わってしまっていた。コーチに「いつ考えるんですか」といわれて、なるほどと実感したそうだ。

それからは、自分で、意図的に何も予定をいれない空き時間を「自分へのアポ」として定期的に作り、中長期的な戦略や、ビジョンなどを考えることができるようになったそうである。

6割の時間を相手に話してもらう。「話しすぎる」リーダーへの処方箋

 グローバルIT企業の副社長Bさんは、非常に面倒見がよく部下からも慕われていたが、話し始めるとアドレナリンが出すぎて、 自分ばかり話をしてしまう傾向があった。1対1の部下との面談では、いつも80%以上の時間を自分が話していたそうだ。

 中途社員の面接で、1時間相手に一言も質問しないで、本部のミッションやビジョンを話し続けたという伝説もあるほど。採用された人は、あとで、「何で採用されたのか不思議ですよね」と笑っていたそうである。

 Bさんは、コーチングを受けたあと、関連本部の部下の前で、次のような決意を宣言する。それは、「これからは、1対1の面談では、6割以上の時間は必ず相手に話してもらうことにする」というもの。みんなからも驚きとともに、非常に好意的にうけとめられた。

任せる。完璧主義者の女性リーダーの行動変革

 飲料会社に勤務する女性のC人事部長からは、「戦略企画力が弱い」という周りの評価をうけ、その点を強化してほしいとのコーチングの依頼があった。女性のダイバーシティのモデルとしても、会社から非常に期待され、いつも前向きに家庭ともバランスをとっている人事部長であった。

 コーチングを受け、自分の戦略企画力を伸ばしながらも、企画の得意な部下の意見を聞いて仕事をまかせていくこと。部下の失敗を奨励し、自分も新しいことにチャレンジして模範を示すこと。そこで生まれた時間を、部外のネットワークや、メンバーへのビジョン共有により連携を深めるための行動時間に定期的に使うこと。の必要性を理解し、行動できるようになったそうだ。

 日本の女性のリーダーの多くは「完璧主義」で「自分を責める」傾向にあるが、この女性リーダーはコーチングの結果、部下に任せることでうまく気分転換することができるようになった。

朝はスマイル。巻き取り型上司の変革

 システム会社の本部長Fさんは、非常に真面目で、部下とも進んで対話しているが、なんでも最後は自分で巻き取ってしまう。彼としては、現場から自分を納得させるアイデアがでてこないことに不満をもっていた。

 そうした彼が設定した行動目標は、自分の部署以外のことを考える時間をもつこと。好きな歴史を基にして、経営者目線をあげるストーリーをつくること。朝はつねに笑顔で挨拶することなど。

 他の部門との連携など、部下が期待しているもののそれまでは実現できていなかったことなども積極的に取り組んでみるようになった。

 その結果、それまでは前日に飲み過ぎたときなど、朝機嫌が悪く部下から避けられていたが、朝一で自分から挨拶することによって、周りの印象も変わり、自らもゆっくり自分の所作や印象を俯瞰してとらえる機会になった。

 さらに、自分の殻を破って挑戦することで、周りの人とのコミュニケーションが円滑になっていくことに気づき、自分の行動を変えることによって周囲が変わってゆくことを実感した。

優先順位を整理する。仕事が多すぎる大学准教授

 その他の事例としては、大学の医学部准教授でもコーチングを活用している。「仕事が多すぎるので整理したい」、「自分がやりたいことをうまく説明したい」といった要望での活用であった。

 プレゼンテーションの改善は、外から指摘されるよりも、自分の話し方、目線、 メッセージ、フォイルのまとめ方などをビデオで録音し、自分で気づいてもらうことが効果的である。

 さらに、コーチにプロジェクトの内容を話していくことで自分の中で整理がなされ、冷静にリーダーシップを意識するようになる。多すぎる業務についても、自分のアプローチの仕方、意味づけの仕方次第でどうにでも変えることができる意識が芽生えた。

積極的になる。競争に消極的な社員の変革

 コーチングはエクゼクティブ向けのみのものではない。グローバル会社のある若手新入社員は非常に穏やかな性格で、グローバル企業での競争や成果主義には消極的だった。成長意欲はあるものの、自信がなかったのだ。

 コーチングを受け、数ある行動目標の選択肢の中で、彼女が選んだのは、「会議やセミナーでは一番前に座り、一度は質問する」と「新人でありながら社内レクリエーション活動の代表になる」であった。こういった非常にシンプルな行動目標が、シンプルであるからこそ非常に効果をもたらす。

 この行動を続けた結果、周りの中堅社員よりも目立ち、自信を持ち、昇進することができた。本部のCEOが来た時にも、的確な質問を堂々として、日本の社長からも評価された。

 最終的には、自分のためよりも、まわりの人の成果をあげるのに貢献したいと悩んだ結果、サポート中心で仕事をできる会社に移って行った。自分が本当にやりたくて、心の幸福を保てる環境を選んで、そこに移るための決断の後押しをすることができた。

 このようにコーチングは、時として今いる環境に限らない自分のキャリアの選択肢を開いてみせる効果ももたらしすのだ。

「バカ」よばわりする。誰もがコーチングで変われるわけではない

 こちらは、「振り返り」をしなかった例。日本の企業ではこのケースが非常に多い。ある営業本部長は、上司・顧客との関係構築に献身して、新規開拓営業などで実績をあげ昇進してきた。しかし、自分の部の部下だけを特にかわいがったり、他の部門長を「できない奴」や「バカ」よばわりするのがやめられなかったので、関連会社に出されてしまった。そして、そこでも同じように、えこひいきが強くダメになってしまった。自分の過去の成功体験を捨てられなかったのだ。

 こういった人に、自分のエゴやプライドをおさえることで、もっと上のレベルの責任と、まわりからの信頼を得られる機会が得られることを理解してもらう手段としてコーチングは効果的だが、誰もが変わることができるわけではない。

 この他にも、「敬意を表さない」、「自説にこだわる」、「周囲を責める」、「感謝の気持ちがない」、「自責で考えない」などの行動習慣が治らないと、周りがリーダーを支えようという雰囲気にならない。


 次回は、こう言った振り返りとコーチングによって気づき変わることができたリーダーの具体例の中で、スタートアップなどのベンチャーでのケースをまとめたいと思う。

 スタートアップには、自力で起業して儲ける仕組みを作れるクラスの若くて優秀な人が多い。それゆえに、組織とインフラの成長フェーズと、リーダーシップの行動のギャップが認識されていないと、致命的になる場合がある。 

 認識されると行動は早いので、最もコーチングの効果が高いセグメントでもある。優秀な人ほど、改善する時間と、コーチングする時間が反比例して、短い時間で効果が出るのだ。

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