1. やりたいことを追求するため「縮小主義」をお試し中:大阪生まれのピザ職人が「徳島で店を開いた理由」

やりたいことを追求するため「縮小主義」をお試し中:大阪生まれのピザ職人が「徳島で店を開いた理由」

 ギャルモデルであり、現役・慶応義塾大学大学院生でもある鎌田安里紗さん。10代、20代を中心に支持を集める彼女はエシカル・プランナーでもあり、多数のファッションブランドとコラボをしたり、「エシカル」に興味を持ってもらえるようなイベントやスタディ・ツアーを手がけたりと、様々な形で発信をしている。

 今回、そんな彼女が「この人の発想はこれからの暮らしを考える上でヒントになりそう!」と感じた人たち10人にインタビュー。 生活のこと、暮らし方のこと、自然との関わり合いのこと、自分を大切にすることなどについて、じっくりお話を聞いていく。

 第6回目のインタビューのお相手は、徳島県で地元の無農薬・有機野菜を使い、石窯で焼いたピザを提供するYusan Pizzaの塩田ルカさん。

 鎌田さんの地元でもある徳島県で、古民家を改造したピザ店を営みながら、自給自足的な暮らしを目指して試行錯誤しているという塩田さんに、暮らし方に対する思いをお聞きした。

塩田ルカ プロフィール

しおた・るか/1980年、大阪府生まれ。自然食品のバイヤーをしながら、和歌山県で自給的生活をしていた高橋洋平さんのもとでピザ修行をする。2013年、徳島県神山町に家族で移住。築100年の古民家を改装して開いたピザ店「yusan pizza」が注目を集める。

鎌田安里紗 プロフィール

かまだ・ありさ/モデル、タレント 
1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に単身上京。在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。現在は同大学の大学院に進学、芸能活動も続けている。途上国の支援活動に関心が高く、自身のブログでも情報を発信。JICAの『なんとかしなきゃ!プロジェクト』のメンバーにも選出され、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。ニックネームは「ありちゃん」。

家族に食べさせたいと思うものを提供する

鎌田  塩田さんはもともと大阪のご出身ですよね。私は徳島出身なのですが、なぜ徳島に移住なさったのですか。

塩田  小さい頃に虫取りが大好きで、そこから自然が大好きになったので、昔から自然の中で暮らしたいという思いがありました。それで、神山に来る前に、和歌山県にある米市農園の髙橋洋平さんに弟子入りさせてもらっていたんです。 

米市農園は自然農を営みながら土日祝日だけピザ屋さんを営んで現金収入を得るというところ。それに憧れていたんです。

いずれは僕たちも独立しようと思いながら、お師匠さんのところで学ばせていただいていたのですが、数ヶ月経った時にご縁があって神山に来てみたんです。 

そうしたら、まず子ども達が神山を大好きになったんです。それで、引越しするならすぐにしようと決めて、2014年に移住してきました。

鎌田  Yusan Pizzaさんで提供なさっているピザの食材には、とてもこだわっていらっしゃるのですよね。

塩田  基本的に選択基準は自分が食べたいものや、子供にも食べさせたいもの。だから商売的には正直、かなりバカなことをしていると思います。 

島根にキスキという素晴らしいチーズを作る人たちがいらっしゃって、そこのチーズを使わせてもらっているのですが、最初にキスキさんに連絡をしたら、営業さんが「価格的に大丈夫ですか? お店の経営が難しくなりますから」って言ってくださったんです。
そんなことを言われると、なんて良い人だろうと感激して、ますます使いたくなりますよね。

ピザの生地も機械を使えば10倍の量が焼けるようなのですが、自分たちがお師匠さんから習ったピザはそういうものではないし、そういうピザが作りたくてやっているわけではないんです。

鎌田  ピザは窯で、薪を使って焼いているんですよね。

塩田  ガスや電気で焼くよりも、薪を使って焼いたほうが確実においしいと、僕は思っているのです。 

この薪も地元産です。地元のエネルギーと地元の野菜を使って食事を出せるというのがおもしろくて。そうやって作ったものをお客さんがおいしいと言ってくれたら、うれしいですよね。

