1. 「終わる時間を決めない日本人」 長時間よりも、長期間高いパフォーマンスを維持するために必要なこと

「終わる時間を決めない日本人」 長時間よりも、長期間高いパフォーマンスを維持するために必要なこと

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 ひとつのテーマについて、専門分野が異なるクリエイター同士が語り合う企画「白熱QA教室」。 

 今回は日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター、U20ラグビー日本代表監督の中竹竜二さん、予防医学研究者の石川善樹さんが、ゴール設定の大切さについて意見を交わした。共に人の行動を注意深く研究する立場として、どのような理念を持っているのだろうか。

中竹 竜二 プロフィール  

1973年、福岡県生まれ。93年、早稲田大学に入学し、同大ラグビー蹴球部に入部。4年次には主将を務める。2006年清宮克幸氏の後任として早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任。全国大学選手権2連覇を成し遂げる。

石川 善樹 プロフィール

広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究している。専門分野は、行動科学、計算創造学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に『最後のダイエット』、『友だちの数で寿命はきまる』(ともにマガジンハウス)。
東京大学研究員/国立がん研究センター研究員/G1サミットU40メンバー/(株)Campus for H共同創業者/(株)キャンサースキャン取締役/(株)ハビテック研究所長/有限会社日本ヘルスサイエンスセンター取締役/健康学習学会学会長
【著書】 
・最後のダイエット(マガジンハウス) 
・友だちの数で寿命はきまる (マガジンハウス)
・健康学習のすすめ-理論編(日本ヘルスサイエンスセンター) 

NASAが考案しGoogleも実践する健康管理の重要性

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中竹  僕が善樹さんのことを知ったのは、予防医学についての対談記事を読んだのがきっかけだったんです。オフィスワーカーの健康について、Googleの社員教育で実践されている、睡眠・運動・食事の3つの要素と仕事との関連性を解説していたのが衝撃的に面白くて。相当本質的なことだなと思ったんです。それを科学的にちゃんとおっしゃっている方がいるのに衝撃を受けました。

石川  ありがとうございます。それほどヒットだったのが嬉しいです。

中竹  ラグビーの世界においても、パスの能力以前に“お前ちゃんと寝てちゃんと起きてちゃんと食べてるか”“ちゃんと自分の夢持ってがんばってるか”ってところに落ち着くんですよ。それだけ言っていると、体育会系のお父さん監督が昔から言われていることを繰り返しているだけだと思われがちですが、こうやって最新の予防医学の研究結果で言われているのを見て、ああ、自信持って言えるなって思ったんです。

石川  Google社員の健康づくりに関わって一番驚いたのが、彼らは本気で自分たちの社員に世界で一番健康になってほしいって思ってるんですよ。そのためにとにかくいろいろ試しているんです。例えばヘルシーな料理を作ってみて、“なんだよ、ヘルシーな料理ってみんな食べねえんだな”ってわかったり(笑)。長時間よりも、長期間高いパフォーマンスを維持するために、何をしたらいいかってことを本気で考えています。実はそれを一番最初に考えたのはNASAなんです。

中竹  ほぅ、そうなんですか。

石川  宇宙空間ってストレスが多いみたいなんですよ。狭い空間でずっと他人が一緒にいるわけですから。一番有名なのは、まだNASAが宇宙に飛べていなかった頃にソ連の宇宙船の中を盗聴していた時のエピソード。宇宙飛行士って当然ケアが大切で、互いに採血して健康状態をチェックするそうなんですが、ムカつく奴だと骨まで達するくらい注射針を刺したりしちゃうんです。

それである人の腕がものすごく腫れちゃって、そのままだと死んじゃうかもしれないから帰って来いってことになったらしいんです。でもせっかく打ち上げたのに、喧嘩で帰ってきてもらっちゃ困りますよね(笑)。

中竹  確かに(笑)

石川  そこでNASAはどういう性格の人を一緒のチームにしたらいいのか、脳のパフォーマンスを長期間継続するためには何をしたらいいのか、めちゃくちゃ研究したらしいんです。

終わる時間を決めない日本人は時間にルーズ

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中竹  仕事のパフォーマンスを高めるのに睡眠が大事なのは言うまでもないですが、質を上げるために、起きる時間を一定にするという話もされていましたね。起きる時間が変わるのって、寝る時間が変わるのが原因です。

でも反対に起きる時間をちゃんと決めると、寝る時間も安定します。記事を読んでドキッとしたのは、多くの人は始まる時間は決めるけど、この仕事をいつまでに終わらせるのかっていうのは決めない、ってこと。その日だけじゃなくずっと続けるには、ちゃんとスタートと終わる時間を決めておかないと、継続できないなって。当たり前のことなんだけど、言われてみると眼から鱗で。

石川  そうなんですよね。僕も外国人に「日本人って時間にルーズだよね」って言われて気づいたんですよ。「どういうことですか?」って聞いたら、始める時間は決めるけれど、終わる時間は決めないよねって。確かにそうだと思いました。

中竹  海外って逆ですもんね。いつ来るんだ?とはよく思うけど、帰るときはさっさと帰ります(笑)

石川  思い返すと、用事がある日って仕事が効率的に終わるんですよね。合コンがある日はダラダラ仕事しないじゃないですか。

中竹  確かに。あと食事に関して、血糖値を一定に保つという話も興味深かったです。

石川  血糖値が上がっている最中はいいんですが、下がり始めた瞬間にパフォーマンスが落ちたり眠くなったりするんです。だから血糖値は一定に保った方がいいんですね。この間ミラノに行った時に、たまたま本田圭佑さんとお会いできたんですが、彼と話していて面白かったエピソードがあります。本田さんは日本にいる時と同じように食べているんだけど、チームメイトから「圭佑は食い過ぎだ」って言われてるって。他のチームメイトは全然食べないみたいで。僕がそれを聞いて思ったのは、他の選手はちょこちょこ食べてるんじゃないかと思ったんです。

中竹  食事の時だけじゃなくて捕食ですか?

石川  そうそう、そっちでうまくキープしてるんじゃないかと思って。本田さんはそれをしないと思うんですよね。日本人は“間食は良くないものだ”って言われてきたじゃないですか。でも大人になったら食べたほうがいいんですよ(笑)

中竹  今のスポーツ栄養学では、1日5回食えって言ってます。コーチとトレーナーが、わざわざそのための時間と物を渡しています。その辺りラグビーは変わってきてます。まだまだそういうことを知らないスポーツ団体もあると思うんですよね。

自分自身を知るために、バロメーター的行動(ルーティン)を持つ

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石川  ベースにそういった科学的な考え方がありつつ、人によって合う、合わないがあるから、微調整が要るんですよね。例えば1日5回はちょっと多いとか、少ないとか。そこは個人差ですね。何でも万人に効くわけじゃないから、自分の方法を見つけたほうがいいと思います。でもそれ以前に、自分に合っているかどうかの感覚って意外と分からないんじゃないかな、と。

中竹  それはどうやってチェックするんですか?

石川  いろんなオリンピック選手に調査して分かったんですけど、何かしら自分のバロメーターになるような行動をしている人が多いんですよ。ビーチバレーで活躍した朝日健太郎さんは、毎朝起きた時に洗濯物を干すっていう動作をしているそうです。それは洗濯物を干す過程で、今日の自分がいつもより調子がいいのか悪いのか、昨日の自分と比べるバロメーターにしているんですって。

中竹  それはいわゆるルーティンですよね。

石川  はい。洗濯物を干すということを、バロメーターとして考えていることにびっくりしました。

Interview/Text: 河辺さや香

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