収入額よりも先に自分たちの求める暮らしを考えたら、「縮小主義」になった

鎌田  利益よりも、自分たちが納得できるようなものを優先しているのですね。

塩田  そうなんです。自分が納得できるようなものを使って、作るのが目標なのです。ただ、そうすると何人も人を雇うようなお店では経営が難しくなります。そこで、行き着いた答えが、人を雇わずに夫婦だけでやるということ。 

夫婦だけなら、お給料が少ないのさえ自分たちで納得できればいい。そうすれば自分たちの好きなものだけで暮らしていけるんじゃないかと考えたのです。

鎌田  そこが素敵だなと思います。多くの人は、先に「お金を稼がなければ」とか、「利益を出さなければ」と考えてしまって、そのためにはどうしたら良いかを考えますよね。 

先に「自分たちはこれがいい、こういうスタイルを大切にしたい」と決めて、それを大切にしながら、納得できる範囲で収入額を考えるという発想には、なかなかたどり着けなません。

塩田  そうなんですよね。だから僕たちもお金に目がいってしまうような状況に自分たちを追い込まないようにしています。 

維持費をなるべくかけないようにするとか、電気代をあまり使わないようにするとか、自分たちで野菜を作るとか、贅沢をしないようにするとか。

「拡大主義」という言葉がありますが、僕たちは「縮小主義」。今でもご近所さんに「なんかやる気ないねえ、この店」って思われているかもしれないのですが(笑)、できればもっと店を小さくしたいくらい。 

店は2014年7月にオープンしたので、今は試行錯誤しながら食べていけるギリギリのラインまで縮小してみようと、自分たちを試しているような段階です。

自分の好きなものを求めていったら、今の形に落ち着いた

鎌田  神山に来る前は、どういった暮らしをなさっていたのですか?

塩田  僕は大阪で生まれて、神山に来るまでは大阪から出たことがないような生活をしていました。 

家が祖父の代から八百屋をやっていて、ずっと食べるものに囲まれた生活をしていたからか、料理が好きで、食べるのも好きで、「食」への興味はずっとありました。
大阪という街にはずっと住んでいたけれど、昔からなんとなくなじめないような気がしていて。 

ただ、そうも言っていられないので、大阪のカフェで働かせてもらっていました。そのときにPeople treeのカタログで「フェアトレード」という概念に出会ったんです。
「すごい世界だ」と思いました。考え方とか、温かさとかがものすごく好きだなと思ったんです。そこから、いろいろと変わってきました。

実家の八百屋で働いていても、「自分たちが売っているものは、本当に体に良いのだろうか」とか「この値段で、生産者の人たちはちゃんと生活できているのか」と、いろんな矛盾を感じて、悩み始めました。

その状態に我慢ができなくなってきたタイミングで彼女と結婚できたので、結婚したからには自分たちがしたいことをやろうということになって、実家の八百屋でフェアトレードの雑貨やオーガニックの野菜を扱うようになりました。

徳島に移る直前には、無農薬の農家さんを回って野菜を集めて販売するバイヤーのような仕事をしていました。 

ただ、自分の扱いたい野菜は量も少なく、価格もそれなりにしてしまうので、人を雇用できるだけの利益を出すためにも、取り扱っている商品を100%自然食にすることはできなかったのです。

そんな生活をする中で、米市農園のお師匠さんのことを知って、会いに行ってみたんです。そこで、ビビッときてしまいました。 

お師匠さんのピザ屋の前は田んぼだったのですが、そこで子供達が素っ裸でドロドロになって遊んでいて。その子どもたちの目が、むっちゃくちゃきれいだったんですよ。きらきらで。その目にやられてしまいました。 

自分たちの暮らしを、いつかこんな風にしたいと憧れました。

自分の感覚を大切にしつつ、逃げないでいると解決策は自然と見つかる

鎌田  自分の純粋な感覚を、とても大事にしていらっしゃるのですね。 私も、多くの人が「おいしい」「好き」「気持ちいい」「楽しい」という自分自身の感覚を、大切にできるようになったらいいなと感じています。 

塩田さんは、自分の感覚に敏感になるために、意識的に何かしているのですか?

塩田  特別なことはしていないです。基本的に僕は怖がりで、気を使ってしまうタイプなので、嫌だと思うことがあると胃が痛くなって動けなくなるくらいなんです。

ただ、そういう状況になっても、逃げないようにしています。たとえ苦手な相手がいても、逃げないでいると相手も変わっていくと僕は信じていて。 

人はどんな相手でも一緒にいると影響し合いますよね。気が合わなくても、ちょっとずつ変わっていくんです。 

逃げるとそこで終わってしまうんですが、逃げないでいると時間がたつにつれて譲り合う部分が出てくるんです。

鎌田  逃げないでいるときに意識していることは何かあるのですか?

塩田  相手のことをイヤって思わないこと(笑)。

鎌田  思いもしないのですか? 態度に出さないということだけではなく?

塩田  家に帰って「あいつ、腹立つ〜」って思いそうになったときには、「違う違う、性格や考え方が違うだけ」って打ち消すようにしています。 

そうやって自分の中で「変だ変だ、何か気持ち悪い」と感じていると、状況を変えるために何か行動を起こしますよね。そうすると、答えが勝手に見つかるんです。

違和感から答えが見つかることは、人付き合いだけではなく、いろんなことに言えると思います。 

僕は仕事ばかりしている時期があったのですが、そうなると機械で作られるものを食べることが多くなりますよね。 

何か気持ち悪いなと感じて、自分でいろいろと試しながら料理を作ったりすると「こういう食生活が人間には合っているんじゃないか」ということがわかってきます。

僕はマクロビに早い時期にハマったのですが、「マクロビじゃないとダメ」と考えているわけではなく、いろいろ試した結果、そうなってきているんです。

鎌田  違和感を感じたら、試しにいろいろと行動してみることが、解決策に繋がるのですね。

「正しさ」よりも、気持ちを優先にするスタンスでいたい

鎌田  いろいろと試した結果として「マクロビはいいよ」と教えてもらう方が、「マクロビが正しいんです」と言われるよりも納得がいきそうですね。

塩田  そもそもマクロビに興味を持ったのは、僕が食いしん坊だから(笑)。 

マクロビの本を見て「こんな食材を使ってるんだ。こんな料理を食べてみたい」と思ってスタートしているので、ストイックでもないし、「これが正解だ」って思っているわけでもないんです。

早い時期にマクロビにハマった結果、自分でお肉を調理して食べる期間があまりなかったので、今は良いお肉があると買ってきて石釜で焼いてみたりもしていますし。

鎌田  食への純粋な興味があるのですね。食に関する発信は硬くなりがちですが、「食いしん坊」がスタート地点だと、楽しくて良いですね。

塩田  そうですね。それに、「それが正しいんだ」という言い方をすると、人を揉めることが多いなと僕は思っています。 たとえばオーガニックも、「オーガニックが正しい」と言うと、問題が起きやすい。

日本の田んぼや畑はあぜ道一本で隣と接しています。隣のおじちゃんが農薬を使っていることもあるでしょう。そのおじちゃんだって、物事を良い方向に向かわせたいと考えた結果、行動していらっしゃるんです。 

そこに「オーガニックが正しい」と言ってしまうと、そのおじちゃんは自分がやっていることを否定されたように感じてしまいますよね。

だから、「僕はこのやり方でやります。でも、おじちゃんのやり方もアリなのかな」というような、否定しない方法がいいなと思っています。

鎌田  それは本当にいろいろなことに共通して言えることですね。私は洋服について情報発信をすることが多いのですが、「フェアトレード以外はダメ」「オーガニック以外はダメ」と言いたいわけではないのです。 

いろんな選択肢があるなかで、フェアトレードやオーガニックには大きな魅力があるのに、まだあまり知られていないから発信していきたいという気持ちでいます。 そういうスタンスでないと、敵ばかり作ってしまいますよね。

塩田  そうですよね。僕はフェアトレードのものばかり買いたいと思っていた時期があったのですが、「フェアトレードじゃないものを作っている人たちの暮らしや気持ちはどうなるの?」っていうことに気づいたんです。

日本の農家さんは、買い叩かれてすごく苦しんでいる現状があるので、八百屋で働いているときに、一時期そういう情報をたくさん発信していました。 

自分が正しいと思って発信していたのですが、近所の農家さんが僕の情報によって傷ついていると知ったことがあって。それで考えるようになりました。 今、本当に反省期間中なんです。

何かを広めるというときに、まず「気持ち」のことを大切にしないと、おそらく「こと」や「行動」だけが伝わってしまうんですよね。 そうではなく、もっと思いを持ったり、人を大切にしたりしていきたいなと思っています。

鎌田  すてきですね。私もエシカル、オーガニック、フェアトレードの洋服について発信していますが、本来伝えたいのは、「今持っている服を大事にする」とか、「近くにいる人に優しくする」などといった身近なこと。発信の仕方は気をつけないとならないですね。

塩田  はい。自分の理想と違う行動をしている人でも、悩んだ結果そうしていることもあります。そういう人たちも、自分の理想とする行動をしている人たちと同じように大切にしたいのです。 

食べ物のことも、僕が安全性にこだわる発信をした結果、読んだ人が「安全じゃないから捨てよう」と行動してしまうなら、それは違うなと感じています。 

食べ物の存在や、野菜を作ってくれた人に対して感謝の気持ちを持つことがまず大切。そのうえで選択したいなと思っています。

今、本当にいろいろなことに答えが出ていなくて、オーガニックやフェアトレードが正しいのかどうか、どう生きるべきなのかというのは僕たち夫婦の中でも模索中なんです。

ただ、神山にはいろいろな生き方をしている人がいらっしゃる。ヒッピーのような人もいるし、バリバリIT企業で働いて週末はすごく良い野菜を作ったりしている人もいます。 

いろんなバランスがここにはあるので、僕たちに合うバランスを探って、少しずつ変えていこうと思っています。

鎌田  「これが正しい」というわけではなく、探り探りやっていらっしゃるのですね。People treeのサフィア・ミニーさんやパタゴニアの辻井隆行さんにもこのシリーズでお話を伺っていますが、みなさん探り探りスタンスを決めていらっしゃる印象です。

「自分たちの考えていることを押し付けたいわけではないけれど、やっぱりこっちが素敵だ」って。

塩田  「好き」を基点にしても良いのかもしれないですね。「僕はこれが好きだから」「これがおいしいから」というスタンスで。 

まだ、それを自分の中で答えとして許容できていないので、「『好き』を基点にすべきです」って言える状態では全くないのですが。

自分の意見と違うものを取り入れてハイブリッドに生きていきたい

鎌田  持久的な暮らしや環境を大切にする生活を語るときに、どうしても昔の生活に戻るというイメージを持たれがちです。 

でも、塩田さんは、古いものと新しいもののバランスをとり、ハイブリッドにしていくことが大事だと考えていると、何かの記事で読みました。

本当にその通りだなと思ったのですが、塩田さんはどんなことからハイブリッドが大事だと考えるようになったのですか?

塩田  僕の周りにはストイックに行動している人もいたのですが、見ているとだんだん苦しくなってくるようなんです。 たとえば、ストイックにオーガニックな生活を続けていても、子どもが生まれて学校に上がれば、それは守れなくなってしまう。 

その結果、学校に行かせなくなったり、子どもが行けなくなってしまったりして、揉め事に発展していくのですよね。周りの人も心配しますし。

僕がやりたいのはそういうことではないのです。誰かが困ったり心配したりするくらいなら、オーガニックでなくてもフェアトレードでなくてもいい。 

まず大切にしたいのは、みんなが仲良くできること。その目的にたどり着くためのオーガニックやフェアトレードなんです。

鎌田  手段が目的になってしまうと、うまくいかなくなりますね。

塩田  そうなんです。それに、自分とは違う意見も取り入れることで、自分の中にも身の回りにも調和が生まれます。そのなかで自分たちのやりたいことをさらに模索していくのがいいなと思うんです。

鎌田  先ほどの、苦手な人との関わり方のお話と似ていますね。自給的な暮らしを理想としつつも、電気も取り入れるし、野菜も買うし、バランスを考えながら生活しているのですね。

塩田  理想は自給的な暮らしですが、焦って無理して続かなくなるよりも、楽しく改善していけるほうがいいなと思います。 

一人でむちゃくちゃ頑張って、環境に負担をかけない生活をしていくよりも、中途半端でも少しずつ改善していく人が増えたほうが、世の中もっとよくなるはずですし。

鎌田  とても共感します。エシカルファッションのINHEELSというブランドがあるのですが、共同代表の岡田さんと全く同じ話(記事参照)をしていました。 

「フェアトレード、エシカルと発信すると、プライベートの暮らしも仙人のように徹底して100%改善するべきだと自分でも思うし、周りにも思われてしまう。でも、それを実践するならば、文明社会から離れなければならない。 

100%改善する人が1人いるよりも、20%、30%でいいからできる範囲で改善する人が100人いるほうが、社会に与えるインパクトは格段に大きい」って。

だから、ゆるい感じで改善していく暮らしを、都市の人も実践できたらいいなと思っています。

塩田  本当にそうですね。僕たちも、仙人的な暮らしは今はできないなと思っていて。タイミングとか、それぞれの人の置かれている環境や立場があるので、お互いに押しつける必要もないですし。 

「僕はこんな考えなんですよ」って生きていけばいいのかなと思っています。

名前がない大切なものを、普通に当たり前のように大切にしていきたい

塩田  母に言われて気づいたのですが、本当に人のことを大切に考えているのだったら、オーガニックやフェアトレードは当たり前のこと。それが「オーガニック」、「フェアトレード」と名前を必要としていること自体が、問題を表しているんですよね。

鎌田  たしかにそうですね。

塩田  今、神山に昔からある野菜の種を少しずつ分けてもらえるようになってきたのですが、ここのおばあちゃんたちも「これはこういう理由があるから大切なんだ」なんて言わずに、単においしいから毎年種を撒いて、ずっとここにあるという感じなんです。 だから、名前がないような伝統野菜もあって、 

「これはおいしいですね。なんという名前の豆ですか」って聞くと、「豆やがな」って返事をされる(笑)。

僕たちは「この品種名は◯◯で、××さんが見つけた貴重な種で……」と、つい頭でっかちに考えてしまいますが、ただおいしいから育てるということが、シンプルで、ポジティブで、普通に大切にしている感じで、すごくいいなと思います。

鎌田  すてきだなあ。今はお野菜を育てているんですか?

塩田  いずれは米や麦とかも育てたいなとは思っていますが、今はハーブが中心です。野菜は、分けてもらった種を増やしています。実験中のような感じですね。 

今はお店が中心になってしまっているので、消費が中心で、生産の割合がすごく少ないのです。生産の割合をもうちょっと増やして、自分たちがどう感じるかを試したいと思っています。

畑ってね、とても楽しいんですよ。ちょっと大根の芽が出たり、昨日よりも大きくなっているとわかったりすると、とても楽しい。今は石釜があるので、採れた野菜を焼いてみて、「めっちゃおいしい!  塩だけでもおいしい!」なんて言ったりして。

鎌田  このシリーズでいろいろな方にお話をお聞きしているのですが、野菜を育てている人の話をお聞きするのは3人目なんです。 

みなさん、とても楽しんでいらっしゃいますね。

塩田  やっぱり。お金になるかならないかで考えると、やらないほうが全然いい。農家さんも、お米は買ったほうが安いと言うんです。けれど、やっぱり楽しいし、食べ物を作るということが大切だからみんな続けているんですよね。

食べ物は「命」。値段をつけるのが難しい

塩田  種が野菜になるのって、とても不思議なんですよ。ほかの「物」にはない変化で、野菜の花もとてもきれいだし、しかもそれが食べられる。さらにその種を撒くと、また育つんです。 

当たり前なのですが、それが世の中に当たり前として存在していることを目で見てしまうと、本当に感動します。

鎌田  野菜を育てている方に聞くとそうおっしゃいますよね! 以前、このシリーズで四角大輔さんという、今はニュージーランドで自給自足的な生活をしている元音楽プロデューサーの方にお話を聞いたのです。

四角さんもおっしゃっていたのですが、今私たちの暮らしの中では物と野菜が同じようにお店に並んでいますよね。 

野菜が育つプロセスを知らない人からすると、食べ物も「物」のように見えてしまいます。でも、種から芽が出て育ち、実になると、感動するし、食べ物は「命」だって思えると。 

それを聞いて、野菜を育てたいと思いました。

塩田  ぜひ育ててみてください。 

農家さんってすごいなと思うのは、自分がそれだけ感動している野菜を、嫁に出すというか、手放しますよね。それぞれの野菜は、農家さんの作品だなと感じます。 

ただ、現状では野菜の価格は相場に左右されていて、農家さんが自分で値段を決められません。そこが変わっていけばいいのになと思います。

だから、僕たちが今取引している農家さんには、価格は自分で決めてもらっているんです。高くても安くても良いからって。

鎌田  それはおもしろいですね。農家さんのいろいろな思いが価格に反映されそうです。
 
塩田  買った野菜が高すぎて店で売れなくても、自分たちで食べてしまえばいい。自分が食べたい、子供達に食べさせたいという野菜を買っているのですし、この店の規模ならそれが可能なのです。 

農家さんには「変な店やな」って思われていると思いますけれど。

自分の向いていることをすればいい

鎌田  塩田さんは今、自然の中でご自分の好きなものに囲まれて暮らしていらっしゃいますが、事情が許さず都会で暮らしている人もいます。そういった人のために教えていただきたいのですが、大阪にいらっしゃる時には、どうやって日々リラックスをなさっていたのですか?

塩田  僕は心斎橋という、めちゃくちゃ人酔いするような場所で働いていたので、疲れてしまうときがあったのです。だから休みの日には基本的に自然の中に行くようにしていました。街の中にも、公園など自然がありますよね。

自分のお気に入りの場所を見つけて、お昼を食べたりボーッとしたりして、ストレスをやわらげていました。

鎌田  自然にふれると安らぎますよね。私もときどき芝生に触れてリラックスしています。

塩田  ただ、自然のなかの神山でも、安らげる場所は必要だなと感じます。神山は自然がたくさんあって大好きな場所です。すごく素敵な、パワーあふれる人がたくさんいるからこそ、自分も気を張っているのでしょうね。ときどき一人でボーッとしたくなります。

店にいるとダメなんです。突然お客さんが「今日は空いていますか?」っていらっしゃって、「うわっ今すごく油断していた」ってことがありますから(笑)。

鎌田  そういうときは、どこに行かれるのですか?

塩田  川に行きます。お気に入りの、とてもいいところがあるんです。それから「隠された図書館」という、山の中の小さい、蒔ストーブのある図書館があるのですが、「一人になりたいです」という札を立てておけば、誰もそこに入って来ないんです。今はそういうところを利用しています。

鎌田  塩田さんは移住をなさった方なので、もっと都会に対する否定的なご意見をいただくかと勝手に思っていたのですが、まったくそういうわけではないのですね。

安らげる場所でボーッとしつつ、自分たちの心地よいバランスを探り探り見つけていらっしゃる。まずは自分が心地よい状態を作るというのが大切ですよね。

塩田  そうですね。そこで自分に嘘をついてしまうと、どんどん変な方向に進んでしまうような気がします。

僕は大阪には合わないと感じていましたけれど、大阪がダメだというつもりはありません。田舎暮らしが向いている人もいれば、全く受け入れられない人もいるようですし。
僕たちは今、自然のなかで山イチゴをとったり、狸と鉢合わせをしたり、鳥がなついてきたり、農家さんに野菜を分けてもらったり、子供と一緒にいられたりする暮らしが気に入っています。でもこういった選択したくても、状況が許さない場合もあるでしょうし。

それに、今はアーバンパーマカルチャーなど、都市にいながら持続可能な生活をする動きもありますしね。人を傷つけないようにしながら、自分に合っていて、無理のないことを選択すればいいのかもなと。

鎌田  そうですね。自分が心地良い方に少しずつ引っ張られていけばいいのかもしれません。本当に心から好きなことをやるのであれば、人を傷つけるような選択にはならないはずですよね。

塩田  そうですね! 今、答えがでてきました。

鎌田  大事なことをたくさん教わりました。今日はおもしろいお話をお聞かせくださり、どうもありがとうございました!

Interview/Text: FELIX清香
Photo: 川口泰吾(川口映像事務所)

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